変圧器の並列運転時の循環電流

循環電流とは

並列運転する2台の変圧器の二次電圧がわずかに違うと、その差によって2台の間を「ぐるぐる」と流れる電流が生じます。これが循環電流です。負荷につながっていなくても流れます。

循環電流が発生する流れ
電圧差 \(ΔV\) がある → 変圧器A → 母線 → 変圧器B → 母線 → 変圧器A → ……
のループに電流が回る ➡ 循環電流

どこを流れる?
負荷には向かわず、変圧器A → 母線 → 変圧器B → 母線 と、2台のループの中だけを回ります。

なぜ困る?
巻線に余分な電流が流れて銅損が増え、発熱します。その分だけ負荷に使える容量が減ります。

いつ起きる?
主な原因は巻数比(電圧比)のずれ。無負荷でも流れ続けます。

 

循環電流が流れる理由

2台の二次側を並列につなぐと、A の起電力と B の起電力が向かい合ったループができます。その差が電圧源となり、2台の内部インピーダンスの直列回路に電流を流します。

循環電流 \(I_c=\frac{ΔV}{ |Z_A+ Z_B|}\)

\(ΔV\)
二次電圧の差。たとえば A が 210V、B が 206V なら \(ΔV = 4V\)。

\(|Z_A+Z_B|\)
2台の内部インピーダンスの和の大きさ。内部インピーダンス が小さいほど、同じ電圧差でも循環電流は大きくなります。

 

循環電流の計算

循環電流の計算においては、インピーダンスが与えられている場合と、%インピーダンスが与えられている場合の2パターンがあります。
計算プロセスが少し異なりますが、次の2つの基本的な考え方については、どちらにおいても同じです。
・変圧器間の電圧差によって、循環電流が流れること。
・2つの変圧器が直列接続されていると考えること。

実務的には、%インピーダンスが与えられることが多いでしょう。
 

インピーダンスが与えられている場合

並列接続された2つの変圧器が閉回路を作ります。
2つの変圧器の巻数比の違いによって、二次側の電圧差が生じると、その閉回路に電流が流れます。
それが、循環電流\(I_c\) です。

①電圧差\(ΔV[V]\) を求める
2つの変圧器A・Bの二次側間の電圧差\(ΔV[V]\)が循環電流の原因です。

変圧器Aの二次電圧\(V_A[V]\)は、
\(V_A=\frac{V_1}{a}=\frac{6600}{30.1}≒219.27[V]\)

変圧器Bの二次電圧\(V_B[V]\)は、
\(V_B=\frac{6600}{30.0}≒220[V]\)

電圧差\(ΔV\)を求める
\(ΔV=V_B-V_A=220-219.27=0.73[V]\)

②インピーダンスを足し合わせる

循環電流だけに注目すると、変圧器Aの内部インピーダンスと変圧器Bの内部インピーダンスを順番に通る閉回路となるため、直列回路として扱います。

\(Z_A+Z_B=(0.013+j0.022)+(0.010+j0.020)=0.023+j0.042\)

インピーダンスの大きさは、
\(|Z_A+Z_B|=\sqrt{0.023^2+0.042^2}=0.0479[Ω]\)

③オームの法則から循環電流を求める

循環電流\(I_c[A]\)が流れる回路の電圧\(ΔV[V]\)と、インピーダンスの大きさ\(|Z_A+Z_B|\)が求まったので、
\(I_c=\frac{ΔV}{|Z_A+Z_B|}=\frac{0.73}{0.0479}≒15.24[A]\)

 

%インピーダンスが与えられている場合

変圧器A・B間の電圧差を求めた後、%インピーダンス(\( \% Z [ \ % ]\))・定格電圧\(V_n [V]\)・変圧器容量\(P_n[kVA]\) から各変圧器のインピーダンス\(Z[Ω]\)を求めることで、循環電流を導き出せます。

インピーダンスを求める工程が増えているため、難しく感じられますが、
その後の循環電流の計算には、並列接続された2つの単相変圧器が閉回路を作り、2つの変圧器の二次側の電圧差から、その閉回路に循環電流\(I_c\) が流れる計算をする流れが共通しています。

実例を求める形で解説していきます。

次の条件が与えられている時の循環電流を求めてみます。
・定格電圧:\(V_n=200V\)
・変圧器A:容量\(P_A=100[kVA]\)、%インピーダンス:\( \% Z_A=4 \% \)
・変圧器B:容量\(P_B=50[kVA]\)、%インピーダンス:\( \% Z_B=6 \% \)
・変圧器A・Bの電圧差\(ΔV \% =1 \% \)

①電圧差\(ΔV[V]\)を求める
循環電流の原因となる電圧差\(ΔV[V]\) を求めます。

定格電圧\(V_n=200V\)、電圧差\(ΔV \% =1 \% =0.01\)なので、
\(ΔV=200×0.01=2[V]\)

 

②インピーダンスを求める
1台分のインピーダンスは、定格電圧・電流と、%インピーダンス( \( \% Z_A\)・\( \% Z_B\) )から求められます。

変圧器容量は、\(P_n=V_n・I_n\) …① なので、
定格電流は、\(I_n=\frac{P_n}{V_n}\) …②
です。

インピーダンス\(Z[Ω]\) と、%インピーダンス\(\% Z[Ω]\) の関係式は、
\( \% Z= \frac{Z I_n}{V_n}\) …③
です。(%表示する場合は、×100をします)

③式に②式を代入してインピーダンスを求めると、
\(Z=\frac{V_n}{I_n} \% Z= \frac{V^2_n}{P_n} \% Z\)


\( Z_A=\frac{V^2_n}{P_A} \% Z_A =\frac{200^2}{100×10^3} 0.04 = 0.016Ω\)
\( Z_B=\frac{V^2_n}{P_B} \% Z_B =\frac{200^2}{50×10^3} 0.06 = 0.048Ω\)

したがって、全体のインピーダンス\(Z\)は、
\(Z=Z_A+Z_B=0.064[Ω] \)

 

③循環電流\(I_c[A]\) を求める
電圧差\(ΔV[V]\)と、全体のインピーダンス\(Z[Ω]\)が求まったので、循環電流\(I_c[A]\)が次のように求められます。
\(I_c=\frac{ΔV}{Z}=\frac{2}{0.064}=31.25[A]\)

 

循環電流まとめ

①並列運転する変圧器の巻数比(変圧比)が異なると循環電流が流れる

②循環電流は無負荷でも発生する

③循環電流が流れると銅損が増加し、変圧器の利用可能容量が低下する

④循環電流は、変圧器間の電圧差を2台の内部インピーダンスの和の大きさで割ることで求められる
\(I_c=\frac{ΔV}{ |Z_A+ Z_B|}\)

並列運転を行う変圧器は、循環電流を防ぐために変圧比や%インピーダンスをできるだけ揃えることが重要です。

 

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