誘導電動機の動作原理

誘導電動機の動作原理 機械

動作原理の概要

固定子のコイルに流れた電流が磁界を作ります。
各相の位相が120°ずつずれている三相交流は、各相が作り出す磁界が上手く組み合わさることで、回転磁界を作り出します。

回転磁界は、電流の位相の変化に応じて磁界の向きが変わる磁界です。
磁界の向きが変わるということは、磁界が移動するということです。
この移動する磁界が、フレミング右手の法則に応じた向きに誘導起電力を発生します。

発生した誘導起電力によって渦電流が流れます。
渦電流とは、文字通り渦状に流れる電流です。

渦電流が流れることによって、フレミング左手の法則に応じた向きに電磁力が発生します。
この電磁力によって回転子が回転します。

以上の流れが、誘導電動機の回転子が回転する動作原理です。

本頁では、上記の動作原理について、
 ①固定子が回転磁界を発生する原理
 ②回転子に電磁力が発生する原理
に分解して、解説していきます。

 

固定子が回転磁界を発生する原理

左図は、三相誘導電動機の固定子と、コイルの位置を示したものです。
R相、S相、T相の各相のコイルが120°ずつずらして巻かれています。

 

下図は、電源電圧が正の電圧の時、× ➡ ◉の向きに電流が流れます。(矢印の方向に流れる)
電流は右ねじの法則に従って、磁界を発生させます。

負の電圧の時、◉ ➡ ×の向きに電流が流れます。(図の矢印の逆方向に流れる)
そのため、磁界の向きも逆方向になります。

R相が作る磁界

S相が作る磁界

T相が作る磁界

 


次は、R・S・T相の三相全てに電流が流れたとき、どのような合成磁界になるかを考えていきます。

 

固定子に三相電源を接続したときに流れる電流の一周期分をグラフにしたものです。

このグラフの電流は、
R相➡T相➡S相➡R相の順番で、
120°ずつ位相がずれた電流が流れています。

グラフの①~⑥のポイント毎に、R・S・T相の各相の磁界の向きと、合成された磁界の向きを示していきます。

 

このようにして、あたかも固定子の外周沿いに磁石が回転しているかのように磁界の向きが変わる回転磁界が固定子の内部に発生します。
これが、固定子が回転磁界を発生する原理です。

 

回転子に電磁力が発生する原理

N極・S極の磁石は、固定子が作り出す回転磁界です。
回転磁界は、軸を中心に磁石が回転していることと同じです。左図の例では、時計周りに磁石が回転しています。
そのため、回転子が、回転磁界の向きと逆方向である反時計回りに速度\(v[m/s]\)で回転していることと見なすことが出来ます。

磁束密度 \(B[T]\) の向きと、導体の移動 \(v[m/s]\) の向きがわかったので、フレミング右手の法則に従って、\(e=vBL[V]\) の誘導起電力が発生します。

回転子の導体棒に発生した誘導起電力\(e[V]\)によって同じ向きに電流\(I[A]\)が流れます。
電流\(I[A]\)は、短絡環を通してループが構成されます。

 

電流\(I[A]\)と、磁束密度\(B[T]\)から、
フレミング左手の法則に従って、
電磁力\(F[N]\)が発生します。

発生する電磁力は、
\(F=IBL\)の大きさです。
(\(L\)は導体の長さ)

電磁力\(F[N]\)が発生することで、回転軸を中心に回転子が回り始めます。

回転子が回っても、起電力を発生する導体と磁界の位置関係は常に変わらないので、常に同じ方向に力が発生し続けます。
そのため、直流機と異なり、電流の向きを切り替える整流子が必要ありません。

 

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