温度上昇試験とは
変圧器を定格電流を流したときに、変圧器の各部の温度が許容温度を超えないことを確認するために、温度上昇試験を実施します。
変圧器が温度上昇する要因
温度上昇の要因は、鉄損(ヒステリシス損、渦電流損)と、銅損です。
これらの損失が、熱となり、変圧器の温度上昇の要因となります。
変圧器の温度上昇による問題
温度が上がりすぎると、変圧器内部の劣化が進みます。(絶縁紙、ワニス、油、巻線等)
つまり、温度上昇試験は、変圧器の寿命確認試験とも言えます。
温度上昇試験の方法
温度上昇試験の方法は二つあります。
小型の変圧器は、実負荷法が使用されます。
大型の変圧器は、返還負荷法が使用されます。
電験三種の問題として返還負荷法が出題されることが時々あります。
1.実負荷法

変圧器に、定格電圧を加えたときに、定格電流が流れる実負荷を接続して運転する試験です。(定格容量の負荷)
この試験は、変圧器の温度が飽和して変化しなくなるまで試運転します。
負荷率1で変圧器を動作させるので、鉄心、巻線、導体接続部、タンク、放熱器の各部分の発熱が定格負荷運転時と同じになります。
実負荷法は、不良箇所がある場合、異常発熱するので、異常箇所がわかるという長所があります。
しかし、負荷抵抗器 \(P_{load}\) は、変圧器の容量が大きくなると非常に大掛りな設備が必要となるため、小型の変圧器の試験にしか実施しません。
2.返還負荷法
返還負荷法は、2台の変圧器間で電力を循環させることで、外部電源からは鉄損と銅損のみを供給し、実負荷を接続することなく定格負荷時と同等の温度上昇状態を再現する試験方法です。
この方法は、銅損による温度上昇を見るためには定格電流を流さなければならないが、負荷を接続するのは大変であるため、「負荷を接続しなくても定格電流を流せないか」という発想を実現した方法です。
構成と結線

返還負荷法 結線図
返還負荷法は、3台の変圧器を使用します。
・\(T_1\):測定対象である変圧器
・\(T_2\):\(T_1\)と同じ仕様の変圧器
・\(T_3\):補助変圧器
\(T_1\)と、\(T_2\)の一次側は、両変圧器に同じ電圧が加わるように並列接続し、鉄損供給用電源に接続します。
\(T_1\)と、\(T_2\)の二次側は、誘起電圧が互いに打ち消し合うように逆極性で直列接続します。その接続点に補助変圧器\(T_3\)を介して銅損供給用電源を接続します。
左側の鉄損供給電源からは、鉄損のみを供給します。
右側の銅損供給電源からは、銅損のみを供給します。
鉄損の供給原理

鉄損供給電源から供給された電力の挙動について注目するため、重ねの理を使って銅損供給電源を消去して考えます。
\(T_1\)と\(T_2\)の二次側は、逆極性で直列接続されているため、誘起電圧が互いに打ち消し合い、補助変圧器\(T_3\)の両端が同電位となります。そのため、負荷電流\(\dot{I}_2\) は流れず、銅損は発生しません。
したがって、鉄損\(P_i\)だけを鉄損供給電源から、変圧器\(T_1\)、\(T_2\)に送り込むことができます。
銅損の供給原理

銅損供給電源から供給された電力の挙動について注目するため、重ねの理を使って鉄損供給電源を消去して考えます。
この回路では、銅損供給電源からは、変圧器\(T_3\) を介して銅損分の電力のみが供給されます。
\(T_3\) から供給された電力は、\(T_1\) の二次から一次側に通った後、\(T_2\) の一次から二次側に戻ります。(回路図において、左が一次側、右が二次側です)
定格電流\(\dot{I_{2n}}\) を流し続けられれば、負荷率1のときの銅損を発生し続けられます。
そして、\(T_1\) と \(T_2\) の間で電力が循環しているため、循環している回路中の損失は銅損のみとなり、銅損による損失分を補うだけで変圧器に定格電流\(\dot{I_{2n}}\) を流し続けることができます。

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