複巻式直流電動機の特性

複巻式直流電動機の特性 機械

概要

複巻式直流電動機は、並列接続の界磁巻線と、直列接続の界磁巻線の両方を組み込んだ直流機です。

2つの界磁巻線を組み込むことで、分巻式直流機と、直巻式直流機の中間特性を得ることができます。

特徴
・始動時に大きなトルクを得られる直巻の特性
・負荷に寄らずにほぼ一定の回転速度が得られる分巻の特性
➡上記2つの直巻式と分巻式の中間的な特性が得られる。

欠点
・構造が複雑で高価

用途
クレーン、リフト等の産業用機械に使われます。
大きな始動トルクが求められ、負荷変動に対する安定性があるため適しています。

  

回路と特性

外分巻と内分巻の回路

複巻式直流電動機は、外分巻と、内分巻の2種類があります。

外分巻

内分巻

外分巻(電動機として使用することが一般的)
並列接続される界磁巻線\(R_f\)が、直列接続される界磁巻線\(R_{af}\)よりも外側(端子側)に接続されるものです。
端子に電圧\(V[V]\)を加えて電動機として使用するとき、並列の界磁巻線\(R_f\)は、直列の界磁巻線\(R_{af}\)の外側にあるので、負荷が増減しても励磁電流\(I_f\)は一定です。
そのため、電動機として使用することが一般的です。

内分巻(発電機として使用することが一般的)
並列接続される界磁巻線\(R_f\)が、直列接続される界磁巻線\(R_{af}\)よりも内側(電機子側)に接続されるものです。
外部から回転軸を回すような機械的な入力をして発電機として使用するとき、並列の界磁巻線\(R_f\)は、直列の界磁巻線\(R_{af}\)の内側にあるので、端子に接続される負荷(R\)が増減しても励磁電流\(I_f\)は一定です。
そのため、 発電機として使用することが一般的です。

内分巻を電動機として使用することもできますし、外分巻を発電機として使用することもできます。

 

和動複巻と差動複巻

2つの界磁巻線によって生じた磁束が、同じ向きを向くものが和動複巻、逆向きとなるものが差動複巻と呼びます。
実際に使われるのは和動複巻です。
差動複巻が少ない理由は、始動トルクが弱く、回転速度も安定しないためです。

和動複巻(界磁磁界の向きが同じ)

差動複巻(界磁磁界の向きが逆)

 

和動複巻の速度特性

和動の外分巻直流電動機の速度特性を導出します。
主回路の電圧の基本式は、回路図から次の①式であることがわかります。
\(V=E+I_a(R_a+R_{af})\) …①

直流機が回転することによって発生する逆起電力\(E[V]\)は、磁束\(\Phi[Wb]\)と、回転数\(N[min^{-1}]\)に比例するので、比例定数を\(K\)とすると、②式で表されます。
\(E=K \Phi N\) …②

②式を①式に代入し、回転数について整理すると、
\(V=K \Phi N+I_a(R_a+R_{af})\)

⇔ \(\displaystyle N=\frac{V-I_a(R_a+R_{af})}{K \Phi}\) …③

磁束\(\Phi[Wb]\)は、直巻の界磁巻線の磁束\(\Phi_{af}\)と、分巻の界磁巻線の磁束\(\Phi_f\)の和なので、
\(\Phi=\Phi_{af}+\Phi_f\) …④

\(\Phi_{af}\)は負荷電流\(I_a\)に比例するので、その比例定数を\(k’\)とすると、
\(\Phi_{af}=k’I_a\) …⑤

③式に、④・⑤式を代入すると、
\(\displaystyle N=\frac{V-I_a(R_a+R_{af})}{K (\Phi_f+k’I_a)}\) …⑥

⑥式から、分巻直流機と直巻直流機を合わせたような特性であることがわかります。

 

負荷電流\(I_a\)-回転数\(N\)特性

複巻直流機の特性は、分巻直流機と、直巻直流機の中間の特性を持ちます。

左図は、それぞれの直流機の負荷電流-回転数特性を示したグラフです。

 

和動複巻のトルク特性

和動の外分巻直流電動機のトルク特性は次式で表されます。
\(T=K_T \Phi I_a\) …⑦

④・⑤式を⑦式に代入すると、
\(T=K_T \Phi_f I_a+K_T k’ I_a^2\) …⑧

⑧式から、トルク\(T\)の大きさは、
・負荷電流\(I_a\)に比例する分巻の特性
・負荷電流\(I_a\)の二乗に比例する直巻の特性
の2種類の特性の和であることがわかります。

負荷電流\(I_a\)-トルク\(T\)特性

複巻直流機の特性は、分巻直流機と、直巻直流機の中間の特性を持ちます。

左図は、それぞれの直流機の負荷電流-トルク特性を示したグラフです。

 

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この本より詳しい本は少ないと思いますので、直流電動機の設計を学ぶ人に取っては良い本かと思われます。

感覚的には、研究論文化する内容ではないけど、後世には残しておきたいと思ったことをまとめたというような感じでしょうか。
文章の癖は強いので、もし買う場合はサンプルを読んでから購入することを推奨します。

 

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