概要
直流電流計を並列接続したときに測定できる電流範囲の計算問題です。
問題の中身は、抵抗を並列接続したときの電流を分流則から導くという内容です。
電流の範囲を気にする必要はあるものの、中身は基礎レベルの直流回路の解析なので確実に回答したい問題です。
キーワード
直流回路、分流則
問題
最大目盛 \(50 A\)、内部抵抗\(0.8×10^{-3}Ω\) の直流電流計 \(A_1\) と
最大目盛 \(100 A\)、内部抵抗\(0.32×10^{-3}Ω\) の直流電流計 \(A_2\) の
二つの直流電流計がある。
次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、二つの直流電流計は直読式指示電気計器であるとし、固有誤差はないものとする。
(a) 二つの直流電流計を並列に接続して使用したとき、測定できる電流の最大の値\([A]\)として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 40 (2) 50 (3) 100 (4) 132 (5) 140
(b) 小問(a)での接続を基にして、直流電流\(150 A\) の電流を測定するために、二つの直流電流計の指示を最大目盛にして測定したい。
そのためには、直流電流計 \(A_2\) に抵抗\(R[Ω]\)を直列に接続することで、各直流電流計の指示を最大目盛にして測定することができる。
抵抗\(R\) の値\([Ω]\)として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) \(3.2×10^{-5}\) (2) \(5.6×10^{-5}\) (3) \(8×10^{-5}\)
(4) \(11.2×10^{-5}\) (5) \(13.6×10^{-5}\)
答え
(a)(5)
(b)(3)
解説テキスト リンク
回答解説
(a)の解答の流れ
①電流計\(A_1\)に流れる電流\(I_1\)が上限の時の回路全体の電流\(I\)を求める
②電流計\(A_2\)に流れる電流\(I_2\)が上限の時の回路全体の電流\(I\)を求める
①電流計\(A_1\)に流れる電流\(I_1\)が上限の時の回路全体の電流\(I\)を求める

電流計\(A_1\)に流れる電流\(I_1\)は、回路全体に流れる電流を\(I\)としたとき、分流の法則から次のように表されます。
\(\displaystyle I_1=\frac{R_2}{R_1+R_2}I=\frac{0.32}{0.8+0.32}I=\frac{0.32}{1.12}I\)
\(I_1\)の最大目盛は50Aなので、\(I_1=50\)を代入すると
\(\displaystyle I=\frac{1.12}{0.32}・50=175A\)
電流計\(I_1\)が最大目盛を指し示すとき、回路全体には\(I=175A\)流れていることがわかりました。
このとき、電流計\(A_2\)に流れる電流\(I_2\)は、
\(\displaystyle I_2=\frac{R_1}{R_1+R_2}I=\frac{0.8}{0.8+0.32}・175=\frac{0.8}{1.12}・175=125A\)
最大目盛\(100A\)を超える電流が流れてしまうため、\(I=175A\)は不適切です。
②電流計\(A_2\)に流れる電流\(I_2\)が上限の時の回路全体の電流\(I\)を求める

電流計\(A_2\)に流れる電流\(I_2\)は、回路全体に流れる電流を\(I\)としたとき、分流の法則から次のように表されます。
\(\displaystyle I_2=\frac{R_1}{R_1+R_2}I=\frac{0.8}{0.8+0.32}I=\frac{0.8}{1.12}I\)
\(I_2\)の最大目盛は100Aなので、\(I_2=100\)を代入すると
\(\displaystyle I=\frac{1.12}{0.8}・100=140A\)
電流計\(I_2\)が最大目盛を指し示すとき、回路全体には\(I=140A\)流れていることがわかりました。
このとき、電流計\(A_1\)に流れる電流\(I_1\)は、
\(\displaystyle I_1=\frac{R_2}{R_1+R_2}I=\frac{0.32}{0.8+0.32}・140=\frac{0.32}{1.12}・140=40A\)
最大目盛\(50A\)以内の電流であるため、\(I=140A\)は適切です。
以上より、(a)問題の答えは(5)140 が答えです。
(b)の解答の流れ
①分流の法則から抵抗\(R\)を求める
①分流の法則から抵抗\(R\)を求める

問題文から、回路に流したい電流は\(I=150A\)です。
このとき、\(I_2=100A\)になるように抵抗\(R[Ω]\)を直列接続するので、\(A_2\)の合成抵抗は\(R_2+R[Ω]\)となります。
以上の条件から、分流の法則の式を立てると、
\(\displaystyle I_2=\frac{R_1}{R_1+(R_2+R)}I\)
⇔ \(\displaystyle 100=\frac{0.8}{0.8+(0.32+R)}・150=\frac{120}{1.12+R}\)
⇔ \(\displaystyle 1.12+R=1.20\)
⇔ \(\displaystyle R=0.08[mΩ]=8×10^{-5}[Ω]\)
以上より、(b)問題の答えは(3)\(8×10^{-5}[Ω]\) です。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論科目B問題問16
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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