【電験三種:機械】令和1年度 問2

電験三種令和1年度 機械 問2 令和1年度

概要

直流機の電機子反作用に関する論説問題です。
基礎的な内容なので、確実に回答できるようになりましょう。

キーワード
直流機、電機子反作用、進角調整、補償巻線、補極

 

問題

直流機の電機子反作用に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)

直流発電機や直流電動機では、電機子巻線に電流を流すと、電機子電流によって電機子周辺に磁束が生じ、電機子電圧を誘導する磁束すなわち励磁磁束が、電機子電流の影響で変化する。これを電機子反作用という。

(2)

界磁電流による磁束のベクトルに対し、電機子電流による電機子反作用磁束のベクトルは、同じ向きとなるため、電動機として運転した場合に増磁作用、発電機として運転した場合に減磁作用となる。

(3)

直流機の界磁磁極片に補償巻線を設け、そこに電機子電流を流すことにより、電機子反作用を緩和できる。

(4)

直流機の界磁磁極のN極とS極の間に補極を設け、そこに設けたコイルに電機子電流を流すことにより、電機子反作用を緩和できる。

(5)

ブラシの位置を適切に移動させることで、電機子反作用を緩和できる。

 

答え

(2)

 

解説テキスト リンク

 

回答解説

(1)

直流発電機や直流電動機では、電機子巻線に電流を流すと、電機子電流によって電機子周辺に磁束が生じ、電機子電圧を誘導する磁束すなわち励磁磁束が、電機子電流の影響で変化する。これを電機子反作用という。

図1

図2

図3

上図1~3は、電機子反作用を説明する図です。

図1
電機子に電流が流れていないとき、N極の磁極から出てきた界磁磁束は真っすぐにS極の磁極に入ります。この時、界磁磁束と直角になる軸である電気的中性軸は、幾何学的な中性軸と同じです。

図2
電機子に電流が流れると、電機子の周囲に磁束が発生します。

図3
電機子全体の合成磁束を線で描くと、図3のようになります。
このように磁束分布が変化する現象を、電機子反作用と呼びます。

電機子反作用によって、電気的中性軸が、幾何学的中性軸に対して傾きます。
電気的中性軸がずれると、電機子巻線で発生した起電力をブラシで短絡することになるので、短絡電流が流れてブラシから火花が出て整流子を焼損することもあります。
したがって、直流機を運転する上で望ましくない現象であるため、その対策を施し、受ける影響を小さく必要があります。

 


(2)

界磁電流による磁束のベクトルに対し、電機子電流による電機子反作用磁束のベクトルは、同じ向きとなるため、電動機として運転した場合に増磁作用、発電機として運転した場合に減磁作用となる。

電機子電流による電機子反作用磁束のベクトルは、磁束を強め合う部分と弱めあう部分が出来ます。そのことにより、電機子反作用を受けた磁束分布は、選択肢(1)の回答の図3に示したような磁界分布となります。

電動機として運転すると増磁作用、発電機として運転すると減磁作用という記載は間違いです。

 


(3)

直流機の界磁磁極片に補償巻線を設け、そこに電機子電流を流すことにより、電機子反作用を緩和できる。

補償巻線とは、界磁磁束を作るための磁極表面に、界磁巻線とは別のスロットを設けて配置した巻線です。

補償巻線は、電機子反作用の原因である電機子電流の磁束に対して、打ち消す方向に磁束を発生させます。

補償巻線と、電機子巻線を直列に接続することで、補償巻線は電機子電流の大きさに比例した磁束を発生することが出来ます。
その結果、負荷変動に対応することが可能になります。

補償巻線は、主磁極に巻線を埋め込むため、構造が複雑になります。
そのため、大型機でないと採用が出来ない対策方法です。

 


(4)

直流機の界磁磁極のN極とS極の間に補極を設け、そこに設けたコイルに電機子電流を流すことにより、電機子反作用を緩和できる。

幾何学的中性点上に、補極と呼ばれる磁極を設置する方法です。

補極は、電機子反作用の原因である電機子電流の磁束に対して、打ち消す方向に磁束を発生させます。

補極の巻線と、電機子巻線を直列に接続することで、補極は電機子電流の大きさに比例した磁束を発生することが出来ます。
その結果、負荷変動に対応することが可能になります。

簡単な構造で対策できるため、電機子反作用の対策として小型機から大型機まで広く使われます。

 


(5)

ブラシの位置を適切に移動させることで、電機子反作用を緩和できる。

この選択肢は、進角調整の説明です。

進角調整とは、電機子反作用によってずれる電気的中性軸の位置を予め予測しておき、そこをブラシの接触点とすることで対策する方法です。
電気的中性軸は、電機子電流の大きさによって変化するので、負荷変動があるような直流機には対応できません。

 

以上より、(2)が誤った選択肢です。

 

出典元

一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和1年度 第三種電気主任技術者試験 機械科目問題問2

参考書

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