概要
バイポーラトランジスタと電界効果トランジスタ(FET)に関する論説問題です。
動作原理について理解していないと回答できないため難しい問題です。
キーワード
バイポーラトランジスタ、FET
問題
バイポーラトランジスタと電界効果トランジスタ(FET)に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) バイポーラトランジスタは、消費電力がFET より大きい。
(2) バイポーラトランジスタは、静電気に対してFET より破壊されにくい。
(3) バイポーラトランジスタの入力インピーダンスは、FET のそれよりも低い。
(4) バイポーラトランジスタは電圧制御素子、FET は電流制御素子といわれる。
(5) バイポーラトランジスタのコレクタ電流は自由電子及び正孔の両方が関与し、FET のドレーン電流は自由電子又は正孔のどちらかが関与する。
答え
(4)
解説テキスト リンク
回答解説
(1) バイポーラトランジスタは、消費電力がFET より大きい。
バイポーラトランジスタは電流制御素子であり、ベースからエミッタに流れるベース電流\(I_B\)を増幅してコレクタ電流\(I_C\)を流します。そのため、消費電力が大きいです。
FETは、電圧制御素子であり、ゲートから電流は流れないので、消費電力が小さいです。
したがって、バイポーラトランジスタは、FETよりも消費電力が大きいので、(1)は正しいです。
(2) バイポーラトランジスタは、静電気に対してFET より破壊されにくい。
FETは、絶縁体であるゲート酸化膜に電荷を溜めることで、ドレイン電流を制御している構造です。ゲート酸化膜は絶縁破壊しやすいため、高電圧がかかる静電気に対して破壊されやすいです。
それに対し、バイポーラトランジスタは絶縁構造がないため、静電気に対して強いです。
したがって、(2)は正しいです。
(3) バイポーラトランジスタの入力インピーダンスは、FET のそれよりも低い。
バイポーラトランジスタは、ベース電流\(I_B\)を入力電流として流さなければならないため、入力インピーダンスは低いです。
それに対し、FETのゲート端子は、ゲート酸化膜が電流を通さないため、入力電流はほぼ0です。
そのため、入力インピーダンスは非常に大きくなります。
以上より、(3)は正しいです。
(4) バイポーラトランジスタは電圧制御素子、FET は電流制御素子といわれる。
バイポーラトランジスタは、ベースからエミッタに流れるベース電流\(I_B\)を増幅して、コレクタ電流\(I_C\)を制御します。そのため、電流入力 – 電流出力です。したがって、バイポーラトランジスタは電流制御素子です。
FETは、ゲートに印加された電圧によって、ドレイン電流を制御するので、電圧入力 – 電流出力です。したがって、FETは電圧制御素子です。
以上より、(4)は誤りです。
(5) バイポーラトランジスタのコレクタ電流は自由電子及び正孔の両方が関与し、FET のドレーン電流は自由電子又は正孔のどちらかが関与する。
バイポーラトランジスタ

P型半導体の層は薄い膜です。
ベースのP型半導体の正孔の濃度は、エミッタの\(N^+\)の電子濃度よりも薄いです。
そのため、ベース電流によってエミッタからベースに流れ込んだ電子のうち、正孔と結合しなかった電子が、コレクタまで達します。
これが、コレクタ電流\(I_C\)となります。
したがって、バイポーラトランジスタのコレクタ電流は、自由電子と正孔の両方が関与します。
PMOSFET

ソース-ドレイン間に電圧を印加することで、ソースからドレインに電流を流すことができます。
ドレイン-ソース間に電圧を印加することで、ソースからドレインに正孔が流れますので、電流は同じ向きの流れとなりソースからドレインに流れます。
したがって、PMOSFETのドレイン電流は、正孔のみが関与します。
NMOSFET

ドレイン-ソース間に電圧を印加することで、ソースからドレインに電子が流れますので、電流はその逆の流れとなりドレインからソースに流れます。
したがって、NMOSFETのドレイン電流は、電子のみが関与します。
以上より、(5)は正しいです。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問11
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。
コメント