難易度
直流回路の基本的な問題です。
解法はいくつかあります。
①重ねの理を使い、各電源が流す電流を合成する。
②キルヒホッフの法則から連立方程式を立てて解く。
③ミルマンの定理を使って解く。
問題
図のような直流回路において、抵抗6Ωの端子間電圧の大きさVの値[V]として、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)2 (2)5 (3)7 (4)12 (5)15
答え
(4)
要点整理
重ねの理について
重ねの理とは、複数の電源がある回路において、回路中の電圧・電流を解析する際、それぞれの電源ごとに分離回路として解析をした後、その結果を、足し合わせる(重ねる)ことで、求めたい電圧、電流が求まるという手法です。
これがどういうことかを、図を使用しながら解説します。

上図のようにV_1、V_2の2つの電源がある回路を解析します。
【手順①】下図のように、V_1だけの回路、V_2だけの回路の2つの分離回路として解析をしていきます。

【手順②】解析した結果を足し合わせます。
I_1=I_{11}+(-I_{21})
I_2=-I_{12}+I_{22}
I_3=I_{13}+I_{23}
V_3=V_{13}+V_{23}
以上で、求めたい電圧、電流が求まりました。
キルヒホッフの法則による回路解析
キルヒホッフの電圧則は、回路網中の任意の閉路において、一巡する経路に含まれる起電力(電源)の総和と電圧降下の総和は等しいという法則です。
この法則を使って、二つの電源を持つ回路の解析ができます。

まず、二つの電源回路から、上図のようなループ電流I_1、I_2が流れているとします。
一巡する経路に含まれる電源起電力を左辺、電圧降下を右辺に記述しますと、
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} V_1=V_{R1}+V_{R3}\\ V_2=V_{R2}+V_{R3} \end{array} \right. \end{eqnarray}
↓ 各抵抗、電流を代入すると、
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} V_1=R_1I_1+R_3(I_1+I_2)\\ V_2=R_2I_2+R_3(I_1+I_2) \end{array} \right. \end{eqnarray}
の連立方程式が立てられます。この連立方程式を解くことで欲しい点の電圧・電流値が求まります。
ミルマンの定理について

上図のように、各枝路に電源と抵抗が並列に接続されている回路を考えます。
各抵抗を流れる電流値をI_1,I_2,…,I_nとすると、
I_1+I_2+…+I_n=0 ………①
となります。
次に、各電源の各導線における電位差を考えると、
V_1-R_1I_1=V_{ab} ⇔ \displaystyle I_1=\frac{V_1-V_{ab}}{R_1}
V_2-R_2I_2=V_{ab} ⇔ \displaystyle I_2=\frac{V_2-V_{ab}}{R_2}
︙
V_n-R_nI_n=V_{ab} ⇔ \displaystyle I_n=\frac{V_n-V_{ab}}{R_n} ………②
なるので、②を①に代入すると、
\displaystyle \frac{V_1-V_{ab}}{R_1}+\frac{V_2-V_{ab}}{R_2}+…+\frac{V_n-V_{ab}}{R_n}=0
⇔\displaystyle (\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}+…\frac{1}{R_n})V_{ab}=(\frac{V_1}{R_1}+\frac{V_2}{R_2}+…\frac{V_n}{R_n})
⇔\displaystyle V_{ab}=\frac{\frac{V_1}{R_1}+\frac{V_2}{R_2}+…\frac{V_n}{R_n}}{(\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}+…\frac{1}{R_n})}
⇔\displaystyle V_{ab}=\frac{\sum_{i=1}^{n}\frac{V_i}{R_i}}{\sum_{i=1}^{n}\frac{1}{R_i}}
と導くことができます。

内部抵抗を持つ電池を並列接続したとき、このような回路となります。
要点整理の適用
重ねの理による解

図の回路を重ねの理で、それぞれの電源ごとに回路解析をします。
![]() | 左図の回路を解析すると、 I_{11}=2.4[A] I_{12}=0.9[A] I_{13}=1.5[A] V_{13}=9[V] |
![]() | 左図の回路を解析すると、 I_{21}=0.6[A] I_{22}=1.1[A] I_{23}=0.5[A] V_{23}=3[V] |
以上から、V_3=V_{13}+V_{23}=9+3=12[V]
V_3=12[V]なので(4)が回答となります。
キルヒホッフの法則による解

キルヒホッフの法則から、連立方程式を立式すると、
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 21=5I_1+6(I_1-I_2)\\ 14=-10I_2+6(I_1-I_2) \end{array} \right. \end{eqnarray}
⇓
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 21=11I_1-6I_2 ………①\\ 14=6I_1-16I_2 ………② \end{array} \right. \end{eqnarray}
⇓
①を変形すると、
\displaystyle I_2=\frac{11I_1-21}{6} ………③
③を②に代入すると、
\displaystyle 14=6I_1-\frac{16}{6}(11I_1-21)
⇔84=36I_1-176I_1+336
⇔140I_1=252
⇔I_1=1.8[A] ………④
④を③に代入すると、
\displaystyle I_2=\frac{11・1.8-21}{6}=-0.2[A] ………⑤
次に、V_3を求める。
V_3=6(I_1-I_2) ………⑥
なので、⑥に④・⑤を代入すると、
V_3=6(1.8-(-0.2))=12[V]
以上より、V_3=12[V]なので(4)が回答となります。
ミルマンの定理による解

問題の図を、ミルマンの定理を適用しやすいように書き直します。
6[Ω]の抵抗には、0[V]の電源がつながっていることとします。

\displaystyle V_{ab}=\frac{\sum_{i=1}^{3}\frac{V_i}{R_i}}{\sum_{i=1}^{3}\frac{1}{R_i}}
⇔\displaystyle V_{ab}=\frac{\frac{21}{5}+\frac{14}{10}+\frac{0}{6}}{\frac{1}{5}+\frac{1}{10}+\frac{1}{6}}
⇔\displaystyle V_{ab}=\frac{\frac{28}{5}}{\frac{7}{15}}
⇔\displaystyle V_{ab}=12[V]
以上より、V_{ab}=12[V]なので(4)が回答となります。
出典元
令和5年度第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題下期問6
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
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ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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