概要
電機子反作用によって、火花が発生することで、ブラシが焼損する問題等があります。
本ページでは、電機子反作用の原理と、その対策について解説します。
電機子反作用
電機子反作用とは、電機子巻線に電流が流れることで発生する磁束が、界磁磁束に強めたり、弱めたりするする影響を与えることで、磁束の分布を偏らせる現象です。
この影響により、電気的中性軸がずれる問題が発生します。
電気的中性軸とは

N極から出てくる磁束密度と、S極に入る磁束密度の中間地点です。つまり、磁束密度が\(0[T]\)となる点をつなげていった線が電気的中性軸です。
幾何学的中性軸は、直流機の機械的な構造に基づく軸ですが、電機子に電流が流れていないときの電気的中性軸と一致します。
電機子反作用の原理

①電機子に電流が流れていないとき、N極の磁極から出てきた界磁磁束は真っすぐにS極の磁極に入ります。
この時、界磁磁束と直角になる軸である電気的中性軸は、左図の通り、幾何学的な中性軸と同じです。

②電機子に電流が流れると、電機子の周囲に磁束が発生します。

③界磁磁束と、電機子磁束が合わさります。
この二つの磁束のベクトルを合成すると、合成磁束になります。
左図のように、電機子に対する位置によって、合成磁束のベクトルの向きと大きさは異なります。

④電機子全体の合成磁束を線で描くと、左図のようになります。
幾何学的中性軸に対して、電気的中性軸が傾きます。
電機子反作用の影響
電機子反作用によって、電気的中性軸が傾くことによって次のような問題が発生します。
- 電機子巻線で発生した起電力をブラシで短絡することになるので、短絡電流が流れてブラシから火花が出て整流子を焼損します。
- 合成磁束は界磁磁束より小さくなる減磁作用があるので、発電機の場合は電圧低下、電動機の場合は回転速度が上昇します。
電機子反作用の対策
電機子磁束を打ち消すことで、電機子反作用の対策をすることができます。
その対策方法として、補償巻線や、補極を設置する方法があります。
進角調整

電機子反作用によってずれる電気的中性軸の位置を予め予測しておき、そこをブラシの接触点とすることで対策する方法です。
電気的中性軸は、電機子電流の大きさによって変化するので、負荷変動があるような直流機には対応できません。
補極
幾何学的中性点上に、補極と呼ばれる磁極を設置する方法です。

補極は、電機子反作用の原因である電機子電流の磁束に対して、打ち消す方向に磁束を発生させます。
補極の巻線と、電機子巻線を直列に接続することで、補極は電機子電流の大きさに比例した磁束を発生することが出来ます。
その結果、負荷変動に対応することが可能になります。
簡単な構造で対策できるため、電機子反作用の対策として小型機から大型機まで広く使われます。
補償巻線
補償巻線とは、界磁磁束を作るための磁極表面に、界磁巻線とは別のスロットを設けて配置した巻線です。

補償巻線は、電機子反作用の原因である電機子電流の磁束に対して、打ち消す方向に磁束を発生させます。
補償巻線と、電機子巻線を直列に接続することで、補償巻線は電機子電流の大きさに比例した磁束を発生することが出来ます。
その結果、負荷変動に対応することが可能になります。
補償巻線は、主磁極に巻線を埋め込むため、構造が複雑になります。
そのため、大型機でないと採用が出来ない対策方法です。
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