概要
直流電動機、交流電動機のどちらに置いても、電動機出力は共通して
\(P=ωT\)
で表されます。
この式は、電動機を扱う上で最も重要な式です。
本ページでは、この式が、どのように導出されるかを示していきます。
公式
\(P=Tω\)
出力\(P[W]\)、トルク\(T[N・m]\)、角速度\(ω[rad/s]\)
\(ω=2π\frac{N}{60}\)
角速度\(ω[rad/s]\)、1分当たりの回転数\(N[min^{-1}\)
角速度\(ω[rad/s]\)

点Oの周りを回転している点Pが、
\(Δt\)秒の間に、\(Δθ[rad]\)だけ回転したとします。
この間の角度の変化率を角速度と呼び、
\(ω=\frac{Δθ}{Δt}\)
で表されます。
つまり、角速度は1秒当たりに回転する角度のことです。
角速度の単位[rad/s]
角速度の単位は[rad/s]で表されます。
[rad]は、弧度法と呼ばれる角度の表し方です。
[rad]は、ラジアンと読み、1回転したときに\(2π[rad]\)です。
[°]で表す度数法は、1回転したときに\(360[°]\)です。
計算で使う事が多い角度を、弧度法と度数法で表すと、次の通りです。
\(2π[rad]=360[°]\)
\(π[rad]=180[°]\)
\(\frac{π}{2}[rad]=90[°]\)
\(\frac{π}{3}[rad]=60[°]\)
\(\frac{π}{4}[rad]=45[°]\)
\(\frac{π}{6}[rad]=30[°]\)
回転数Nと角速度ω
電動機・発電機では、回転数\(N[min^{-1}]\)で表される事が大半です。
\(N[min^{-1}]\)は、1分間でN回、回転したことを表しています。
角速度\(ω[rad/s]\)は、1秒間で回転する角度なので、
1秒間の回転数\(n[sec^{-1}]\)としたとき、
\(ω=2πn[rad/s]\) …①
と表せます。
回転数\(N[min^{-1}]\)を、1秒当たりの回転数\(n[sec^{-1}]\)に変換すると、
1分は60秒なので、
\(n=\frac{N}{60}\) …②
①式に②式を代入すると、
\(ω=2π\frac{N}{60}[rad/s]\) …③
この③式は、電動機・発電機の回転数を扱う上で、最も重要な式とも言えるほど重要なので、式を暗記するのではなく、何故、このように表現されるかを理解しましょう。
出力\(P_o[W]\)
出力\(P_o[W]\)は、電気エネルギーから変換された、軸が回転する機械エネルギーです。
仕事量の概念から\(P_o=Tω\)を導出していきます。
(1)仕事量の復習
まず、仕事量\(W\)は、物体に力の大きさ\(F[N]\)を与え、力の方向に動いた距離が\(d[m]\)のときに、
\(W=Fd[N・m]\) …①
で表されます。
1秒間の仕事量を仕事率\(P[W]\)と呼びます。
\(W\)の仕事をするのにかかった時間\(t[s]\)で割ると、仕事率\(P[W]\)になります。
速度\(v=\)距離\(d÷\)時間\(t\)から、
\(P=\frac{W}{t}=\frac{Fd}{t}=Fv\) …②
出力\(P_o[W]\)は、単位からもわかる通り、仕事率であるため、②式で表された通り、
\(P_o=Fv\) …③
です。
(2)トルク\(T[N・m]\)

トルク\(T\)とは力のモーメントと呼ばれる、物体を回転させる力の働きを表す量のことです。
回転軸の中心点Oから、半径\(r[m]\)の円周に力\(F[N]\)が働くと、
\(T=Fr[N・m]\) …④
の回転させる力が働きます。
(3)回転体の移動距離\(d[m]\)
半径\(r[m]\)の回転体が一周したときの移動距離\(d[m]\)は、
\(d=2πr[m]\)
回転体がn回転した場合の移動距離\(d[m]\)は、
\(d=2πrn[m]\)
\(t=1\)秒間に\(d[m]\)の移動をしていたとすると、速度\(v[m/s]\)は、次のように求まります。
\(v=\frac{d}{t}=2πnr[m/s]\) …⑤
角速度\(ω[rad/s]\)は、1秒あたりに進む角度なので、次式で表されます。
\(ω=2πn[rad/s]\) …⑥
⑥式を⑤式に代入すると、
\(v=2πnr=ωr\) …⑦
(4)仕事率にトルクと速度を代入
仕事率(③式)にトルク(④式)、速度(⑦式)を代入すると、
\(P_o=Fv=\frac{T}{r}・ωr=ωT\)
➡\(P_o=ωT\) …⑧
以上で、出力\(P_o[W]\)が、角速度\(ω[rad/s]\)とトルク\(T[N・m]\)で表されることが示せました。
電験の問題等では、回転数\(N[min^{-1}]\)が与えられることが多いです。
角速度の解説で示したとおり、
\(ω=2π\frac{N}{60}\) …⑨
を、出力の式(⑧式)に代入すると、
\(P_o=2π\frac{N}{60}T\) …⑩
と表すことが出来ます。
出力\(P_o\)と、回転数\(N\)の値が与えられていて、トルク\(T\)を求める場合は、⑩式を変形させて、
\(T=\frac{P_o}{2π\frac{N}{60}}\) …⑪
と表すことが出来ます。
⑧式は、覚えておく必要がある式です。
⑩式や、⑪式は⑧式から簡単に導き出せる式なので、使う頻度はありますが、覚える価値はありません。
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参考書
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