変圧器の等価回路

変圧器の等価回路 変圧器

概要

変圧器の等価回路について解説していきます。
本頁では、T形等価回路とL形等価回路の最終形を示した後、
変圧器の構成から、T形等価回路とL形等価回路がどのように導出されるかを示します。

変圧器の等価回路図は、一見すると複雑な回路のように見えます。
しかし、その成り立ちについて理解をすれば、簡単に描けるようになります。

回路を描けるようになるためには、変圧器の構造が、どのように等価回路に落とし込まれ、計算しやすいように変換されていくかを理解していくことが重要です。

 

重要回路

T形等価回路

T形等価回路は、変圧器の特性を最も正確に表す基本的な等価回路です。回路の形状がアルファベットの「T」に似ていることからこの名前で呼ばれています。

T形等価回路は励磁電流と負荷電流の影響を正確に区別できるため、無負荷試験・短絡試験から求めたパラメータをそのまま使える点が大きな利点です。そのため、精密解析をするときに使用されます。

\(g_0[S]\):励磁コンダクタンス
\(r_1[Ω]\):一次巻線の巻線抵抗
\(r_2[Ω]\):二次巻線の巻線抵抗
\(Z_L[Ω]\):負荷インピーダンス

\(b_0[S]\):励磁サセプタンス
\(x_1[Ω]\):一次漏れリアクタンス
\(x_2[Ω]\):二次漏れリアクタンス

 

L形等価回路

L形等価回路は、変圧器を計算しやすくモデル化するために、変圧器の動作を近似的に表現するための簡略化した等価回路です。

L形等価回路は、電圧降下や効率、電圧変動率等の変圧器の計算がしやすくて便利なため、電験の計算問題では必ず使用する重要な回路です。

変圧器だけでなく、誘導電動機においても同じL形等価回路を使用するので、回路がどのように導出されるかについても理解しておいた方が良いでしょう。

 

L形・T形等価回路の導出

変圧器の等価回路の導出をしていく工程一覧
1.変圧器構成から理想変圧器の回路モデルを作成
2.巻線抵抗と漏れリアクタンス成分を考慮した回路を作成
3.励磁回路を追記する
4.T形等価回路
5.L形等価回路

 

1.変圧器構成から理想変圧器の回路モデルを作成

変圧器の構成は、鉄心に入力側の一次巻線と、出力側の二次巻線を巻くことで作られています。

変圧器の構成の図を、理想変圧器の回路に描きなおすと、左図のような回路になります。

理想変圧器は、励磁電流、巻線抵抗や、漏れ磁束を無視した理想的な変圧器です。

 

2.巻線抵抗と漏れリアクタンス成分を考慮した回路を作成

理想変圧器に、巻線抵抗\(r_1\)、\(r_2\)と、
漏れリアクタンス\(x_1\)、\(x_2\)を考慮すると、左図のような回路になります。

 

3.励磁回路を追記する

変圧器は、鉄心の中に磁束を通すことで動作をしています。
巻線に電流を流すことによって磁束を発生させることを励磁といい、励磁するために流れる電流を励磁電流といいます。
励磁電流が流れ、磁束を作る挙動をモデル化したものが励磁回路です。

励磁電流には鉄損を鉄損電流\(\dot{I_i}\)と、変圧器内に発生する磁界を表す磁化電流\(\dot{I_m}\)の2つの電流が流れています。

鉄損電流\(\dot{I_i}\)は、損失を表すのでコンダクタンス(抵抗)で表します。

磁化電流\(\dot{I_m}\)は、磁界を表すのでサセプタンス(リアクタンス)で表します。

鉄損とは、ヒステリシス損と、渦電流損の二つによって構成される損失です。

 

4.T形等価回路

理想変圧器を取り除き、その代わりに一次回路と二次回路を接続することで、T形等価回路にすることができます。

理想変圧器部分の変圧比は\(a\)、一次誘導起電力は\(\dot{E_1}\)、二次誘導起電力は\(\dot{E_2}\)です。

一次回路と二次回路を接続した端子電圧は、共通で等しくないといけないため、
・\(\dot{E_1}=a\dot{E_2}\)
・\(\dot{I’_1}=\frac{\dot{I_2}}{a}\)
となります。

二次電圧が\(a\dot{E_2}\)、二次電流が\(\frac{\dot{I_2}}{a}\)に換算されるため、二次巻線抵抗\(r_2\)と二次漏れリアクタンス\(x_2\)が変わらないとオームの法則が成り立ちません。
二次側の巻線抵抗\(r_2\)と、漏れリアクタンス\(x_2\)を、オームの法則から一次側に換算します。
換算とは、一次側から二次側の回路を見たときの変圧比分の補正をすることです。
\(\frac{E_1}{I’_1}=\frac{aE_2}{\frac{I_2}{a}}=a^2 \frac{E_2}{I_2}=a^2 r_2\)

これで、T形等価回路を導出することができました。

 

5.L形等価回路

変圧器では励磁電流は負荷電流に比べて極めて小さいため、励磁回路を一次端子側に移動させても、直列インピーダンスに流れる電流への影響はほとんどありません。この近似により計算が大幅に簡略化できます。

これで、L形等価回路を導出することができました。

 

計算例題(電験三種 平成30年度 機械 問15)

問題文

無負荷で一次電圧6600V、二次電圧200Vの単相変圧器がある。
一次巻線抵抗\(r_1=0.6Ω\)、一次巻線漏れリアクタンス\(x_1=3Ω\)、二次巻線抵抗\(r_2=0.5mΩ\)、二次巻線漏れリアクタンス\(x_2=3mΩ\)である。
計算に当たっては、二次側の所量を一次側に換算した簡易等価回路を用い、励磁回路は無視するものとして、次の(a)及び(b)に答えよ。


(a)この変圧器の一次側に換算したインピーダンスの大きさ[Ω]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)1.15   (2)3.60   (3)6.27   (4)6.37   (5)7.40


(b)この変圧器の二次側を200Vに保ち、容量200kV・A、力率0.8(遅れ)の負荷を接続した。
このときの一次電圧の値[V]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)6600   (2)6700   (3)6740   (4)6800   (5)6840

 

解答

(a)問題
変圧比は、\(a=\frac{V_1}{V_2}=\frac{6600}{200}=33\)

一次側から見たときの二次巻線抵抗\(r’_2[Ω]\)は、
\(r’_2=a^2r_2=33^2・0.5・10^{-3}=0.5445Ω\)
なので、一次巻線と二次巻線の合成抵抗\(R[Ω]\)は、
\(R=r_1+r’_2=0.6+0.5445=1.1445[Ω]\)

一次側から見たときの二次漏れリアクタンス\(x’_2[Ω]\)は、
\(a^2x_2=33^2・3・10^{-3}=3.267Ω\)
なので、一次漏れリアクタンス\(x_1\)と二次漏れリアクタンス\(x’_2\)の合成リアクタンス\(X[Ω]\)は、
\(X=x_1+x’_2=3+3.267=6.267[Ω]\)

以上より、合成インピーダンス\(Z[Ω]\)は、
\(Z=\sqrt{R^2+X^2}=\sqrt{1.1445^2+6.267^2}=6.37[Ω]\)

以上より、(4)6.37 が答えです。


(b)問題

回路を流れる一次電流\(I_1[A]\)は、
\(\begin{eqnarray}
I_1&=&\frac{S}{aV_2} \\ \\
&=&\frac{200・10^3}{6600} \\ \\
&=&30.3[A]
\end{eqnarray}\)

力率\(cosθ=0.8\)なので、\(sinθ=\sqrt{1-cos^2θ}=0.6\)

一次端子から二次端子の電圧降下\(ΔV[V]\)は、
\(ΔV=IRcosθ+IXsinθ=30.3・1.1445・0.8+30.3・6.27・0.6=141.731[V]\)

二次電圧が\(V_2=6600[V]\)なので、一次電圧\(V_1[V]\)は、
\(V_1=V_2+ΔV=6600+141.731=6741.731≒6740[V]\)

以上より、(3)6740 が答えです。

 

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