変圧器の並列運転

変圧器の並列運転 変圧器

変圧器の並列運転とは

2台以上の変圧器を並列に接続し、負荷に電力を供給する運転方式です。

並列運転することで、1台の変圧器では供給しきれない負荷に対応が可能となる等の大きなメリットがあります。

しかし、並列運転の条件を満たさないと、性能を引き出せなかったり、最悪の場合は電気事故につながります。

 

並列運転によるメリット
  • 負荷容量の増加に対応
    負荷増加によって変圧器1台では容量が不足したとき、並列運転することで対応することができます。
  • 設備利用率の向上
    負荷に応じて運転台数を切り替えることで、軽負荷時の鉄損を減らし、運転効率を向上できます。
  • 電力供給の信頼性向上(停電リスクを下げられる)
    1台故障しても全停電になりにくく、供給信頼度が向上します。
  • 保守・点検を容易にできる
    変圧器を1台停止して点検している間も、他方で給電を継続できます。

 

並列運転の条件

並列運転するためには、次の4つの条件を満たす必要があります。

  • 極性が同じであること
    極性が異なる変圧器がつながると、ほぼ短絡状態となり、非常に大きな循環電流が流れて変圧器が焼損します。
  • 変圧比(巻数比)が等しいこと
    変圧比が異なると、電位差が生じるため循環電流が流れてしまいます。
  • %インピーダンスがほぼ等しいこと
    電流を定格出力に比例するように出力できなくなります。
  • インピーダンスの位相角(X/R比)がほぼ等しいこと
    \(\frac{X}{R}\)が等しくないと、各々の変圧器から出力される電流に位相差が生じます。
    変圧器間で負荷電流を適切に分担できなくなるため、供給できる電流が減少します。

 

三相変圧器の場合

上記の4条件を満たす必要がある上、更に2つの条件が追加されます。

  • 相回転(相順)が同じ
    正相(R相→S相→T相)の変圧器と、逆相(R相→T相→S相)の変圧器がつながると、ほぼ短絡状態となり、非常に大きな循環電流が流れて変圧器が焼損します。
  • 角変位(位相変位)が同じ
    三相変圧器ではΔ・Yの結線方式によって、一次側電圧と二次側電圧の間に位相差が発生します。それが角変位です。

 

並列運転条件1:極性が同じであること

極性が同じ場合

極性が違う場合(大きな循環電流)

右図のように極性が違う場合は、二つの変圧器間で循環電流が流れます。
この循環電流は短絡電流と同等の大きな電流であり、巻線が焼損します。

 

並列運転条件2:変圧比(巻数比)が等しいこと

巻数比が異なり、二次側の電圧が異なると電位差が生じるため循環電流が流れてしまいます。

 

並列運転条件3:%インピーダンスがほぼ等しいこと

変圧器を並列運転する場合、%インピーダンス( \(\% Z\) )が異なると負荷分担が不均等になるため問題が発生します。

なぜ負荷分担が不均等になるのか?
その理由は、並列運転中の各変圧器の負担電流は、インピーダンスに反比例して流れるからです。

\( \% Z\)が異なるとどういう問題が起こるかについて、計算を踏まえて示していきます。

【例】
変圧器A:1000kVA、%Z=5%
変圧器B:1000kVA、%Z=10% の変圧器を並列接続すると、

\(I_A:I_B=\frac{1}{5}:\frac{1}{10}=2:1\)

となり、AがBの2倍の電流を負担します。
半分ずつ負担して欲しいところですが、Aに負担が集中します。

その結果、発生する問題として次のような事が考えられます。
 ① 一方の変圧器が過負荷になる
 ② 設備容量を有効活用できない
 

 

並列運転条件4:インピーダンスの位相角(X/R比)がほぼ等しいこと

この運転条件は、「大きさ」だけでなく「向き(位相)」も揃えなければならないという条件です。

変圧器の内部インピーダンス\(Z\)は \(Z = R + jX\) です。
\(\frac{X}{R}\)比は、電流の位相を表します。

位相角\(\frac{X}{R}\)比が等しい場合
並列運転する変圧器の\(\frac{X}{R}\)の比が等しいと、分担電流の位相が揃います。
位相が揃っていれば、分担電流を単純に足し合わせた値が全体の電流になります。

位相角\(\frac{X}{R}\)比が異なる場合
変圧器間の分担電流に位相差\(θ\)が生じるので、分担電流を足し合わせるには、ベクトル和で計算する必要があります。
ベクトル和となると、単純に足し合わせるよりも小さくなるため、各変圧器の全容量を使い切れません。力率の悪化と効率低下を招き、定格電力の合計まで出力電力を出せません。

2つの電流ベクトルが同じ向き
→スカラー的に加算できる

ベクトル和となるため、
合計出力は小さくなる

 

並列運転条件5(三相のみ):相回転(相順)が同じ

正相(R相→S相→T相)の変圧器と、逆相(R相→T相→S相)の変圧器がつながってしまうと、極性が異なる変圧器を接続してしまった場合と同様に、ほぼ短絡状態となり、非常に大きな循環電流が流れて変圧器が焼損します。

正相の変圧器の相回転

逆相の変圧器の相回転

 

並列運転条件6(三相のみ):角変位(位相変位)が同じ

三相変圧器では、ΔとYの結線方式によって、一次側電圧と二次側電圧の間に位相差が発生します。
並列接続されている変圧器全てが、一次側電圧から見て、二次側電圧の位相が同じ分だけずれている場合は、問題ありません。
 ・Δ-Δと、Y-Yは一次側と二次側の位相が同じです。
 ・Δ-Yは、YがΔよりも30°進むので、二次側が30°進みです。
 ・Y-Δは、ΔがYよりも30°遅れるので、二次側が30°遅れです。
これらの情報から、OK・NGは、次の様に決まります。

接続OK
Δ-Δ同士、Y-Y同士、Δ-Y同士、Y-Δ同士、Δ-ΔとY-Y

接続NG
Δ-ΔとΔ-Y、Δ-ΔとY-Δ、Y-YとΔ-Y、Y-YとY-Δ

 

角変位(位相変位)が異なる変圧器を接続すると、非常に大きな循環電流が流れ、焼損、継電器動作等に繋がります。

 

循環電流

循環電流とは負荷へ供給される電流ではなく、変圧器同士の間を流れる不要な電流です。
循環電流が流れることによって、銅損(\(I^2R\)損)が増加して発熱することで、効率低下を招きます。

 

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