電気工学で複素数を学ぶ理由
交流回路では、電圧や電流が「大きさ」と「位相(タイミングのずれ)」の2つの情報を持っています。この2つの情報を、まとめて扱えるのが複素数です。
抵抗・コイル・コンデンサを含む交流回路の計算をするとき、三角関数で計算しようとすると、電圧\(v\) 、電流\(i\) からインピーダンス\(Z\) を求める計算だけでも、倍角の公式、半角の公式を駆使して求めるような複雑な計算になってしまいます。
しかし、複素数を使う事で、掛け算・割り算だけで解けるようになります。
大きさ + 位相 ⇒ 複素数 1つでまとめて計算できる
複素数の便利な点
複素数とは、実数だけでは表現できない数や解けない計算を扱うために、虚数を組合わせることで、計算できる幅を拡張したものです。
実数だけでは、実数軸に沿った数字の表現しかできませんでした。
実数の軸に、虚数の軸を加えて複素数に拡張することで、取扱える数字の表現が平面に広がります。

複素数の基礎
複素数の定義
実数\(a\)、\(b\)と、虚数単位\(j\) を使い、次の形で表す数を複素数といいます。
\(a\)を実部、 \(jb\)を虚部と呼びます。
\(z=a+jb\)
z:複素数
a:実部
b:虚部
j:虚数単位
例 : \(Z=3+j4\) → 実部3、虚部4。
虚数とは
通常、どんな数を2乗してもマイナスにはなりません。(\(1^2=1\)、 \((-1)^2=1\) )
そこで、2乗して −1 になる数 j を 虚数単位 とよびます。
虚数は、数学では\(i\) を使います。
しかし、電気では電流 i と区別するため j を使います。
\(j^2=-1\) ( \(j=\sqrt{(-1)}\) )
複素数平面(ガウス平面)とは
横軸に実部、縦軸に虚部を取った平面を、複素数平面と呼びます。
複素数\(Z=a+jb\)は、原点から、座標(a,b)の点までの矢印(ベクトル)で表せます。
交流回路における複素数の計算は、ベクトルを使った計算が多いです。

複素数の直行形式
複素数の実部aと、虚部bを使って、\(Z=a+jb\)で表したものを、複素数の直行形式と呼びます。
例: \(Z=1+j \sqrt{3}\)

\(Z=a+jb\)
複素数の極形式
複素数の大きさ|Z| と、偏角∠θを使って、\(Z=|Z|∠θ\) で表したものを、複素数の極形式と呼びます。
例: \(Z=1+j\sqrt{3}\)
→ \(|Z|=2\) 、\(∠θ=60°\) なので、 \(Z=2∠60°\)

\(Z=|Z|∠θ\)
複素数の大きさ(絶対値)
原点から点 \(Z\) までの距離を絶対値 \(|Z|\) といいます。
絶対値\(|Z|\)が複素数の大きさです。
複素数の大きさを求めるには、三平方の定理で求めます。

例: \(Z=1+j \sqrt{3}\)のとき
\(|Z|=\sqrt{1^2+(\sqrt{3})^2}=\sqrt{1+3}=2 \)
\(|Z|=\sqrt{a^2+b^2}\)
複素数の偏角∠θ
実軸から矢印までの角度を偏角 ∠θ といいます。
偏角∠θは、実軸a、虚軸bを使い、
\(∠θ=tan^{-1}\frac{b}{a}\) で表されます。
例: \(Z=1+j \sqrt{3}\)
→ \(∠θ=tan^{-1} \frac{\sqrt{3}}{1}=tan^{-1} \sqrt{3}=60° \)

\(\displaystyle \frac{b}{a}=tanθ\) ⇔ \(∠θ=tan^{-1}\frac{b}{a}\)

コメント