MCCBは、電源をON/OFFするブレーカーです。
MCCBに似た装置として、MCB、NFB、ELB、CP等あります。
これらの選定について、それぞれ書いていきます。
部品選定時の検討内容
- 漏電遮断の要否
- 極数
- 素子数
- 適用電圧
- AF(アンペアフレーム)
- AT(アンペアトリップ)
- 遮断容量
- その他仕様
漏電遮断の要否
漏電遮断をする必要がある場合は、ELBを使用します。
水回りで使用する装置は、特に漏電対策が必要です。
漏電が起こると、次の様な危険があります。
①電気が水を通って感電する。
②大きな地絡電流が流れることにより火災が起こる。
かなり危険なので、水回りの漏電対策は必須です。
極数(P)
極数は、ブレーカーに接続できる電線の本数。
1Pは1本。2Pは2本。3Pは3本。
素子数(E)
素子とは、過電流検出素子の数の事で、E = Elementです。
名前の通り、過電流検出素子が過電流を検出します。
過電流検出素子が入っていない箇所に過電流が流れても検出できないため、想定される故障(漏電・過負荷・短絡)が確実に検出できるように、過電流検出素子数を選定する必要があります。
極数(P)と素子数(E)の組合せ
3P3E | 赤・白・黒線のすべてに遮断する素子があります。 三相三線式の、200V動力回路に使用します。 |
3P2E | 赤・黒線に遮断する素子があります。 単相三線式の回路に使用します。 単相三線式の白線(中性線)に過電流が流れる場合は、赤・黒線のどちらかにも必ず過電流が起きています。そのため、過電流検出素子数は2つでよいです。 |
2P2E | ①単相三線式の回路のうち、200Vの回路に使用します。 200Vの回路は、+100Vと-100Vを使って200Vを作り出しています。 赤・黒線(+100V・-100V)の両方とも電圧相であることから、過電流検出されるほどの大電流が流れる地絡が起きたとき、どちらの相でも地絡を検出できないと配線の確実な保護が出来ません。 そのため、200V回路には2P1Eは使用できません。 ②三相三線から、二相を取り出して単相として扱う場合にも使用します。 |
2P1E | 単相三線式の回路のうち、100Vの回路に使用します。 100Vの白線(中性線)を必ずNのマークが刻印されている端子に接続します。 赤or黒線側はLに接続します。 このように接続する理由は、過電流検出素子はL側についており、N側にはついていません。 中性線は元々接地されていることから対地電圧は0Vであることから、中性線に地絡事故が発生しないためです。 なお、100Vの回路は、2P2Eを使用しても全く問題ありません。 2P1Eのメリットは、過電流検出素子が少ない分、安く入手できる点です。 |
1P1E | 単相三線式の回路のうち、100Vを取り出す回路に使用します。 100Vの赤or黒線側を接続します。白線(中性線)は、ブレーカーを通さずにそのまま負荷機器に接続します。 白線(中性線)は接地されていて対地電圧は0Vであることから、過電流や地絡事故が起きてもブレーカーをOFFして遮断する必要がないため、ブレーカーを通さなくても問題ありません。 1P1Eは、使い方に理解と注意が必要ですが、1Pだけの接続で良いため、2Pの半分近くのスペースで取り付けが出来るので、ブレーカーの密度を上げることができるメリットがあります。 |
2P1E選定時の注意の理由の図解
2P2Eの過電流検出(OK例)
短絡・過負荷による過電流は、過電流検出素子のどちらでも検出できます。
地絡による過電流は、それぞれの線に取り付けられている過電流検出素子で検出できます。
したがって、ブレーカーの規定する過電流を超えた際は、どの場合でも事故を遮断できます。
2P1Eの過電流検出(NG例)
短絡・過負荷による過電流は、過電流検出素子で検出できます。
地絡による過電流は、過電流検出素子が取り付けられている側の線での地絡事故は検出できます。
しかし、取り付けられていない側の線で地絡が起きた際は検出できません。(右上の図)
したがって、200V系統で2P1Eを使用することは適しません。
適用電圧
ブレーカーが使用可能な電圧です。
100V/200Vの物が多いですが、100V用の物もあります。
AF(アンペアフレーム)
AFは、最大定格電流です。
最大定格電流は、ブレーカーに流れても故障しない最大の電流値を表します。
AFが大きくなると、ブレーカーのサイズも大きくなるため、ブレーカーを納める盤設計にも大きくかかわってきます。そして、価格も高くなります。
動作電流の設定値であるATは、最大定格電流であるAFよりも必ず小さくなければなりません。
AT(アンペアトリップ)
ATは、ブレーカーが遮断動作(OFF)して、負荷電流を遮断する基準値を表します。
遮断操作をトリップと言うため、アンペアトリップと呼びます。
電技解釈第33条で、次の2つが定められています。
① 定格電流の1倍の電流で自動的に動作しないこと
② 定格電流の1.25倍、2倍の電流で動作する上限時間
ATの選定は、細かな決まり事はないですが、使用する負荷電流×1.25倍程度で選定します。
後で、装置を追加接続することが見込まれている場合や、負荷が電動機等の場合は、1.25倍より大きくすることもあります。
ATの設計が小さすぎると、すぐトリップしてしまう問題があります。
逆に、ATの設計が大きすぎると、配線を過負荷から適切に保護することができなくなってしまいます。
したがって、適したATに設計しなければなりません。
遮断容量
短絡遮断容量とは、ブレーカーが遮断できる最大電流です。
容量が小さいものは経済品。容量が大きいものは高性能品と大別されます。
短絡遮断容量はkA(キロアンペア)で表され、短絡事故時に流れる大電流を遮断するのに必要な性能です。十分な短絡遮断容量が無いと、短絡事故を切り離すことが出来ずに大事故につながります。
大容量の変圧器に直接接続されるような主幹ブレーカーは、大きな事故電流が流れるため、ある程度の短絡遮断容量が要求されます。
主幹ブレーカーの下にある子ブレーカーは、最悪の場合は主幹ブレーカーが遮断してくれるので、経済品で十分なことが多いです。
その他仕様
中性線欠相保護
正常時
中性線欠相時
単相三線式の回路では、中性線である白線が遮断してしまうと、中性線欠相状態となり、+100Vに接続された機器と、-100Vに接続された機器が直列接続されたようになり、過電圧もしくは不足電圧がかかるため、機器が故障するおそれがあります。
そのため、中性線欠相保護付きブレーカーでは、中性線が欠相した場合、それを検知して遮断することで、ブレーカーに繋がる負荷を保護する機能があります。
関連省令
・電気設備技術基準の解釈(経産省)
第5節 過電流、地絡及び異常電圧に対する保護対策
第33条 低圧電路に施設する過電流遮断器の性能等
・電気設備に関する技術基準を定める省令(経産省)
第十四条 過電流からの電線及び電気機械器具の保護対策
第十五条 地絡に対する保護対策
関連規格
- JIS C 8201-2-1 低圧開閉装置及び制御装置-第2-1部:回路遮断器
- JIS C 8201-2-2 低圧開閉装置及び制御装置-第2-2部:漏電遮断器
- JIS C 8211 住宅及び類似設備用配線用遮断器
- JIS C 8221 住宅及び類似設備用漏電遮断器-過電流保護装置なし
- JIS C 4610 機器保護用遮断器
関連ページ
参考書
電気設備の技術基準とその解釈について分かり易く解説されている一冊。
電気管理技術者必携は、電気管理の実務に役立つ本です。
実務を通してある程度知見を得ている人が、更に深く電気管理を学んで行くのに役立ちます。
端的に言うと、中級者向きです。
内線規程です。
電気設備に関する技術基準を定める省令や電気設備技術基準の解釈で不足する部分を具体的に補完する民間規格です。法的拘束力がある規格ではありませんが、設備設計、電気工事において、まず初めに参照するルールです。
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