概要
他励式直流電動機は、左図のように、励磁回路の電源が主回路の電源と別々になっている直流電動機です。
特徴
・負荷トルクの変化による回転数の変化が小さい
・励磁電流を制御することで、回転数・トルクを精密制御することが可能
２つの特徴を合わせると、
「負荷の大きさに寄らず、必要な回転数を得ることが出来る直流電動機」ができます。
用途
クレーンなどの建設機械、ロボット用のサーボモータ等のような、
負荷に寄らず、必要な速度を得たい、精密な制御が必要な機器に応用されています。
公式まとめ
電圧の基本式
\(V=E+I_aR_a\)
逆起電力の重要式（参考：直流機の回転数のページ）
\(E=K \Phi N\)
速度特性式（導出すれば良いので覚える必要はない）
\(\displaystyle N=\frac{V-I_aR_a}{K \Phi}\)
トルク特性式（参考：直流機のトルクのページ）
\(T=K_T \Phi I_a\)
記号の意味一覧
\(V[V]\)：入力電圧
\(E[V]\)：電機子導体に発生する逆起電力
\(I_a[A]\)：電機子電流
\(R_a[Ω]\)：電機子導体の抵抗
\(N[min^{-1}]\)：１分間あたりの回転数
\(T[Nm]\)：トルク
\(\Phi[Wb]\)：励磁回路で作り出した界磁磁束
\(K\)：比例定数（速度特性）
\(K_T\)：比例定数（トルク特性）
回路と特性
回路図
直流機の構造図から、回路図に書き変えると、次のようになります。
➡
回路図から分かること
・励磁電流\(I_f\)と、電機子電流\(I_a\)は、別の電源\(V\)から供給されている。
・励磁電流\(I_f[A]\)が、励磁回路入力電圧\(V_f[V]\)による。
➡界磁磁束\(\Phi[Wb]\)の大きさは、\(V_f\)で操作することができる。
速度特性
主回路の電圧の基本式は、直流機の回路図から次の①式であることがわかります。
\(V=E+I_aR_a\) …①
直流機が回転することによって発生する逆起電力\(E[V]\)は、磁束\(\Phi[Wb]\)と、回転数\(N[min^{-1}]\)に比例するので、比例定数を\(K\)とすると、②式で表されます。
\(E=K \Phi N\) …②
②式を①式に代入し、回転数について整理すると、
\(V=K \Phi N+I_aR_a\)
⇔ \(\displaystyle N=\frac{V-I_aR_a}{K \Phi}\) …③
負荷電流\(I_a\)－回転数\(N\)特性
③式について
・負荷電流\(I_a[A]\)を横軸
・回転数\(N[min^{-1}]\)を縦軸
としてグラフ化すると、左図の通りになります。
無負荷の時に、回転数は最大となります。
（\(N_0=\frac{V}{K \Phi}[min^{-1}]\)）
界磁磁束\(\Phi\)－回転数\(N\)特性
③式について、
・界磁磁束\(\Phi[Wb]\)を横軸
・回転数\(N[min^{-1}]\)を縦軸
としてグラフ化すると、左図の通りになります。
界磁磁束に反比例して回転数が変化するため、励磁回路の電圧調整をすることで、速度制御をすることが出来ます。
トルク特性
主回路とは別に励磁回路の電源に接続するので、界磁磁束\(\Phi[Wb]\)は主回路の回転数によらず一定です。
そのため、トルク特性は次式のようにシンプルに表記できます。
\(T=K_T \Phi I_a\) …④
④式をグラフ化すると、左図の通りになります。
負荷が重くなるほど、回転させるために必要なトルク\(T[Nm]\)が増加し、負荷電流\(I_a[A]\)も増加します。
速度とトルクの釣り合い
回転数とトルクは、負荷によってどのように決まるかを考えます。
負荷を動かすための要求トルクが\(T_1[N]\)とします。
このとき、トルクの式
\(T=K_T \Phi I_a\)
から、負荷電流\(I_a\)が決まります。
負荷電流が決まると
\(N=\frac{V-I_aR_a}{K \Phi}\)
から、回転数\(N\)も決まります。
次に、負荷が変化した時を考えます。
グラフの見方
負荷が小さくなって要求トルクが\(T_2\)になると、負荷電流\(I_a\)が減少し、回転数\(N\)が増加します。
負荷が大きくなって要求トルクが\(T_3\)になると、負荷電流\(I_a\)が増加し、回転数\(N\)が減少します。
グラフから分かること
他励式直流電動機は、トルクの変化による負荷電流\(I_a\)の変化は、比例の関係です。
負荷電流\(I_a\)が変化しても、巻線抵抗による電圧降下分（\(I_aR_a\)）しか回転数に寄与しません。
したがって、回転数は負荷の大きさが変化しても、ほとんど変動しないということがわかります。
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参考書
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