ダイオードとは
ダイオードは、電気の流れを一方通行にする電子部品です。
電気の流れを一方通行にする作用を、整流作用と呼びます。
ダイオードを上手く組み合わせた回路に交流電源をつなげると、交流から直流を作り出すことができます。
ダイオードの構造と動作原理
アノード・カソード
アノード・カソードは、電流の流れる向きで区別され、アノードから、カソードに向かって電流が流れます。(A→K)
電圧の+/-では区別されません。
電圧の+/-で区別するときは、正極・負極で区別すると良いでしょう。
動作原理
順方向バイアス
電圧源\(V\)の
+側をアノードに、-側をカソードに接続して電圧を与えると、ダイオードに電流が流れます。
この状態が、順方向バイアスです。
順方向バイアスで順方向電流が流れる原理は次の通りです。
+側をアノードに、-側をカソードに接続すると、アノードからカソードに向かって電界が発生します。
P型半導体のキャリアは、正孔(+電荷)であるため、正孔にカソード側に向かう静電気力が発生します。
N型半導体のキャリアは、電子(-電荷)であるため、電子にアノード側に向かう静電気力が発生します。
正孔は、+電荷であることから正孔の移動した向きに電流が流れます。
電子は、-電荷であることから電子の移動した向きと逆に電流が流れます。
正孔(+)、電子(-)が静電気力によって動くことで、
アノードからカソードに向かって、順方向電流\(I_F\)が流れます。
以上が、順方向バイアスによって順方向電流が流れる原理です。
逆方向バイアス
電圧源\(V_R\)の
+側をカソードに、-側をアノードに接続して電圧を与えると、ダイオードには電流が流れません。
この状態が、逆方向バイアスです。
逆方向バイアスで電流が流れない原理は次の通りです。
+側をカソードに、-側をアノードに接続すると、カソードからアノードに向かって電界が発生します。
P型半導体のキャリアは、正孔(+電荷)であるため、正孔にアノードの電極に向かう静電気力が発生します。
N型半導体のキャリアは、電子(-電荷)であるため、電子にカソードの電極に向かう静電気力が発生します。
P半導体、N半導体の接合部分にあった正孔(+電荷)、電子(-電荷)がアノード、カソードの電極に移動してしまったことによって、接合部にはキャリアが不足します。
この、キャリアが不足する層を空乏層と呼びます。
以上が、逆方向バイアスによって電流が流れない原理です。
ダイオードの種類
PN接合型ダイオード
一般的にダイオードと呼ぶときは、PN接合型ダイオードを指します。
PN接合型ダイオードは、P型半導体とN型半導体を接合した半導体素子で、電流の流れを一方通行にします。(アノード⇒カソード)
電源回路で交流を直流に変換するなどの用途があります。
ショットキーバリア型ダイオード
ショットキーバリアダイオード(SBD)は、pn接合ではなく、バリアメタルと呼ばれる金属とn型半導体をショットキー接合することによって生じる、ショットキー障壁を利用するダイオードです。
順方向\(V_F\)接続
逆方向\(V_R\)接続
SBDシンボル
SBDは、PN接合型ダイオードと比較して次の長所・短所があります。
長所
・順方向電圧\(V_F\)が非常に小さい
・印加電圧を順方向から逆方向に変化させたときにOFFするまでの時間(逆回復時間)が短い
⇒これら二つの長所は、電源回路の高効率化、小型化に有効
短所
・逆方向電流\(I_R\)が大きい
・熱の影響を受けやすい
⇒熱設計や使用条件に注意を要する
定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)
通常のダイオードは、逆方向に電圧をかけてもほとんど電流は流れないことを利用して、整流や検波等に応用されます。
ツェナーダイオードの構造
ツェナーダイオードの記号
ツェナーダイオードは、他のダイオードと異なり、逆方向電圧\(V_R\)を使います。
逆方向電圧\(V_R\)がツェナー電圧\(V_z\)を超えると、急激にツェナー電流と呼ばれる逆方向電流が流れるようになります。
この現象を、ツェナー降伏と呼びます。
保護したい電圧を上回るESDやサージ等が回路の電源に入ってきて、回路に異常電圧がかかったとします。
このとき、ツェナーダイオードのツェナー電圧\(V_z\)を超える異常電圧がかかると、ツェナーダイオードに逆方向電流を流して逃がします。
そのため、保護したい回路にはツェナー電圧よりも大きな電圧がかかりません。
これが、ツェナーダイオードによる回路の保護です。
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参考書
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