変圧器の損失
変圧器が電圧・電流を変換するときに、変換されないエネルギー損失が発生します。
このエネルギー損失には、損失の発生の仕方や、発生する場所によって、いくつか種類があります。
各損失の特徴について解説していきます。

負荷損とは
変圧器の負荷損\(P_c\)とは、負荷電流が流れたときにだけ発生する損失です。
負荷損を構成する損失は、銅損と漂遊負荷損の二種類です。(負荷損=銅損+漂遊負荷損)
負荷損の大部分は銅損(\(I^2R\)損)なので、負荷損\(P_c\)は、負荷電流の2乗に比例して増えるのが最大の特徴です。
そのことから、変圧器の負荷率を\(α\)としたとき、負荷損\(P_c\)は、負荷率\(α\)の2乗に比例します。
負荷損が負荷率\(α\)の2乗に比例する理由の証明
\(P_c=I^2R=(αI_n)^2R=α^2(I_n^2R)\)
と、表すことができます。
\(I_n^2R\)は、定格銅損\(P_{cn}\)なので、
\(P_{cn}=I_n^2R\)
したがって、
\(P_c=α^2×P_{cn}\)
と表すことができるので、負荷損は、負荷率\(α\)の二乗に比例することがわかります。
\(P_c\):負荷損
\(P_{cn}\):定格負荷損
\(I\):負荷電流
\(α\):負荷率
\(I_n\):定格電流
\(R\):巻線抵抗
銅損とは
変圧器の巻線は、銅で作られています。
銅で作られた巻線に電流が流れることで、発生するジュール熱による損失です。
巻線の素材から、銅損と呼びます。
この銅損は、負荷損の大部分を占める損失です。
銅損\(P_c[W]\)は、抵抗損失であるため、抵抗を\(R[Ω]\)、負荷電流を\(I[A]\)とすると、
\(P_c=I^2R\) …①
と、表されます。
この式から、負荷電流の2乗に比例して大きくなることがわかります。
定格電流を\(I_n[A]\)、負荷電流を\(I[A]\)、負荷率を\(α\) としたとき、
\(I=αI_n\) …②
です。
②式を①式に代入すると、
\(P_c=I^2R=(αI_n)^2R=α^2 I_n^2R=α^2 P_{cn}\)
と表せます。なお、\(P_{cn}[W]\)は、定格負荷時の銅損です。
このことから、銅損は、負荷損で示したように、負荷率\(α\)の2乗に比例する損失であることがわかります。
漂遊負荷損
漂遊負荷損は、本来意図しない箇所に漏れ磁束が飛び、予測しにくい場所で発生する損失です。そのため、「漂遊」という名前が付いています。
漂遊負荷損の発生原理は、変圧器に負荷電流が流れると、巻線の周囲に漏れ磁束が発生します。
この漏れ磁束が、変圧器を構成する金属部(外箱、導体支持金具、コイル端部の金属部材等)に侵入すると、うず電流(誘導電流)が発生し、抵抗損として熱になることで発生する損失です。
銅損より小さい損失ですが、無理できるほどは小さくない損失です。
大容量変圧器になる程、相対的に漂遊負荷損は負荷損の中でも大きくなる傾向があります。
漂遊負荷損も、銅損と同じく負荷電流の2乗に比例します。
①漏れ磁束は負荷電流 I に比例 :\(φ{leak}∝I\)
②うず電流損は磁束の二乗に比例 :\(P_{eddy}∝φ{leak}\)
③漂遊負荷損はほぼ I² に比例 :\(P_{stray}∝P_{eddy}\) ➡ \(P_{stray}∝I^2\)
無負荷損とは
変圧器の無負荷損\(P_i\)とは、負荷電流が流れていないときでも発生する損失です。
無負荷損を構成する損失は、ほとんどが鉄損です。(無負荷損≒鉄損)
無負荷損は鉄損以外にも、誘電体損や、励磁銅損等もありますが、非常に小さく無視できます。
鉄損とは
変圧器の鉄損は、鉄心(コア)で発生する電力損失の総称です。
鉄心で発生する損失であることから、鉄損と呼びます。
鉄損は、変圧器に負荷を何も接続していない状態(無負荷)においても発生する損失であり、ヒステリシス損と渦電流損から成り立っています。
ヒステリシス損
ヒステリシス損とは、変圧器やモーターなどの鉄心(磁性材料)に交番磁界を加えたときに発生する損失の一つで、無負荷損(鉄損)の主要な成分です。

ヒステリシスとは、履歴という意味です。
鉄心に使われる磁性材料は、磁界 \(H[A/]\) を加えたときの磁束密度 \(B[T]\) は、過去にどんな経路を辿ってきたか(履歴) によって変わる現象です。
磁性材料の加える磁界\(H\)を変化させたときの、磁束密度\(B[T]\)の変化をB-H曲線と呼ばれるグラフに描いたとき、左図のような軌跡を描きます。
これを、ヒステリシスループと呼び、この面積がヒステリシス損のエネルギー量になります。
ヒステリシス損の原理は、鉄心の磁区の向きが、交番磁界によって変わるときに発生する摩擦損です。
磁区とは、鉄心(磁性材料)の内部で、原子レベルの小さな磁石の向きが全く同じ方向に揃っている領域のことです。
ヒステリシス損は、
\(P_h=kfB^n_m\)
の式で表されます。
\(P_h[W]\):ヒステリシス損
\(k\):材料定数
\(f[Hz]\):周波数
\(B_m[T]\):最大磁束密度
\(n\):1.6~2.0程度で、材料に依存する数字
この式から、ヒステリシス損についてわかることは、
・周波数\(f\)に比例する。
・最大磁束密度\(B_m\)のn乗に比例する。
➡磁束密度\(B_m\)を下げるとヒステリシス損は大きく減る。
渦電流損
渦電流損\(P_e\)とは、変化する磁束が鉄心内部に誘導電流(渦電流)を発生させ、その電流が鉄心の抵抗で熱になる損失です。
変圧器の鉄心に交番磁界が流れると、鉄心内部に 誘導起電力 が生じます。
その起電力によって鉄心内部に 渦状の電流が流れ、鉄心が持つ抵抗によってジュール熱になります。
これが 渦電流損です。
渦電流損は、
\(P_e=kB^2_mf^2d^2V\)
の式で表されます。
\(P_e[W]\):渦電流損
\(k\):材料定数
\(B_m[T]\):最大磁束密度
\(f[Hz]\):周波数
\(d[m]\):鉄心板の厚さ
\(V[m^3]\):鉄心体積
この式から、渦電流損についてわかることは、
・磁束密度\(B[T]\)の2乗に比例する。
・周波数\(f[Hz]\)の2乗に比例する。
・鉄心板の厚さ\(d[m]\)の2乗に比例する。
➡鉄心は、薄い電磁鋼板を積層して作ることで渦電流損失を減らせる。
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