直流機の回転数

直流機の回転数 機械

概要

直流機の回転数\(N[rpm]\)、トルク\(T[N・m]\)は、磁極数、電機子導体数や、電機子巻線の接続方法といった内部構造によって大きく異なります。
本頁では、直流機の回転数について、大きな影響を与える要素について解説し、重要要素を踏まえた電圧と回転数の関係式の導出を行います。

 

磁極数

界磁の磁極数は、直流機の回転数、トルクを大きく変化させる重要な要素です。

磁極とは

磁極数について触れる前に、磁極とは何かを左図に図示します。

直流機内に磁界を発生させる部分全体の事を界磁(field system)と呼び、界磁用のN極・S極の磁石の部分を磁極と呼びます。

 

磁極数とは

磁極数の数え方は、N極、S極それぞれを1極として数えます。
そして、直流機にはN極・S極がセットで組み込まれるため、2極、4極、6極、、、、と偶数で増えていきます。
例として、2極、4極の場合の配置例を下図に示します。

磁極数を増加させた場合
回転数\(N[rpm]\):低くなります
トルク\(T[N・m]\):大きくなります

磁極数を減少させた場合
回転数\(N[rpm]\):高くなります
トルク\(T[N・m]\):小さくなります

 

電機子導体

電機子導体も磁極数と並び、直流機の回転数とトルクを大きく変化させる重要な要素です。

電機子とは

直流機の機械的に回転する部分が回転子です。
電機子は、界磁と相互作用して電気エネルギーと運動エネルギーの変換を行う部分で、回転子に巻かれているコイル(電機子巻線)が電機子として働きます。

 

電機子導体とは

電機子巻線と、界磁の関係を示す図に示すと、下図のようになります。

電機子導体
電機子巻線のうち、赤線が電磁力が働く範囲です。
この電磁力が働く範囲のコイルの一辺を電機子導体と呼びます。

電機子巻線
電機子として回転子に巻かれた導線の束を指します。
電機子導体に加えて、電磁力が働かない範囲(橙線)も含めたコイル全体を電機子巻線と呼びます。

 

電機子導体数

下図左側に、回転子に巻かれた電機子巻線の図を示します。
この図においても、赤線部分を電機子導体、赤線+橙線を電機子巻線としています。

上図右側は、整流子・ブラシから見た電機子巻線を、回路図として展開した電機子巻線回路です。
多くの電機子導体が直列につながれた回路を、さらに並列に並べてつながれていることが分かります。

電機子導体の総導体数を\(Z\)[個]並列回路の数を\(a\)[個]とすると、
並列1回路のなかにある、直列接続された導体数は\(\frac{Z}{a}\)[個]で表されます。

 

電機子巻線の巻き方と並列回路数

電機子巻線と整流子片の接続方法によって、重ね巻と波巻の2種類の巻き方があります。
この2つの接続方法は並列回路数が異なるので、次のような特徴に分かれます。

 重ね巻波巻
 並列回路数\(a\) 磁極数と同じ
電圧・電流 低電圧・大電流  高電圧・低電流 

 

回転数\(N[rpm]\)

重要公式

界磁\(\Phi[Wb]\)で、回転数\(N[rpm]\)で回転している直流発電機の出力電圧\(E[V]\)の関係式
\(\displaystyle \boldsymbol{E=\frac{pZ}{60a}・\Phi・N}\)

※この式は、電動機、発電機のどちらとして使う場合においても、同じ式が成り立ちます。

上記関係式の機械的な要素を比例定数\(K\)にまとめた場合、
\(\displaystyle \boldsymbol{E=K・\Phi・N}\)

※直流機の運転に関する問題で確実に使用する最も重要な式です。

\(\displaystyle \boldsymbol{E=\frac{pZ}{60a}・\Phi・N}\)の式からわかること

・磁極数\(p\)が増加すると、回転数\(N\)が低下する。
・1回路の導体数\(\frac{Z}{a}\)が大きい波巻だと、回転数\(N\)に対する電圧\(E\)が高い。

 

回転数の式の導出

重要公式で示した式について、直流発電機として、式を組み立てて導出します。
導出の工程は長いため、(1)~(5)の5工程に分けて示します。

 

(1)誘導起電力の式

直流発電機は回転軸を回転させることで、電機子の端子間に電圧が発生します。
これは、電機子導体が磁束を横切るように移動することで、フレミング右手の法則に従った方向に、導体1個1個全てに、誘導起電力が発生するためです。

1導体当たりの誘導起電力を\(e[V]\) の大きさは、ファラデーの電磁誘導の法則から、次の①式のように表すことが出来ます。

\(e=vBL[V]\) …①

①式中の各変数の意味は、次の通りです。
・電機子導体の速度:\(v[m/s]\)
・界磁の磁束密度 :\(B[T]\)
・電機子導体の長さ:\(L[m]\)

誘導起電力について示せたので、次は各変数について求めていきます。

 

(2)電機子導体の速度の導出

回転子の物理的な条件の整理
 回転子の直 径:\(D[m]\)
 回転子の長 さ:\(L[m]\)
 回転子の回転数:\(N[rpm]\)
とします。

回転子の円周は\(πD[m]\)なので、長さ\(L[m]\)をかけると回転子の表面積が求められます。
・回転子の表面積:\(S=πDL[m^2]\) …②

回転子の円周上に電機子導体が巻かれているため、
電機子導体の速度=回転子の円周の回転速度 です。

回転子の円周の回転速度\(v[m/s]\)は、
円周の長さ\(πD[m]\)×回転数\(N[rpm]\)÷60[s]
 ➡ \(v=πD \frac{N}{60}[m/s]\)
と、求められます。

したがって、電機子導体の速度は、次の③式のように表せます。

・電機子導体の速度:\(v=πD \frac{N}{60}[m/s]\) …③

なお、何故60[s]で割るかと言いますと、回転数\(N[rpm]\)の単位である\([rpm]\)は、1分間の回転数(Rotation Per Minute)です。
そして、電機子導体の速度\(v[m/s]\)は、1秒当たりの速度を求めなければならないので、60で割ることが必要となります。

この回転数[rpm]を60で割るという操作は、直流機、誘導機、同期機全てにおいて、必須な操作なので忘れないようにしましょう。

 

(3)磁極数・磁束密度の導出

回転子の表面積は、②式から\(S=πDL[m^2]\) なので、
回転子の表面に供給される磁束密度\(B[Wb/m^2]\)は、次式のように表せます。
\(\displaystyle B=\frac{\Phi}{S}=\frac{\Phi}{πDL}[Wb/m^2]\)

次に、左図において、N極から出た磁束は、回転子の表面を2回貫通してからS極に入っていることに注目します。

・界磁の磁極数:\(p\)[個]
・界磁の磁束:\(\Phi [Wb]\)
とすると、磁極数\(p\)が2のときは2回、4のときは4回貫通します。

すなわち、磁極数の磁束が、電機子導体の回転運動の軌跡である回転子の表面積に対して、極数の数だけ貫通します。
貫通する回数が多い方が磁束密度も増加するので、磁束密度の式に磁極数pをかけます。
したがって、界磁の最終的な磁束密度\(B[Wb/m^2]\)は、次の④式に変化します。

\(\displaystyle B=\frac{\Phi}{S}×p=\frac{p\Phi}{πDL}[Wb/m^2]\) …④

 

(4)全体の出力電圧\(E\)と1導体当たりの誘導起電力\(e\)の関係式の導出

電機子導体数についての整理
電機子導体数について次のように定めます
総導体数 :\(Z\)[個]
並列回路数:\(a\)[個]

としたとき、
並列1回路中に直列接続された導体数:\(\frac{Z}{a}\)[個]
で表されます。

電機子導体は回転子に巻かれた電機子巻線のコイルの1辺の導体なので、電機子導体の長さは\(L[m]\)です。(回転子の長さと同じ)

発電機として動かしたとき、1導体当たりの誘導起電力を\(e[V]\) とします。
このとき、電機子巻線回路の図から、\(e[V]\)の誘導起電力が\(\frac{Z}{a}\)[個]直列接続されているので、電機子巻線回路の、整流子・ブラシに発生する全体の出力電圧\(E[V]\)は、次の⑤式のように表せます。

\(\displaystyle E=\frac{Z}{a}・e\) …⑤

 

(5)まとめ

1導体当たりの誘導起電力\(e[V]\)の整理
①式 \(e=vBL[V]\) に、③式\(v=πD \frac{N}{60}[m/s]\)、④式\(B=\frac{p\Phi}{πDL}[Wb/m^2]\)を代入すると、1導体当たりの誘導起電力\(e[V]\)が次のように求まります。

\(\displaystyle e=vBL[V]=πD \frac{N}{60}・\frac{p\Phi}{πDL}・L=\frac{p}{60}・\Phi・N\)
\(\displaystyle e=\frac{p}{60}・\Phi・N\) …⑥

 

出力電圧\(E[V]\)の導出
⑤式\(E=\frac{Z}{a}・e\)に、⑥式を代入すると、出力電圧\(E[V]\)が次のように求まります。

\(\displaystyle E=\frac{Z}{a}・\frac{p}{60}・\Phi・N=\frac{pZ}{60a}・\Phi・N[V]\)
\(\displaystyle E=\frac{pZ}{60a}・\Phi・N[V]\) …⑦

これで、重要公式の項目で記載した⑦式が導出できました。

磁極数\(p\)、総導体数\(Z\)、並列回路数\(a\)は、直流機が製作された後は運転状況によらず常に一定な値である機械的な要素です。
したがって、これらをまとめて比例定数\(K\)とします。(\(K=\frac{pZ}{60a}\))

このとき、⑦式は次のようにまとめられます。
\(E=K・\Phi・N[V]\) …⑧

この式より、直流機の電圧E[V]は、回転数N[rpm]と磁束Φ[Wb]に比例することがわかります。
直流機の運転に関する問題で確実に使用する最も重要な式です。

  

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