概要
令和5年度下期問9で出題された問題の再出題です。
この問題を過去問として解いて勉強していた場合を除き、捨て問として考えた方が良い程の難度です。
電圧・電流に高調波を含む交流回路の電力の計算です。
①電圧・電流に位相差がある場合の電力計算
②電圧・電流の周波数が異なる場合は平均電力0
この2点について知っておかないと回答が不可能なため、非常に難問です。
上記①②について理解するための前提知識として、三角関数と積分の取り扱いについてしっかり把握してないと理解できないことでしょう。
キーワード
高調波
問題
次式に示す電圧\(e [V]\)及び電流\(i [A]\)による電力の値\([kW]\)として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\(\displaystyle e=100sinωt+50sin \left( 3ωt-\frac{π}{6} \right) [V]\)
\(\displaystyle i=20sin \left( ωt-\frac{π}{6} \right) +10 \sqrt{3} sin \left(3ωt+\frac{π}{6} \right) [A] \)
(1) 0.95 (2) 1.08 (3) 1.16 (4) 1.29 (5) 1.34
答え
(2)
解説テキスト リンク
回答の解説
\(\displaystyle e=100sinωt+50sin \left( 3ωt- \frac{π}{6} \right) [V] \)
\(\displaystyle i=20sin \left(ωt-\frac{π}{6} \right) + 10\sqrt{3}sin \left( 3ωt+ \frac{π}{6} \right) [A] \)
問題の基本波\(ωt\)と、3次高調波\(3ωt\)の積からなる平均電力は、\(0[W]\)です。
そのため、瞬時電力\(p\)の式は下記のように簡略化できます。
なお、問題文の\(e\)、\(i\)の係数は瞬時値なので、\(\frac{1}{\sqrt{2}}\)倍を掛けて実効値に直してから立式します。
\(\displaystyle \begin{eqnarray}
p&=&ei \\
&=&\frac{100}{\sqrt{2}}sinωt・\frac{20}{\sqrt{2}}sin \left(ωt-\frac{π}{6} \right)+\frac{50}{\sqrt{2}}sin \left( 3ωt- \frac{π}{6} \right)・\frac{10}{\sqrt{2}}\sqrt{3}sin \left( 3ωt+ \frac{π}{6} \right) \\
&=&1000sinωt・sin \left(ωt-\frac{π}{6} \right)+250\sqrt{3}sin \left( 3ωt- \frac{π}{6} \right)・sin \left( 3ωt+ \frac{π}{6} \right)
\end{eqnarray}\)
次に、平均電力を求めると、
\(\displaystyle \begin{eqnarray}
P&=&1000cos \left( 0-(-\frac{π}{6})\right) +250\sqrt{3} cos \left( -\frac{π}{6}- \left( \frac{π}{6} \right) \right) \\
&=&1000cos \left( \frac{π}{6}\right) +250\sqrt{3} cos \left( -\frac{π}{3} \right) \\
&=&1000\frac{\sqrt{3}}{2}+250\frac{\sqrt{3}}{2} \\
&=&1083[W] = 1.08[kW]
\end{eqnarray}\)
以上より、1.08[kW]である(2)が回答となります。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問9
参考書
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問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
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ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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