概要
三相交流の負荷の結線にはΔ(デルタ)結線と、Y(スター)結線があります。
負荷電流や電力の解析をする際に、Δ結線だと解析しづらい場合、Y結線だと解析しづらい場合があります。
Δ結線とY結線は、それぞれ等価変換をすると解析しやすくなります。この等価変換の方法を次のように呼び分けることとします。
・Δ結線➔Y結線に変換するのを、Δ-Y変換
・Y結線➔Δ結線に変換するのを、Y-Δ変換
本ページでは、Y-Δ変換について解説します。
重要公式
Δ-Y変換
三相不平衡負荷の時(3相の負荷の大きさが異なるとき)

\(\displaystyle Z_1=\frac{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}{Z_c}[Ω]\)
\(\displaystyle Z_2=\frac{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}{Z_a}[Ω]\)
\(\displaystyle Z_3=\frac{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}{Z_b}[Ω]\)
三相平衡負荷の時(3相の負荷の大きさが同じとき)
\(Z_Δ=Z_1=Z_2=Z_3\)
\(\displaystyle Z_Y=Z_a=Z_b=Z_c\)
としたとき、この二つのインピーダンスの関係は、
\(Z_Δ=3Z_Y\)
証明
証明の流れ
01. Δ結線の端子B-C間を短絡し、短絡線の端子Dを置く。
02. Δ結線の端子A-D間の合成インピーダンス\(Z_{AD}\)を求める …(1)式
03. Δ結線の端子A-C間を短絡し、短絡線の端子Eを置く。
04. Δ結線の端子B-E間の合成インピーダンス\(Z_{BE}\)を求める …(2)式
05. Δ結線の端子A-B間を短絡し、短絡線の端子Fを置く。
06. Δ結線の端子C-F間の合成インピーダンス\(Z_{CF}\)を求める …(3)式
07. Y結線の端子B-C間を短絡し、短絡線の端子Dを置く。
08. Y結線の端子A-D間の合成インピーダンス\(Z_{AD}\)を求める …(4)式
09. Δ結線の端子A-C間を短絡し、短絡線の端子Eを置く。
10. Δ結線の端子B-E間の合成インピーダンス\(Z_{BE}\)を求める …(5)式
11. Δ結線の端子A-B間を短絡し、短絡線の端子Fを置く。
12. Δ結線の端子C-F間の合成インピーダンス\(Z_{CF}\)を求める …(6)式
13. (1)式=(4)式 …(7)式
14. (2)式=(5)式 …(8)式
15. (3)式=(6)式 …(9)式
16. (7)式+(8)式+(9)式を求める …(10)式
17. (10)式-(9)式 から、Δ結線のインピーダンス\(Z_1\)を求める
18. (10)式-(7)式 から、Δ結線のインピーダンス\(Z_2\)を求める
19. (10)式-(8)式 から、Δ結線のインピーダンス\(Z_3\)を求める
01. Δ結線の端子B-C間を短絡し、短絡線の端子Dを置く。
02. Δ結線の端子A-D間の合成インピーダンス\(Z_{AD}\)を求める …(1)式

図から、端子A-D間の合成インピーダンス\(Z_{AD}\)を求めます。
\(\displaystyle \frac{1}{Z_{AD}}=\frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_3}\) …(1)式
03. Δ結線の端子A-C間を短絡し、短絡線の端子Eを置く。
04. Δ結線の端子B-E間の合成インピーダンス\(Z_{BE}\)を求める …(2)式

図から、端子B-E間の合成インピーダンス\(Z_{BE}\)を求めます。
\(\displaystyle \frac{1}{Z_{BE}}=\frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_2}\) …(2)式
05. Δ結線の端子A-B間を短絡し、短絡線の端子Fを置く。
06. Δ結線の端子C-F間の合成インピーダンス\(Z_{CF}\)を求める …(3)式

図から、端子C-F間の合成インピーダンス\(Z_{CF}\)を求めます。
\(\displaystyle \frac{1}{Z_{CF}}=\frac{1}{Z_2}+\frac{1}{Z_3}\) …(3)式
07. Y結線の端子B-C間を短絡し、短絡線の端子Dを置く。
08. Y結線の端子A-D間の合成インピーダンス\(Z_{AD}\)を求める …(4)式

左図から、端子A-D間の合成インピーダンス\(Z_{AD}\)を求めます。
\(Z_{AD}=Z_a+Z_{bc}\)
⇔\(\displaystyle Z_{AD}=Z_a+\frac{1}{\frac{1}{Z_b}+\frac{1}{Z_c}}\)
⇔\(\displaystyle Z_{AD}=\frac{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}{Z_b+Z_c}\)
⇔\(\displaystyle \frac{1}{Z_{AD}}=\frac{Z_b+Z_c}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\) …(4)式
09. Δ結線の端子A-C間を短絡し、短絡線の端子Eを置く。
10. Δ結線の端子B-E間の合成インピーダンス\(Z_{BE}\)を求める …(5)式

左図から、端子B-E間の合成インピーダンス\(Z_{BE}\)を求めます。
\(Z_{BE}=Z_b+Z_{ca}\)
⇔\(\displaystyle Z_{BE}=Z_b+\frac{1}{\frac{1}{Z_c}+\frac{1}{Z_a}}\)
⇔\(\displaystyle Z_{BE}=\frac{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}{Z_c+Z_a}\)
⇔\(\displaystyle \frac{1}{Z_{BE}}=\frac{Z_c+Z_a}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\) …(5)式
11. Δ結線の端子A-B間を短絡し、短絡線の端子Fを置く。
12. Δ結線の端子C-F間の合成インピーダンス\(Z_{CF}\)を求める …(6)式

左図から、端子C-F間の合成インピーダンス\(Z_{CF}\)を求めます。
\(Z_{CF}=Z_c+Z_{ab}\)
⇔\(\displaystyle Z_{CF}=Z_c+\frac{1}{\frac{1}{Z_a}+\frac{1}{Z_b}}\)
⇔\(\displaystyle Z_{CF}=\frac{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}{Z_a+Z_b}\)
⇔\(\displaystyle \frac{1}{Z_{CF}}=\frac{Z_a+Z_b}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\) …(6)式
13. (1)式=(4)式 …(7)式
Δ結線の(1)式、Y結線の(4)式は共に\(\frac{1}{Z_{AD}}\)の式なので、(1)式=(4)式として式をつなげます。
\(\displaystyle \frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_3}=\frac{Z_b+Z_c}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\) …(7)式
14. (2)式=(5)式 …(8)式
Δ結線の(2)式、Y結線の(5)式は共に\(\frac{1}{Z_{BE}}\)の式なので、(2)式=(5)式として式をつなげます。
\(\displaystyle \frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_2}=\frac{Z_c+Z_a}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\) …(8)式
15. (3)式=(6)式 …(9)式
Δ結線の(3)式、Y結線の(6)式は共に\(\frac{1}{Z_{CF}}\)の式なので、(3)式=(6)式として式をつなげます。
\(\displaystyle \frac{1}{Z_2}+\frac{1}{Z_3}=\frac{Z_a+Z_b}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\) …(9)式
16. (7)式+(8)式+(9)式を求める …(10)式
(7)式+(8)式+(9)式を求めます。
\(\displaystyle 2 \left( \frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_2}+\frac{1}{Z_3} \right)=\frac{2(Z_a+Z_b+Z_c)}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\)
⇔ \(\displaystyle \frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_2}+\frac{1}{Z_3}=\frac{Z_a+Z_b+Z_c}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\) …(10)式
17. (10)式-(9)式 から、Δ結線のインピーダンス\(Z_1\)を求める
\(\displaystyle \frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_2}+\frac{1}{Z_3}-\left( \frac{1}{Z_2}+\frac{1}{Z_3} \right) =\frac{Z_a+Z_b+Z_c-(Z_a+Z_b)}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\)
⇔\(\displaystyle \frac{1}{Z_1}=\frac{Z_c}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\)
⇔\(\displaystyle Z_1=\frac{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}{Z_c}\)
18. (10)式-(7)式 から、Δ結線のインピーダンス\(Z_2\)を求める
\(\displaystyle \frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_2}+\frac{1}{Z_3}-\left( \frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_3} \right) =\frac{Z_a+Z_b+Z_c-(Z_b+Z_c)}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\)
⇔\(\displaystyle \frac{1}{Z_2}=\frac{Z_a}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\)
⇔\(\displaystyle Z_2=\frac{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}{Z_a}\)
19. (10)式-(8)式 から、Δ結線のインピーダンス\(Z_3\)を求める
\(\displaystyle \frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_2}+\frac{1}{Z_3}-\left( \frac{1}{Z_1}+\frac{1}{Z_2} \right) =\frac{Z_a+Z_b+Z_c-(Z_a+Z_c)}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\)
⇔\(\displaystyle \frac{1}{Z_3}=\frac{Z_b}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}\)
⇔\(\displaystyle Z_3=\frac{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}{Z_b}\)
以上より、Y結線のインピーダンス\(Z_a,Z_b,Z_c\)と、Δ結線のインピーダンス\(Z_1,Z_2,Z_3\)の関係を示すことが出来ました。
Y-Δ変換の簡易導出(三相平衡負荷の場合)
重要公式の項目で、三相平衡負荷の場合、
\(Z_Δ=Z_1=Z_2=Z_3\)
\(\displaystyle Z_Y=Z_a=Z_b=Z_c\)
として、この二つのインピーダンスの関係は、\(Z_Δ=3Z_Y\)と示しました。
\(Z_Y\)が\(Z_Δ\)の3倍の大きさか、\(Z_Δ\)が\(Z_Y\)の3倍の大きさか、どちらが正しいかをふと忘れる瞬間があります。
そんなふとした瞬間に、\(Z_Y\)と\(Z_Δ\)の関係性を簡単に導き出せる方法を示します。
Δ-Y変換の関係式導出手順
①Δ結線の端子A-B間の合成抵抗\(Z_{AB}\)を求める …(1)式
②Y結線の端子A-B間の合成抵抗\(Z_{AB}\)を求める …(2)式
③(1)式=(2)式 から、\(Z_Δ=3Z_Y\)を導出する
①Δ結線の端子A-B間の合成抵抗\(Z_{AB}\)を求める …(1)式

左図から、Δ結線の端子A-B間からみた合成インピーダンス\(Z_{AB}\)は、
\(\displaystyle \frac{1}{Z_{AB}}=\frac{1}{Z_Δ}+\frac{1}{2Z_Δ}\)
整理すると、
\(\displaystyle Z_{AB}=\frac{2}{3}Z_Δ\) …(1)式
②Y結線の端子A-B間の合成抵抗\(Z_{AB}\)を求める …(2)式

左図から、Y結線の端子A-B間からみた合成インピーダンス\(Z_{AB}\)は、
\(Z_{AB}=2Z_Y\) …(2)式
③(1)式=(2)式 から、\(Z_Δ=3Z_Y\)を導出する
(1)式=(2)式
\(\displaystyle \frac{2}{3}Z_Δ=2Z_Y\)
⇔\(\displaystyle Z_Δ=3Z_Y\)
以上より、\(Z_Δ\)と\(Z_Y\)の関係を求めることが出来ました。
コンデンサのY-Δ変換
コンデンサの静電容量\(C[F]\)と、インピーダンス\(Z[Ω]\)の関係は、
\(\displaystyle Z=\frac{1}{jωC}\)
です。
このことから、3相のコンデンサの容量\(C[F]\)が同じとして、Δ結線の静電容量\(C_Δ[F]\)、Y結線の静電容量\(C_Y[F]\)とすると、\(Z_Δ=3Z_Y\)の関係式から、
\(\displaystyle \frac{1}{jωC_Δ}=3\frac{1}{jωC_Y}\)
⇔ \(C_Y=3C_Δ\)

以上より、静電容量はインピーダンスに対して逆数であることから、Y結線の静電容量はΔ結線の静電容量の3倍の大きさになります。
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参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
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