概要
三相交流回路の、二電力計法の計算問題です。
しっかりと解答を出すには、ベクトル図を描けること、加法定理を扱える必要がありますので、難しい問題だったかと思われます。
キーワード
三相交流回路、二電力計法、ベクトル図、加法定理
問題
図のように、線間電圧200Vの対称三相交流電源から三相平衡負荷に供給する電力を二電力計法で測定する。
2台の電力計W_1及びW_2を正しく接続したところ、電力計W_2の指針が逆振れを起こした。電力計W_2の電圧端子の極性を反転して接続した後、2台の電力計の指示値は、電力計W_1が490W、電力計W_2が25Wであった。
このときの対称三相交流電源が三相平衡負荷に供給する電力の値[W]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、三相交流電源の相回転はa、b、cの順とし、電力計の電力損失は無視できるものとする。

(1) 25 (2) 258 (3) 465 (4) 490 (5) 515
答え
(3)
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回答解説
解答の流れ
①各電圧・電流のベクトル図を描く
②電力計W_1の計測電力を計算する
③電力計W_2の計測電力を計算する
④W_1+W_2から有効電力[W]を求める
①各電圧・電流のベクトル図を描く

左図は、各電圧・電流のベクトル図です。
相電圧\dot{V}_a、\dot{V}_b、\dot{V}_cは黒線で引きます。
\dot{V}_aを位相の基準としています。
三相交流電源の相回転はa、b、cとするため、時計回りに120°ずつ\dot{V}_b、\dot{V}_cを描きます。
線間電圧\dot{V}_{ac}、\dot{V}_{bc}、\dot{-V}_{bc}は緑線で引きます。
線電流\dot{I}_a、\dot{I}_b、\dot{I}_cは赤線で引きます。
問題の電力計W_1、W_2で計測に使用する線間電圧、線電流のみを取り出します。

電力計W_1は、\dot{V}_{ac}と、\dot{I}_aの掛け算で、電力W_1を計測します。
電力計W_2は、\dot{-V}_{cb}と、\dot{I}_bの掛け算で、電力W_2を計測します。
②電力計W_1の計測電力を計算する
\displaystyle \begin{eqnarray} W_1&=&\dot{V}_{ac}・\dot{I}_a \\ &=&V_{ac}I_a cos(30-θ) \\ &=&VI (cos30cosθ+sin30sinθ) \\ &=&VI (\frac{\sqrt{3}}{2}cosθ+\frac{1}{2}sinθ) \\ \end{eqnarray}
※対称三相交流電源からの電源供給であるため、
V_{ac}=V_{cb}=V、I_a=I_b=Iとしています
③電力計W_2の計測電力を計算する
\displaystyle \begin{eqnarray} W_2&=&\dot{-V}_{cb}・\dot{I}_b \\ &=&V_{cb}I_b cos(30+θ) \\ &=&VI (cos30cosθ-sin30sinθ) \\ &=&VI (\frac{\sqrt{3}}{2}cosθ-\frac{1}{2}sinθ) \\ \end{eqnarray}
④W_1+W_2から有効電力[W]を求める
W_1は、測定結果がW_1=490Wです。
W_2は、極性を反転して接続した結果の測定結果が25Wであるため、W_2=-25Wと考えられます。これを、式にまとめると、
W_1=VI (\frac{\sqrt{3}}{2}cosθ+\frac{1}{2}sinθ)=490
W_2=VI (\frac{\sqrt{3}}{2}cosθ-\frac{1}{2}sinθ)=-25
W_1+W_2=\sqrt{3}VIcosθ=490-25=465[W]
となります。
以上より、(3)465 が答えです。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問14
参考書
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