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エミッタ接地回路の動作(バイアスとコレクタ電流)

エミッタ接地回路の動作 理論

概要

バイポーラトランジスタは、コレクタ(C)、ベース(B)、エミッタ(E)のいずれかを入出力共通として使うことで、様々な特性を得ることができます。

エミッタ接地回路は、エミッタを入出力共通(接地)した回路です。この回路は、大きな利得を得ることが出来ることから、増幅回路として最も使われています。

この回路では、トランジスタのベースが入力、コレクタが出力です。

MOSFETでは、ソース接地回路がエミッタ接地回路と同様の特性を得られます。

  

トランジスタ回路を読むときの基本事項

トランジスタ回路には、多くの電圧・電流を取り扱うため、大文字・小文字の違いと、添え字の意味が分からないと回路を読むことができません。

大文字・小文字の違い
・大文字の\(V\) : 直流電圧
・小文字の\(v\) : 交流電圧(信号)
・大文字の\(I\) : 直流電流
・小文字の\(i\) : 交流電流(信号)

添え字
・\(V_E\)はエミッタ電圧です。エミッタ接地の基準となる端子がエミッタです。
・\(V_B\)はベース電圧です。信号入力される端子がベースです。
・\(V_C\)はコレクタ電圧です。信号出力される端子がコレクタです。

・ベース – エミッタ間電圧は\(V_{BE}\)   \(V_{BE}=V_B-V_E\)です。
・コレクタ – エミッタ間電圧は\(V_{CE}\)  \(V_{CE}=V_C-V_E\)です。

 

エミッタ接地回路の(\(I_B-V_{BE}\))特性と(\(I_C-V_{CE}\))特性

直流解析(バイアス)

トランジスタの回路は、ベース端子に交流信号を単純に接続するだけでは欲しい出力信号を得ることはできません。その理由は、ベース-エミッタ間電圧\(V_{BE}\)に適切な電圧を印加しないと、ベース電流\(I_B\)が流れないためです。

直流電圧源をベース端子に接続して\(V_{BE}\)を印加することをバイアスと呼びます。
適切な直流電圧でバイアスすることでベース電流\(I_B\)が流れます。

ベース電流\(I_B\)がトランジスタに流れると、トランジスタの電流増幅率に応じて、コレクタ電流\(I_C\)が流れ始めます。

コレクタ電流\(I_C\)は、回路の電源\(V_{CC}\)から電流が供給されて流れます。
\(I_C\)の大きさに応じて負荷抵抗の電圧降下と、コレクターエミッタ間電圧\(V_{CE}\)のバランスが決まり、トランジスタの動作点が決まります。

(\(I_B-V_{BE}\))特性と(\(I_C-V_{CE}\))特性について、①~④の段階に分けて動作を図示して解析していきます。
①\(V_{in}\)をベース端子に接続したときの回路上の動作
②\(I_B-V_{BE}\)特性
③\(I_B\)が流れることによる回路上の出力動作
④\(I_C – V_{CE}\)特性と動作点

 

①\(V_{in}\)をベース端子に接続したときの回路上の動作

トランジスタのベース端子に、直流電圧\(V_{in}\)をつなげます。
このとき、ベース-エミッタ間電圧は、
\(V_{BE}=V_{in}-V_E\)
です。\(V_E=0[V]\)なので、
\(V_{BE}=V_{in}\)
となります。

\(V_{BE}\)が大きくなると、ベースからエミッタに向かって\(I_B\)が流れます。

 

②\(I_B-V_{BE}\)特性

左図は\(V_{BE}\)と、ベース電流\(I_B\)の関係を示す\(I_B – V_{BE}\)特性のグラフです。

トランジスタの種類にもよりますが、ベース-エミッタ間電圧\(V_{BE}\)が0.6V程度以上になると、ベース電流\(I_B\)が流れ始めます。

\(I_B\)が流れ始めると、わずかな\(V_{BE}\)の変化で大きく変動します。
これが、\(I_B – V_{BE}\)特性の特徴です。

 

③\(I_B\)が流れることによる回路上の出力動作

トランジスタのベース電流\(I_B\)が流れたことによって、電源電圧\(V_{CC}\)から負荷抵抗\(R_C\)にコレクタ電流\(I_C\)が流れます。
コレクタ電流\(I_C\)は、ベース電流\(I_B\)から電流増幅率\(β\)倍されて流れます。

 

④\(I_C – V_{CE}\)特性と動作点

コレクタ電流\(I_C\)と、直流電源\(V_{CC}\)、負荷抵抗\(R_C\)、コレクタ-エミッタ間電圧\(V_{CE}\)の関係は、次式となります。
\(V_{CC}=I_CR_C+V_{CE}\)
\(\displaystyle I_C=\frac{V_{CC}-V_{CE}}{R_C}\) …①

この①式は、負荷線を引くための式であり、トランジスタの動作点を求める上で重要な式です。

 

左図は、トランジスタの\(I_C – V_{CE}\)特性です。

トランジスタに流れるベース電流\(I_B\)の大きさによって、コレクタ電流\(I_C\)は変化するため、\(I_B\)の代表的な値に対して\(I_C – V_{CE}\)特性の線が引かれています。

 

\(I_C – V_{CE}\)特性のグラフに、①式を反映した線が、オレンジ色の斜線です。

\(I_C – V_{CE}\)特性の線と、①式との交点が、トランジスタが動作する動作点となり、\(I_C\)と\(V_{CE}\)が決まります。

以上が、直流バイアス電圧\(V_{in}\)が入力されてから、トランジスタのコレクタ電流\(I_C\)とコレクタ-エミッタ間電圧\(V_{CE}\)が決まるまでの流れです。

 

交流解析

直流解析(バイアス)の項目で、トランジスタの動作点が決まりましたので、入力信号\(v_{in}\)が追加で接続されたときの動作について①~④に分けて見ていきます。
①交流信号源\(v_{in}\)をベース端子に追加で接続したときの回路上の動作
②\(I_B-V_{BE}\)特性
③\(I_B\)が流れることによる回路上の出力動作
④\(I_C – V_{CE}\)特性と動作点

①交流信号源\(v_{in}\)をベース端子に追加で接続したときの回路上の動作

先ほどの直流解析の回路に、交流信号源\(v_{in}\)を追加します。
そのことにより、ベース電流は\(I_B+i_B\)に変化します。

 

②\(I_B-V_{BE}\)特性

トランジスタの\(I_B – V_{BE}\)特性のグラフは、入力信号\(V_{BE}\)が、
\(V_{BE}=V_{in}+v_{in}\)
となり、直流電源\(V_{in}\)を中心に交流信号\(v_{in}\)の分だけ変動します。

その結果、ベース電流も\(I_B+i_B\)となり、直流電流\(I_B\)を中心に交流電流\(i_B\)の分だけ変動します。

左図の例では、\(I_B=20μA\)を中心に、\(±10μA\)変動するものとします。

 

③\(I_B\)が流れることによる回路上の出力動作

トランジスタのベース電流\(I_B+i_B\)が変動することによって、電源電圧\(V_{CC}\)から負荷抵抗\(R_C\)に流れるコレクタ電流も\(I_C+i_C\)となり、直流電流\(I_C\)を中心に交流電流\(i_C\)の分だけ変動します。

 

④\(I_C – V_{CE}\)特性と動作点

\(I_C – V_{CE}\)特性のグラフと、
負荷線の式 \(I_C=\frac{V_{CC}-V_{CE}}{R_C}\)を反映した線の交点を、直流解析の時と同じく求めます。

ベース電流\(I_B+i_B\)が変動するため、コレクタ電流\(I_C+i_C\)も負荷線に沿って変動し、コレクタ-エミッタ間電圧\(V_{CE}\)も変動します。

 

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参考書

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本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。

 

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