単相誘導電動機の始動方式

単相誘導電動機の始動方式 機械

単相誘導電動機の始動方式の種類

単相誘導電動機は、単相電源からできる磁界は交番磁界であるため、始動トルクが0という大きな問題があります。
そのため、始動のための工夫がされ、主に3つの始動方式があります。

 くま取りコイル分相始動コンデンサ始動
始動
トルク
非常に小さい小~中程度単相の中で最も大きい
始動電流小さい大きい分相始動より抑えられる
価格最も安価安価やや高価
適した
容量
数W~数十W数十W~数百W100W~数kW
(単相機の中では大型)
長所構造がシンプル
安価で小型・軽量
メンテほぼ不要
安価
構造がシンプル
始動トルクが大きい
重負荷に強い
力率が比較的良い
短所始動トルクが非常に弱い
大型化・重負荷不可
回転方向変更が難しい
始動トルクが小さい
始動電流が大きい
補助巻線が過熱しやすい
スイッチの故障リスクあり
コンデンサの故障リスクあり
スイッチの故障リスクあり
分相よりやや高価

 

くまとりコイル形誘導機

構造(くまとりコイル)

固定子(ステータ)の磁極の一部に溝を掘り、そこに短絡コイルをはめ込みます。
この短絡コイルを「くま取りコイル」と呼びます
くま取りコイルが磁束の変化を、部分的に遅らせることで、正相回転する磁界と逆相回転する磁界の釣り合いを崩すことができるので、静止状態から始動することができるようになります。

 

始動の流れ(くまとりコイル)
  1. 主巻線(固定子の主コイル)に単相交流が流れ、交番磁界が発生する。
  2. 主磁束がくま取りコイルと鎖交すると、くま取りコイルに誘導起電力が生じ、短絡電流が流れる。(レンツの法則により、主磁束の変化を妨げる方向)
  3. くま取りコイルがある部分の磁束が、変化を妨げられることによって、くま取りコイルがない部分の磁束より時間的に遅れる。
  4. 磁束の強い位置が、くま取りコイルがない側 → ある側へ移動する
    (疑似的な回転磁界)が発生して始動する。

 

用途・長所・短所(くまとりコイル)

長所
・構造がシンプル
・安価で小型・軽量
・メンテナンスがほぼ不要

短所
・始動トルクが非常に小さい
・効率が低く、力率も悪い
・大容量には不向き

主な用途
主な用途始動トルクが小さくてもよい小型・軽負荷の機器に限定されます。
 (出力は数W〜数十W程度)
・扇風機
・小型ポンプなど

 

分相始動形誘導機

構造(分相始動)

固定子に主巻線(運転巻線)と補助巻線(始動巻線)の2つを、固定子鉄心の円周方向に空間的に90°ずらして配置します。

主巻線は太い線で、巻数が多いため、抵抗が小さく、リアクタンスが大きいです。
補助巻線は細い線で、巻数が少ないため、抵抗が大きく、リアクタンスが小さいです。

 

始動の流れ(分相始動)
  1. 両巻線に同じ単相電圧を印加する。
  2. 主巻線電流\(\dot{I_m}\)が主磁束\(\dot{φ_m}\)を発生する。
  3. 補助巻線電流\(\dot{I_s}\)は抵抗が大きくリアクタンスが小さいため、主巻線よりも位相が20°~30°程度進む。そのため、\(\dot{φ_m}\)よりも位相が進んでいる\(\dot{φ_s}\)を発生する。
  4. 擬似的な回転磁界が作られ、回転子に誘導電流が生じて始動トルクが発生し、モーターが回転を始める。
  5. 回転数が同期速度の70~80%程度まで達すると、遠心力スイッチが補助巻線を回路から切り離す。
  6. 主巻線のみで単相運転を続ける。

 

用途・長所・短所(分相始動)

長所
・構造がシンプル
・安価で小型・軽量
・くま取りコイルよりは、始動トルクが大きい

短所
・始動トルクが比較的小さい
・始動電流が大きい
・頻繁な始動・停止をすると、
 補助巻線が過熱する

主な用途
主な用途始動トルクが中程度で十分な、小〜中容量の軽〜中負荷機器に使われます。
 (出力は数十W〜数百W程度)
・小型ファン、送風機
・小型ポンプ
・電動工具の一部など

 

コンデンサ始動

構造(コンデンサ始動)

分相始動形誘導機の補助巻線に、直列に大容量のコンデンサを直列接続し、始動特性を改善した方式です。

 

始動の流れ(コンデンサ始動)
  1. 両巻線に同じ単相電圧を印加する。
  2. 主巻線電流\(\dot{I_m}\)が主磁束\(\dot{φ_m}\)を発生する。
  3. 補助巻線電流\(\dot{I_s}\)はコンデンサにより進相し、\(\dot{φ_m}\)よりも80°〜90°近く位相が進んでいる\(\dot{φ_s}\)を発生する。
  4. 空間的90°配置+電気的位相差≈90°により、
    擬似的に強い回転磁界が作られ、回転子に誘導電流が生じて始動トルクが発生し、モーターが回転を始める。
  5. 回転数が同期速度の70~80%程度まで達すると、遠心力スイッチが補助巻線を回路から切り離す。
  6. 主巻線のみで単相運転を続ける。

 

用途・長所・短所(コンデンサ始動)

長所
・構造がシンプル
・始動トルクが大きい
・始動電流が分相始動方式より低い
 

短所
・他の単相誘導機の方式より高価
・三相誘導機より効率・力率が劣る
・コンデンサの劣化が故障の主な原因になる

主な用途
始動トルクが中程度で十分な負荷に使われます。(出力は100W〜数kW程度)
・冷蔵庫・エアコン圧縮機
・業務用ポンプ
・洗濯機など

 

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