【電験三種:機械】令和7年度上期 問1

電験三種令和7年度上期機械問1 令和7年度上期

概要

直流機の各巻線方式の特性について問う論説問題です。
各巻線方式の特性を理解していないと回答できないため、少々難しい問題でしょう。

キーワード
直流機、直巻電動機、分巻電動機、複巻電動機

 

問題

直流電動機に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)

直巻電動機は、負荷電流の増減によって回転速度が大きく変わる。
トルクは、回転速度が小さいときに大きくなるので、始動時のトルクが大きいという特徴があり、クレーン、巻上機などの電動機として適している。

(2)

分巻電動機の速度制御の方法の一つとして界磁制御法がある。
これは、界磁巻線に直列に接続した界磁抵抗器によって界磁電流を調整して界磁磁束の大きさを変え、速度を制御する方法である。

(3)

分巻電動機は、端子電圧を一定として機械的な負荷を増加したとき、電機子電流が増加し、回転速度は、わずかに減少するがほぼ一定である。
このため、定速度電動機と呼ばれる。

(4)

複巻電動機には、直巻界磁巻線及び分巻界磁巻線が施され、合成界磁磁束が直巻界磁磁束と分巻界磁磁束との和になっている構造の和動複巻電動機と、差になっている構造の差動複巻電動機とがある。

(5)

直巻電動機は、界磁電流が負荷電流(電動機に流れる電流)と同じである。
このため、未飽和領域では界磁磁束が負荷電流に比例し、トルクも負荷電流に比例する。

 

答え

(5)

 

解説テキスト リンク

 

回答解説

(1)

直巻電動機は、負荷電流の増減によって回転速度が大きく変わる。
トルクは、回転速度が小さいときに大きくなるので、始動時のトルクが大きいという特徴があり、クレーン、巻上機などの電動機として適している。

➡ 正しいです。


回転速度の式は次式で表されます。
\(\displaystyle N=\frac{V}{K k’I_a} -\frac{R_a+R_{af}}{K k’}\)

このことから、回転速度は負荷電流に対して反比例することがわかります。

負荷電流\(I_a\)-回転数\(N\)を
グラフ化すると、左図のようになり、負荷電流の増減による回転速度の変化が大きいことがわかります。

 

トルクの式は次式で表されます。
\(T=K_T k’ I^2_a\)
このことから、トルクは負荷電流に対して二次関数で増えていくことがわかります。

負荷電流\(I_a\)-トルク\(T\)を
グラフ化すると、左図のようになります。

回転速度が小さいときは、負荷電流が大きいので、始動時(N=0)は最も大きなトルクを出力できます。
そのため、始動時に大きなトルクが求められるクレーン、巻上機のような重機に適した特性を持っています。

 

(2)

分巻電動機の速度制御の方法の一つとして界磁制御法がある。
これは、界磁巻線に直列に接続した界磁抵抗器によって界磁電流を調整して界磁磁束の大きさを変え、速度を制御する方法である。

➡ 正しいです。


回転速度の式は次式で表されます。
\(\displaystyle N=\frac{V-I_aR_a}{K \Phi}\)

回転速度と反比例である界磁磁束\(\Phi\)を変化させることで、速度制御をすることができます。

 

左図のように、界磁巻線に直列に接続した界磁抵抗器\(R_f\)の抵抗値を変化させることで、界磁電流\(I_f\)を調整することができます。

そして、界磁電流\(I_f\)が変化することで、界磁磁束\(\Phi\)の大きさを変化させることが出来ます。

以上のことから、分巻直流電動機は、界磁抵抗器\(R_f\)によって速度を制御することが出来ます。

 

 

(3)

分巻電動機は、端子電圧を一定として機械的な負荷を増加したとき、電機子電流が増加し、回転速度は、わずかに減少するがほぼ一定である。
このため、定速度電動機と呼ばれる。

➡ 正しいです。


回転速度の式は次式で表されます。
\(\displaystyle N=\frac{V-I_aR_a}{K \Phi}\)

端子電圧\(V\)を一定として、機械的な負荷を増加すると、電機子電流\(I_a\)が増加します。
しかし、左図のグラフからわかるように、電機子電流\(I_a\)が大きくなっても回転速度はわずかにしか減少しません。

 

 

(4)

複巻電動機には、直巻界磁巻線及び分巻界磁巻線が施され、合成界磁磁束が直巻界磁磁束と分巻界磁磁束との和になっている構造の和動複巻電動機と、差になっている構造の差動複巻電動機とがある。

➡ 正しいです。


和動複巻(界磁磁界の向きが同じ)

差動複巻(界磁磁界の向きが逆)

上の図は、外分巻の複巻電動機です。
直巻界磁巻線\(R_{af}\)と、分巻界磁巻線\(R_f\)の磁束が同じ方向を向いているときが和動複巻電動機です。逆向きのときが差動複巻電動機です。

 

 

(5)

直巻電動機は、界磁電流が負荷電流(電動機に流れる電流)と同じである。
このため、未飽和領域では界磁磁束が負荷電流に比例し、トルクも負荷電流に比例する。

➡ 間違いです。


直巻電動機の回路図は、左図のように表せます。

このことから、界磁電流が負荷電流(電動機に流れる電流)と同じであるという記述の部分は正しいです。

 

トルクの式は次式で表されます。
\(T=K_T k’ I^2_a\)
このことから、トルクは負荷電流の二乗に比例することがわかります。

負荷電流\(I_a\)-トルク\(T\)を
グラフ化すると、左図のようになります。

 

 

以上より、(5)が答えです。

 

出典元

一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験 機械科目問題問1

参考書

イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。

問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。

本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。

電験三種の領域をずっと超えた先の話を9割方しているので、電験三種の勉強の参考書としての購入はおすすめしません。

直流電動機について、ありとあらゆる事を書き記していった一冊です。
この本より詳しい本は少ないと思いますので、直流電動機の設計を学ぶ人に取っては良い本かと思われます。

感覚的には、研究論文化する内容ではないけど、後世には残しておきたいと思ったことをまとめたというような感じでしょうか。
文章の癖は強いので、もし買う場合はサンプルを読んでから購入することを推奨します。

 

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