概要
平衡なY結線とΔ結線の三相交流回路の計算問題です。
Δ-Y変換が不要な問題なので、3相交流の問題の中ではかなり簡単な部類です。
(a)問題は、インピーダンスの求め方と、相電圧・線間電圧の関係について理解していれば解答可能です。
(b)問題は、全ての消費電力が、抵抗で消費されることを理解していれば解答可能です。
また、3相交流であるため、1相分の計算後、消費電力を3倍する必要があることに注意しましょう。
キーワード
三相交流回路、インピーダンス、相電圧、線間電圧、有効電力
問題
図のように、抵抗6Ω と誘導性リアクタンス8Ω を Y結線し、抵抗r[Ω]を結線した平衡三相負荷に、200 V の対称三相交流電源を接続した回路がある。
抵抗6Ω と誘導性リアクタンス8Ω に流れる電流の大きさをI_1 [A]、抵抗r[Ω]に流れる電流の大きさをI_2 [A]とする。
電流I_1 [A]とI_2 [A]の大きさが等しいとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 抵抗r の値[Ω]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 6.0 (2) 10.0 (3) 11.5 (4) 17.3 (5) 19.2
(b) 図中の回路が消費する電力の値[kW] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 2.4 (2) 3.1 (3) 4.0 (4) 9.3 (5) 10.9
答え
(a)(4)
(b)(4)
解説テキスト リンク
回答解説
(a)の解答の流れ
①相電圧Eを求める
②Y結線負荷のインピーダンスの大きさZを求める
③Y結線負荷の相電流I_1を求める
④Δ結線負荷の線間電圧Vと相電流I_2から抵抗rを求める
①相電圧Eを求める
問題文から、線間電圧V=200Vです。
相電圧Eと線間電圧Vの関係は、E=\frac{V}{\sqrt{3}}であるため、
E=\frac{V}{\sqrt{3}}=\frac{200}{\sqrt{3}}=115.47V
②Y結線負荷のインピーダンスの大きさZを求める
Y結線負荷は、抵抗6Ω、インダクタンスj8Ωです。
三平方の定理から、インピーダンスの大きさZは、
Z=\sqrt{6^2+8^2}=10Ω
③Y結線負荷の相電流I_1を求める
オームの法則から、
I_1=\frac{E}{Z}=\frac{115.47}{10}≒11.55A
④Δ結線負荷の線間電圧Vと相電流I_2から抵抗rを求める
Δ結線の抵抗rには、線間電圧Vが印加され、相電流I_2が流れます。
線間電圧Vは、問題文からV=200Vです。
相電流I_2は、I_1と同じ大きさなので、I_2=11.55A
r=\frac{V}{I_2}=\frac{200}{11.55}≒17.3Ω
以上より、(a)問題の答えは(4)17.3 が答えです。
(b)の解答の流れ
①Y結線の消費電力P_Y[kW]を求める
②Δ結線の消費電力P_Δ[kW]を求める
③全消費電力P[kW]を求める
①Y結線の消費電力P_Y[kW]を求める
Y結線の負荷では、6Ωの抵抗で電力が消費されるので、1相分の消費電力P_{1Y}は、
P_{1Y}=I_1^2・6=11.55^2・6=800[W]
3相分の消費電力P_Yは、
P_Y=3・P_{1Y}=3・800=2400[W]=2.4[kW]
②Δ結線の消費電力P_Δ[kW]を求める
Δ結線の負荷では、(a)問題で求めたr=17.32[Ω]の抵抗で電力が消費されるので、1相分の消費電力P_{1Δ}は、
P_{1Δ}=I_2^2・r=11.55^2・17.32=2309[W]
3相分の消費電力P_Δは、
P_Δ=3・P_{1Δ}=3・2309=6927[W]≒6.9[kW]
③全消費電力P[kW]を求める
全消費電力は
P=P_Y+P_Δ=2.4+6.9=9.3[kW]
以上より、(b)問題の答えは(4)9.3kW が答えです。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論科目B問題問15
参考書
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