Y-Δ始動法
Y-Δ(スターデルタ)始動法は、構造が簡単で安価に実装できる上、始動電流を1/3倍にすることができます。そのため、誘導電動機の始動電流対策として広く使われます。
Y-Δ始動法の特徴
Y-Δの長所
- 始動電流が\(\frac{1}{3}\)倍になる。
そのため、全電圧始動では始動できない誘導電動機も始動ができる。 - 装置構成がシンプルで安価。
3つの電磁接触器(主接触器+Y用接触器+Δ用接触器)で実装できる。 - 保守が簡単
電子部品が少なく、簡単な電磁接触器+タイマーの組み合わせだけなので、リレーの動作状況を見て保守をすることがしやすい。
Y-Δの短所
- 始動トルクが\(\frac{1}{3}\)倍になる。
重負荷では始動できなかったり、加速が遅かったりする場合がある。 - Y ➡ Δ 切替え時に第2の突入電流がある。
切替の瞬間に、電源を入れた直後並みの電流が一瞬流れます。
Y-Δ始動の詳細
Y-Δ始動の動作概要
始動直後には、Y結線は、Δ結線に比べて電流値が1/3倍であるため、一次巻線をY結線で数秒間動かして加速させます。
十分加速して始動電流が落ち着くまで待った後、Δ結線に切り替えるだけです。
Δ結線に切り替える理由は、Y結線はトルクも1/3倍であるため、規程のすべりまで加速させることが難しいためです。
Y-Δ始動回路
Y-Δ始動回路は、3つの電磁接触器(主接触器+Y用接触器+Δ用接触器)で実装できます。

①Y結線始動
主接触器と、Y用接触器をONすると、誘導電動機がY結線で始動します。
②Y ➡ Δ 切替
数秒間加速させたところで、Y ➡ Δ 切替をするため、Y用接触器をOFFします。
③Δ結線運転
Δ用接触器をONすることで、Δ結線による運転ができるようになります。
Y結線からΔ結線に切り替える瞬間は、電動機への動力供給が一瞬途絶え、Δ用接触器をONした瞬間に、一瞬ですが突入電流(大電流)が流れます。
突入電流の対策として、切り替え時に電源を電動機から完全に切り離さないクローズドY-Δという方式があります。
クローズドY-Δは、切替える瞬間にも電流を流していなければならないため、その電流を制御するための大容量抵抗器が必要となります。
大容量抵抗器は高価で発熱量も大きいです。また、制御回路も複雑になるため、コストパフォーマンスが悪く、あまり採用されません。
始動電流が1/3倍になる理由
三相交流電源から、三相誘導電動機に供給する電流は線電流です。
そのため、始動時のY結線の線電流\(I_{YL}[A]\)と、Δ結線の線電流\(I_{ΔL}[A]\)を比較すると、始動電流が1/3倍になる理由がわかります。

Y結線
線間電圧\(V[V]\)のとき、相電圧は\(\frac{V}{\sqrt{3}}\)なので、相電流\(I_{YP}[A]\)は、
\(I_{YP}=\frac{V}{\sqrt{3}Z}[A]\)
です。
Y結線の線電流\(I_{YL}[A]\)は、相電流と等しいので、
\(I_{YL}=I_{YP}=\frac{V}{\sqrt{3}Z}\) …①
と、求まります。

Δ結線の相電流\(I_{ΔP}[A]\)は、
\(I_{ΔP}=\frac{V}{Z}[A]\)
です。
Δ結線の線電流\(I_{ΔL}[A]\)は、相電流の\(\sqrt{3}\)倍の大きさなので、
\(I_{ΔL}=\sqrt{3}I_{ΔP}=\sqrt{3}\frac{V}{Z}\) …②
と、求まります。
①÷②の計算をすると、
\(\displaystyle \frac{I_{YL}}{I_{ΔL}}=\frac{\frac{V}{\sqrt{3}Z}}{\sqrt{3}\frac{V}{Z}}=\frac{1}{3}\)
となり、始動電流が1/3倍になることがわかりました。
始動トルクが1/3倍になる理由
まずは、Y結線のトルク\(T_Y[Nm]\)について求めます。
Y結線にして線間電圧\(V[V]\)を印加したときの相電圧は\(\frac{V}{\sqrt{3}}[V]\)です。
このときの負荷電流\(I_{YP}[A]\)は、
\(\displaystyle I_{YP}=\frac{\frac{V}{\sqrt{3}}}{\sqrt{(r_1+r’_2)^2+(x_1+x’_2)^2}}\) …①
となります。
Y結線の機械的出力\(P_Y[W]\)は、\(\displaystyle P_Y=3I^2_{YP}\frac{r’_2}{s}[W]\) です。
Y結線のトルク\(T_Y[Nm]\)は、\(\displaystyle T_Y=\frac{P_Y}{ω}[Nm]\) です。
次に、Δ結線のトルク\(T_Δ[Nm]\)について求めます。
Δ結線にして線間電圧\(V[V]\)を印加したときの相電圧は\(V[V]\)です。
このときの負荷電流\(I_{ΔP}[A]\)は、
\(\displaystyle I_{ΔP}=\frac{V}{\sqrt{(r_1+r’_2)^2+(x_1+x’_2)^2}}\) …②
となります。
①・②式から、
\(I_{ΔP}=\sqrt{3}I_{YP}\) …③
であることがわかります。
Δ結線の機械的出力\(P_Δ[W]\)は、
\(\displaystyle P_Δ=3I^2_{ΔP}\frac{r’_2}{s}\) …④
です。
④式に③式を代入すると、
\(\displaystyle P_Δ=3(\sqrt{3}I_{YP})^2 \frac{r’_2}{s}=3P_Y\)
したがって、Δ結線のトルク\(T_Δ[Nm]\)は、
\(\displaystyle T_Δ=\frac{P_Δ}{ω}=\frac{3P_Y}{ω}=3T_Y\)
です。
式を整理すると、
\(\displaystyle T_Y=\frac{1}{3}T_Δ\)
となるため、Y結線による始動トルク\(T_Y\)が\(T_Δ\)の1/3倍であることがわかりました。
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