概要
誘導電動機の回転子に関する論説問題です。
捻くれた選択肢はないですが、しっかりと学習していないと回答は難しい問題です。
キーワード
かご形誘導電動機、巻線形誘導電動機、比例推移、二重かご形、深溝かご形
問題
一定電圧、一定周波数の電源で運転される三相誘導電動機の特性に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)
かご形誘導電動機では、回転子の導体に用いる棒の材料を銅から銅合金に変更すれば、等価回路の二次抵抗の値が増大するので、定格負荷時の効率が低下する。
(2)
巻線形誘導電動機では、トルクの比例推移により、二次抵抗の値を大きくすると、最大トルク(停動トルク)を発生する滑りが小さくなり、始動特性が良くなる。
(3)
巻線形誘導電動機では、外部の可変抵抗器で二次抵抗値を変化させ、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することが出来る。
(4)
二重かご形誘導電動機では、始動時に回転子スロット入口に近い断面積が小さい高抵抗の導体に、定格負荷時には回転子内部の断面積が大きい低抵抗の導体に主要な二次電流を流し、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる。
(5)
深溝かご形誘導電動機では、幅が狭い平たい二次導体の表皮効果による抵抗値の変化を利用し、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる。
答え
(2)
解説テキスト リンク
回答解説
(1)かご形誘導電動機では、回転子の導体に用いる棒の材料を銅から銅合金に変更すれば、等価回路の二次抵抗の値が増大するので、定格負荷時の効率が低下する。 ➡ 正しい

左図は、かご形誘導電動機の回転子の分解図です。
導体棒に電流が流れることで電磁力が発生して電動機が回転します。
導体棒の抵抗値が二次抵抗値になります。
素材を銅から銅合金に変更すると、素材の抵抗値が大きくなるので、二次抵抗値が増大します。
二次抵抗値が増大すると、始動トルクが大きいというメリットはありますが、定格負荷時の効率は低下します。
以上より、(1)は正しいです。
(2)巻線形誘導電動機では、トルクの比例推移により、二次抵抗の値を大きくすると、最大トルク(停動トルク)を発生する滑りが小さくなり、始動特性が良くなる。 ➡ 間違い

二次抵抗の値を\(r’_2\)から、m倍の大きさにして\(mr’_2\)にしたとします。
そのとき、滑りートルク特性は左図の赤線から緑線のように変化します。
この図からわかることは、最大トルク(停動トルク)を発生する滑りが大きくなり、始動特性が良くなることです。
「滑りが小さくなり」の記述が間違っているため、(2)が間違いです。
(3)巻線形誘導電動機では、外部の可変抵抗器で二次抵抗値を変化させ、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することが出来る。 ➡ 正しい


巻線形誘導電動機は、ブラシ・スリップリングを通して外部抵抗に接続することができます。
この外部抵抗は二次巻線と接続されているため、二次抵抗として働きます。
外部の可変抵抗器の抵抗値を操作することで二次抵抗値を、巻線抵抗値の\(r’_2\)から、外部抵抗+巻線抵抗値の\(mr’_2\)に変化させることができます。(\(mr’_2 > r’_2\)です。)
始動時は大きな抵抗値\(mr’_2\)とすることで、大きな始動トルクを得られます。
そして、二次抵抗が大きくなることで、始動電流を小さくすることができます。
定格負荷運転になった時点で外部抵抗を短絡させ、二次抵抗を巻線自体が持つ抵抗値\(r’_2\)のみとすることで、高効率な運転ができます。
なお、定格運転時においても、外部抵抗値を操作することで滑りを操作することができるため速度制御が可能です。
以上より、(3)は正しいです。
(4)二重かご形誘導電動機では、始動時に回転子スロット入口に近い断面積が小さい高抵抗の導体に、定格負荷時には回転子内部の断面積が大きい低抵抗の導体に主要な二次電流を流し、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる。 ➡ 正しい

外側導体は、断面積が小さく高抵抗の導体です。
始動時は、滑り\(s=1\)であることから、二次周波数\(sf\)が高いため、漏れ磁束が多くなります。
そのことから、高抵抗の外側導体に主要な電流が流れるため、大きい始動トルクを得ることが出来ます。
内側導体は、固定子から遠く、漏れ磁束が大きいです。
そのため内側導体には電流が流れづらいため、内側導体の始動トルクは小さいです。

定格運転の回転数まで増加すると、漏れ磁束が小さくなります。
そのため、断面積が大きく低抵抗の内側導体に主要な二次電流が流れ始めます。
そのため、定格負荷時に高効率な運転をすることができます。
以上より、(4)は正しいです。
(5)深溝かご形誘導電動機では、幅が狭い平たい二次導体の表皮効果による抵抗値の変化を利用し、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる。 ➡ 正しい

始動時の二次周波数が高いときは、表皮効果によって、導体に流れる電流は外周近くに集中します。
そのため、実質的に導体の断面積が小さくなったことと同じ働きをするため、抵抗率が増加します。
その結果、普通かご形よりも優れた始動トルクを得られます。

回転数が上昇するに従って滑りが0に近づいていきます。
二次周波数\(f_2=sf\)は低くなり、電流が一様に導体全体に分布するようになるので、実質的に二次抵抗値が減少したことと同じです。
以上のことから、二次導体の表皮効果による抵抗値の変化によって、始動時は高抵抗値による大きな始動トルクが得られ、定格負荷時は低抵抗値となり高効率な運転ができます。
したがって、(5)は正しいです。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和3年度 第三種電気主任技術者試験 機械科目問題問3
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。






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