概要
直列接続されたコンデンサの電界の強さ\(E[kV/mm]\)を求める問題です。
求めるものが電圧ではなく、電界の強さであることに注意です。
キーワード
平行平板コンデンサ、コンデンサの直列接続、電界の強さ
問題
図のように、極板間距離\(d[mm]\)と比誘電率\(ε_r\)が異なる平行板コンデンサが接続されている。
極板の形状と大きさは全て同一であり、コンデンサの端効果、初期電荷及び漏れ電流は無視できるものとする。
印加電圧を\(10kV\)とするとき、図中の二つのコンデンサ内部の電界の強さ\(E_A\)及び\(E_B\)の値\([kV/mm]\)の組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\(E_A\) | \(E_B\) | |
(1) | 0.25 | 0.67 |
(2) | 0.25 | 1.5 |
(3) | 1.0 | 1.0 |
(4) | 4.0 | 0.67 |
(5) | 4.0 | 1.5 |
答え
(3)
要点整理
コンデンサの静電容量
コンデンサの静電容量\(C[F]\)の式は、誘電率\(ε[F/m]\)、極板面積\(S[m^2]\)、極板距離\(d[m]\)としたとき、
\(\displaystyle C=ε\frac{S}{d}\)
直列接続時のコンデンサの静電容量・分圧
静電容量\(C_1[F]\)・\(C_2[F]\)の2つのコンデンサを直列接続したときの合成の静電容量\(C[F]\)は、次式の通りです。
\(\displaystyle \frac{1}{C}=\frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}\)
静電容量\(C_1[F]\)・\(C_2[F]\)の2つのコンデンサを直列接続し、電圧\(V[V]\)の電圧を印加したとき、各コンデンサにかかる電圧\(V_1\)・\(V_2\)は、次式で表されます。
\(\displaystyle V_1=\frac{C_2}{C_1+C_2}V\) 、 \(\displaystyle V_2=\frac{C_1}{C_1+C_2}V\)
各コンデンサの電圧\(V_1[V]\)、\(V_2[V]\)の電圧を求め、分圧の式を証明します。
直列接続された二つのコンデンサの静電容量を\(C_1[F]\)、\(C_2[F]\)とし、電圧\(V[V]\)を印加したとき、各コンデンサの電圧を\(V_1[V]\)、\(V_2[V]\)とします。
\(C_1\)、\(C_2\)のコンデンサの合成容量\(C\)は、
\(\displaystyle \frac{1}{C}=\frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}\) ⇔ \(\displaystyle C=\frac{C_1C_2}{C_1+C_2}\) …①
電荷\(Q[C]\)の式に①式を代入して整理します。
\(\displaystyle Q=CV=\frac{C_1C_2}{C_1+C_2}V\) …②
各コンデンサにも同じく電荷\(Q[C]\)が蓄えられるので、
\(Q=C_1V_1=C_2V_2\) …③
③式から、各コンデンサの電圧\(V_1\)、\(V_2\)を求めると、次の通り求まります。
⇔\(\displaystyle V_1=\frac{Q}{C_1}=\frac{C_2}{C_1+C_2}V\)
⇔\(\displaystyle V_2=\frac{Q}{C_2}=\frac{C_1}{C_1+C_2}V\)
以上より、コンデンサの分圧の式が証明できました。
並列接続されたコンデンサの静電容量
静電容量\(C_1[F]\)・\(C_2[F]\)の2つのコンデンサを並列接続したときの合成の静電容量\(C[F]\)は、次式の通りです。
\(\displaystyle C=C_1+C_2\)
電圧V[V]と電界強度E[V/m]
コンデンサの印加電圧を\(V[V]\)のとき、極板間の電界の強さ\(E[V/m]\)、極板間距離\(d[m]\)とすると、次式で表されます。
\(V=Ed\)
回答解説
回答アプローチはいくつかありますが、2つの方法で回答します。
解答方法1
直列接続されたコンデンサの電荷\(Q[C]\)が、全て同じ電荷量であることを用いて回答する方法です。計算量が多くて泥臭い解き方ですが、手を動かしていれば解けます。
【手順】
1. 各コンデンサ容量の式\(\displaystyle C=ε_rε_0\frac{S}{d}[F]\)から、コンデンサ容量を求めます。
2. \(Q=CV\)の関係式から、各コンデンサの電圧\(V[V]\)を求めます。
3. 電圧と電界の関係式\(V=Ed\)を用いて電界強度\(E[V/m]\)を求めます。
\(E_A\)を求めます。
まず、一番左側の直列接続のコンデンサについて検討します。
便宜的に、\(C_{A1}\)、\(C_{A2}\)、\(C_{A3}\)とコンデンサ容量を割り当てます。
各コンデンサの静電容量は、次の通りになります。
\(C_{A1}=3ε_0\frac{S}{0.02}=150ε_0S\) …①
\(C_{A2}=3ε_0\frac{S}{0.03}=100ε_0S\) …②
\(C_{A3}=3ε_0\frac{S}{0.05}=60ε_0S\) …③
\(C_{A2}\)と\(C_{A3}\)の直列接続コンデンサの容量を\(C_{A23}\)とすると、次のように計算で求まります。(式中で②・③を代入します)
\(\displaystyle C_{A23}=\frac{C_{A2}C_{A3}}{C_{A2}+C_{A3}}=37.5ε_0S\) …④
コンデンサの分圧の式から
\(\displaystyle \begin{eqnarray}
V_{A1}&=&\frac{C_{A23}}{C_{A1}+C_{A23}}V=\frac{37.5ε_0S}{150ε_0S+37.5ε_0S}10kV=2kV
\end{eqnarray}\)
電圧と電界の関係式から、
\(\displaystyle E_A=\frac{V_{A1}}{d}=\frac{2kV}{2mm}=1kV/mm\)
以上より、\(E_A=1kV/mm\)と求まりました。
\(E_B\)を求めます。
各コンデンサの静電容量は、次の通りになります。
\(C_{B1}=2ε_0\frac{S}{0.04}=50ε_0S\) …①
\(C_{B2}=2ε_0\frac{S}{0.06}≒33.3ε_0S\) …②
コンデンサの分圧の式から
\(\displaystyle \begin{eqnarray}
V_{B1}&=&\frac{C_{B2}}{C_{B1}+C_{B2}}V=\frac{33.3ε_0S}{50ε_0S+33.3ε_0S}10kV≒4kV
\end{eqnarray}\)
電圧と電界の関係式から、
\(\displaystyle E_B=\frac{V_{B1}}{d}=\frac{4kV}{4mm}=1kV/mm\)
以上より、\(E_B=1kV/mm\)と求まりました。
以上より、(3)\(E_A=1kV/mm\)、\(E_B=1kV/mm\)が答えです。
解答方法2
同じ誘電率のコンデンサが直列接続されていることから、コンデンサの距離\(d[mm]\)が大きいコンデンサが接続されているものをみなすことができる事を用いた解き方です。
非常に簡潔な回答ができますが、少々テクニカルな解法です。
【手順】
1.直列接続されている各コンデンサの極板間距離\(d[mm]\)の総和を取ります。
2.電圧と電界の関係式\(V=Ed\)を用いて電界強度\(E[V/m]\)を求めます。
\(E_A\)を求めます。
1.一番左の列のコンデンサの極板間距離を足し合わせると、\(d=10mm\)となります。
2.足し合わせて1つの合成コンデンサとした極板間に\(V=10kV\)を印加すると、
\(\displaystyle E_A=\frac{V}{d}=\frac{10kV}{10mm}=1kV/mm\)
以上より、\(E_A=1kV/mm\)と求まります。
\(E_B\)を求めます。
1.真ん中の列のコンデンサの極板間距離を足し合わせると、\(d=10mm\)となります。
2.足し合わせて1つの合成コンデンサとした極板間に\(V=10kV\)を印加すると、
\(\displaystyle E_B=\frac{V}{d}=\frac{10kV}{10mm}=1kV/mm\)
以上より、\(E_B=1kV/mm\)と求まります。
以上より、(3)\(E_A=1kV/mm\)、\(E_B=1kV/mm\)が答えです。
出典元
令和元年度第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問2
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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