概要
シュミットトリガー回路の計算・論説問題です。
普通程度の難易度ですが、演算増幅器回路の解析方法についての理解が問われるため勉強をしておく必要があります。
シュミットトリガー回路は、ヒステリシス特性を持ったコンパレータの回路であるため、ヒステリシスコンパレータと呼ぶこともあります。
キーワード
シュミットトリガ―、演算増幅器、オペアンプ、ヒステリシスコンパレータ
問題
図1は、演算増幅器(オペアンプ)を用いたシュミットトリガ回路である。
この演算増幅器には \(+5V\) の単電源が供給されており、\(0 V\) から \(5 V\) までの範囲の電圧
を出力できるものとする。

・出力電圧\(v_{out}\) は \(0~5 V\) の間にあるため、演算増幅器の非反転入力の電圧\(v^+[V]\)は
\(\fbox{(ア)}\) の間にある。
・入力電圧\(v_{in}\) を\(0 V\) から徐々に増加させると、 \(v_{in}\) が \(\fbox{(イ)}V\) を上回った瞬間、\(v_{out}\) は\(5 V\) から\(0 V\) に変化する。
・入力電圧\(v_{in}\) を\(5 V\) から徐々に減少させると、 \(v_{in}\) が \(\fbox{(ウ)}V\) を下回った瞬間、\(v_{out}\) は\(0 V\) から\(5 V\) に変化する。
・入力\(v_{in}\) に対する出力\(v_{out}\) の変化を描くと、図2 のような \(\fbox{(エ)}\) を示す特性となる。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
---|---|---|---|---|
(1) | 1.25~3.75 | 3.75 | 1.25 | 位相遅れ |
(2) | 1.25~3.75 | 1.25 | 3.75 | ヒステリシス |
(3) | 2~3 | 2 | 3 | ヒステリシス |
(4) | 2~3 | 2.75 | 2.25 | 位相遅れ |
(5) | 2~3 | 3 | 2 | ヒステリシス |
答え
(5)
解説テキスト リンク
回答解説
解答の流れ
(1)\(v_{out}=5V\)のときの\(v^+[V]\)の電圧を求める
(2)\(v_{out}=0V\)のときの\(v^+[V]\)の電圧を求める
(3)動作条件を整理して選択肢に当てはめる
(1)\(v_{out}=5V\)のときの\(v^+[V]\)の電圧を求める

\(v_{out}=5V\)のとき、問題の回路の\(v^+\)に接続される部分のみを書き出すと、左図のようになります。
5Vに接続される2つの\(10kΩ\)の抵抗と\(20kΩ\)の抵抗は並列接続された抵抗としてまとめると、\(6.67kΩ\)となります。
分圧の法則から\(v^+\)を求めると、
\(\displaystyle v^+=\frac{10}{10+6.67}・5 ≒ 3V\)
したがって、\(v_{out}=5V\)のとき、\(v^+=3V\)です。
(2)\(v_{out}=0V\)のときの\(v^+[V]\)の電圧を求める

\(v_{out}=0V\)のとき、問題の回路の\(v^+\)に接続される部分のみを書き出すと、左図のようになります。
\(GND=0V\)に接続される2つの\(10kΩ\)の抵抗と\(20kΩ\)の抵抗は並列接続された抵抗としてまとめると、\(6.67kΩ\)となります。
分圧の法則から\(v^+\)を求めると、
\(\displaystyle v^+=\frac{6.67}{10+6.67}・5 ≒ 2V\)
したがって、\(v_{out}=0V\)のとき、\(v^+=2V\)です。
(3)動作条件を整理して選択肢に当てはめる
(1)・(2)の計算結果から、演算増幅器の非反転入力の電圧\(v [V]\)は\(\fbox{(ア)}=2~3V\)の間にあることがわかりました。
入力電圧\(v_{in}\)は、演算増幅器のマイナス端子に接続されているので、次の2つのことがわかります。
①\(v_{in}<v^+\)のとき、\(v_{out}\)は\(5V\)を出力します。
(1)の計算結果から\(v^+=3V\)ですので、\(v_{in}<3V\)の間は、\(v_{out}=5V\)です。
このことから、入力電圧\(v_{in}\) を\(0 V\) から徐々に増加させると、 \(v_{in}\) が \(\fbox{(イ)}=3V\) を上回った瞬間、\(v_{out}\) は\(5 V\) から\(0 V\) に変化します。
②\(v_{in}>v^+\)のとき、\(v_{out}\)は\(0V\)を出力します。
(2)の計算結果から\(v^+=2V\)ですので、\(v_{in}>2V\)の間は、\(v_{out}=0V\)です。
このことから、入力電圧\(v_{in}\) を\(5 V\) から徐々に減少させると、 \(v_{in}\) が \(\fbox{(ウ)}=2V\) を下回った瞬間、\(v_{out}\) は\(0 V\) から\(5 V\) に変化します。
図2のような特性を、\(\fbox{(エ)}=\) ヒステリシス特性と呼びます。
ヒステリシス特性について
ヒステリシス特性は履歴特性とも呼びます。現在の状態だけでなく、過去の状態変化にも依存して変化する特性を全般的にヒステリシスと呼びます。
本問の回路は、\(v_{out}\)が\(0V\)か、\(5V\)かという過去の状態によって、出力変化に至るまでの入力電圧が変化することからヒステリシス特性を持っています。
電磁石に交流電流を流した時にもヒステリシス特性があり、磁気ヒステリシスと呼びます。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問13
参考書
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問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
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ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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