直流機の等価回路

直流機の等価回路 機械

概要

直流機内の回路は、電機子巻線で構成される主回路と、界磁巻線で構成される励磁回路の2つの回路で成り立っています。

この回路の動作と特性を求めるためには、直流機の構造から等価回路を描き、回路の式を導出する必要があります。本ページでは、その一連の流れを解説していきます。

なお、電動機、発電機のどちらで使用するかによって、電機子電流の向きが逆になります。
そのため、式がわずかに異なるので、電動機、発電機を別々に紹介していきます。

直流機の結線の仕方によって、いくつか種類がありますが、本ページでは、他励型の直流機を例として説明していきます。
他の型については、別ページで解説します。

 

 

まとめ

電動機の関係式
主回路の電圧の式  :\(V=E+I_aR_a\)
電動機の機械的な出力:\(P_m=EI_a\)
電機子抵抗の負荷損 :\(P_c=I^2_aR_a\)
直流機の入力電力  :\(P_{in}=VI_a=P_m+P_c\)

発電機の関係式
主回路の電圧の式  :\(V=E-I_aR_a\)
電動機の機械的な入力:\(P_m=EI_a\)
電機子抵抗の負荷損 :\(P_c=I^2_aR_a\)
負荷へ供給できる電力:\(P_{out}=VI_a=P_m-P_c\)

 

 

電動機の構造と等価回路

励磁回路の電源と主回路電源を分けた他励型直流電動機の構造図です。

上の構造図を回路図にすると、このようになります。

電機子を電動機として動かすので、シンボルはMotorの\(M\)としています。
電源から供給されるエネルギーから、回転軸の機械出力として仕事をします。

仕事をするまでに様々な損失があります。
その中でも最も大きな損失として、界磁巻線に流れる励磁電流、電機子に流れる電機子電流と、巻線の抵抗成分によって熱損失が発生します。

この熱損失は、負荷電流の二乗に応じて大きくなるので、負荷損と呼びます。
巻線の素材が銅であることが一般的なため、銅損と呼ぶ事もあります。

抵抗成分を回路図として表すと、このようになります。

 

電動機の関係式

主回路の電圧の関係式
電動機として使用する場合は、主回路の端子間に接続した電源電圧\(V[V]\)から、\(R_a\)による電圧降下\(I_aR_a\)をしたあと、逆起電力\(E[V]\)を通りますので、次の電圧の関係式が成り立ちます。
\(V=E+I_aR_a\)
➡ \(V=K \Phi N + I_aR_a\)
 

主回路の出力と損失の関係式
電動機の機械的な出力を\(P_m[W]\)とすると、直流機の逆起電力\(E\)×電機子電流\(I_a\)で表されるので、
\(P_m=EI_a\)

電機子抵抗の負荷損を\(P_c[W]\)とすると、電機子巻線抵抗\(R_a\)で消費する電力なので、
\(P_c=I^2_aR_a\)

主回路全体の消費電力\(P_{in}\)は、主回路電源\(V[V]\)から入力される電力なので、
\(P_{in}=VI_a\)

入力された電力\(P_{in}\)は、機械出力\(P_m\)と、損失\(P_c\)に変換されるので、
\(P_{in}=P_m+P_c\)
と表すことが出来ます。
 

 

 

発電機の構造と等価回路

下図(左側)は励磁回路の電源と主回路電源を分けた他励型直流発電機の構造図です。

上の構造図を回路図にすると、このようになります。

電機子を発電機として動かすので、シンボルはGeneratorの\(G\)としています。
回転軸を回転させる機械入力をすることで、電機子が発電をします。

発電機として使用する場合も、界磁巻線に流れる励磁電流、電機子に流れる電機子電流と、巻線の抵抗成分によって熱損失が発生します。(負荷損)

抵抗成分を回路図として表すと、このようになります。

 

発電機の関係式

主回路の電圧の関係式
発電機として使用する場合は、発電機の逆起電力\(E[V]\)から、\(R_a\)による電圧降下\(I_aR_a\)をしたあと、端子間電圧\(V[V]\)となる負荷に電流が流れ込みますので、次の電圧の関係式が成り立ちます。
\(E=V+I_aR_a\)
⇔ \(V=E-I_aR_a\)
 

主回路の出力と損失の関係式
電動機として使用する場合と、電機子電流\(I_a[A]\)の向きが逆になるので、その点に注意しながら立式する必要があります。

電動機の機械的な入力を\(P_m[W]\)とすると、直流機の逆起電力\(E[V]\)×電機子電流\(I_a[A]\)が出力されるので、
\(P_m=EI_a\)

電機子抵抗の負荷損を\(P_c[W]\)とすると、電機子巻線抵抗\(R_a[Ω]\)で消費する電力なので、
\(P_c=I^2_aR_a\)

負荷で消費される消費電力\(P\)は、端子間電圧\(V[V]\)で電機子電流\(I_a[A]\)が流れるので、
\(P=VI_a\)

負荷へ供給できる電力\(P_{out}\)は、機械入力\(P_m\)から、損失\(P_c\)を除いたエネルギーなので、
\(P_{out}=P_m-P_c\)
と表すことが出来ます。
 

 

回路要素の補足

直流機の逆起電力\(E[V]\)
励磁回路からは界磁磁束\(\Phi[Wb]\)が発生し、主回路に供給されます。
直流機が回転すると電機子導体1本1本に逆起電力\(e[V]\)が発生します。
電機子導体が直列接続されるので、逆起電力\(e[V]\)は、全体の逆起電力\(E[V]\)になります。
比例定数を\(K\)、直流機の回転数を\(N[min^{-1}]\)とすると、
逆起電力\(E\)は、\(E=K \Phi N\)で表すことが出来ます。

主回路の抵抗成分による電圧降下\(I_aR_a[V]\)
主回路に流れる電機子電流は、負荷に供給する電流なので、負荷電流\(I_a[A]\)と呼びます。
電機子巻線は抵抗\(R_a[Ω]\)を持っていて、その抵抗\(R_a\)によって電圧降下\(I_aR_a[V]\)が起こります。
一つの電機子巻線内に、逆起電力\(E[V]\)と、抵抗による電圧降下が\(I_aR_a[V]\)がおこるので、これらは直列接続されたものとして取り扱います。
 ※負荷とは、電気エネルギーを他のエネルギー(光、熱、運動等)に変換するものです。
 

励磁回路
界磁巻線の抵抗成分として、\(R_f\)を界磁巻線に直列に挿入します。
このとき、励磁回路に流れる励磁電流を\(I_f[A]\)とします。

 

 

関連記事

参考書

イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。

問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。

本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。

電験三種の領域をずっと超えた先の話を9割方しているので、電験三種の勉強の参考書としての購入はおすすめしません。

直流電動機について、ありとあらゆる事を書き記していった一冊です。
この本より詳しい本は少ないと思いますので、直流電動機の設計を学ぶ人に取っては良い本かと思われます。

感覚的には、研究論文化する内容ではないけど、後世には残しておきたいと思ったことをまとめたというような感じでしょうか。
文章の癖は強いので、もし買う場合はサンプルを読んでから購入することを推奨します。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました