誘導電動機の回転子

回転子 機械

回転子の種類

誘導機の回転子は、かご形と、巻線形の二種類に大別されます。
かご形回転子には、普通かご形の他に、特殊かご形があります。
特殊かご形は、始動トルクが小さい問題を改善するために、構造に工夫をしたものです。

 

かご形回転子

合体

かご形回転子は、積層鉄心に、両端の短絡環(エンドリング)と、多数の導体棒(バー)を接続した、かご形構造となっています。

導体棒と短絡環がコイルの役割を果たして、二次電流の通り道となります。
かご型導体で構成されるコイルを回転子巻線二次巻線という呼びます。

積層鉄心は、薄いケイ素鋼板を絶縁して何枚も重ね合わせた鉄心です。
積層鉄心とする理由は、渦電流損を小さくするためです。
渦電流損の大きさは、鉄心の板厚の2乗に比例するので、薄くして絶縁することで渦電流損を小さくできます。

 

始動トルクの問題
かご形回転子には、始動トルクが小さいという問題があります。

始動直後は、すべりが\(s=1\)で大きいです。

この時の二次周波数\(f_2\)(回転子に流れる電流の周波数)は、\(f_2=sf=f\)です。
そのため、電源周波数と等しく、周波数が高いです。

漏れリアクタンス(\(X_L=2πf_2L\)) は、周波数に比例します。
そのため、始動直後の漏れリアクタンスは大きいです。
漏れリアクタンスが大きいと、二次電流の無効電流が大きくなります。
無効電流はトルクの発生のためには働かないので、誘導電動機に送る一次電流が大きいのに対し、トルクが低いという問題が発生します。
➡この問題を解決するために特殊かご形回転子(二重かご形・深溝かご形)があります。

 

普通かご形回転子

最も一般的で広く使われる標準的な構造の回転子です。

始動トルクが小さく、始動電流が大きい特性から、負荷が軽い一般産業用機械(ポンプ・送風機・工作機械等)に広く使われます。

長所
・構造が簡単で丈夫
・製造コストが安い
・保守がほぼ不要
・故障しづらい
・効率が良い(鉄損銅損が少ない)
・軽負荷向き(一般産業用途)

短所
・始動トルクが小さい
・始動電流が大きい
 
 
 
 

 

二重かご形回転子

二重かご形回転子は、回転子の溝(スロット)に、外側導体と、内側導体の2つの導体を入れた2層構造です。
両端を短絡環で接続する点は、他のかご形と同じです。

外側導体は、抵抗率を大きくするために、黄銅等の材質を使い、断面積を小さくします。
内側導体は、抵抗率を小さくするために、銅等の材質を使い、断面積を大きくします。

重負荷始動が必要なコンベア、クレーン、大型ポンプ等の用途に使用されます。

長所
・かご形の中で最も高始動トルク
・始動電流が最も小さい
・高負荷向き
・保守がほぼ不要
・故障しづらい

短所
・構造が複雑で製造コストが高い
・安定運転時に効率が劣る
 
 
 

 

\(\fbox{始動時}\)
二次周波数\(f_2\)は、\(f_2=sf=f\)で高い周波数なので、漏れ磁束が大きいです。

外側導体は、固定子に近く、漏れ磁束が少ないため、外側導体の大きな抵抗成分と合わさり、大きい始動トルクを得ることが出来ます。

内側導体は、固定子から遠く、漏れ磁束が大きいです。
内側導体の小さな抵抗成分と合わさり、始動トルクは非常に小さいです。

そのため、二次回路を流れる電流の大部分は外側導体を流れ、二次抵抗の高い誘導機として始動できるので、大きな始動トルクを得ることができます。

\(\fbox{安定運転時}\)
安定運転になると、すべりが\(s=0.05\)程度となります。
二次周波数\(f_2\)は、\(f_2=sf\)で低い周波数なので、漏れ磁束が小さくなります。

そのため、抵抗率の小さな内側導体に多くの電流が流れ、安定運転時のトルクを作り出します。

 

深溝かご形回転子

深溝かご形回転子は、スロットの形が、半径方向に細長い構造をしています。
二次導体は、細長いスロットにはまる様に、長方形等の幅が狭くて深さ方向に対して長い導体です。

 

長所
・普通かご形より大きい始動トルク
・普通かご形より始動電流が小さい
・普通かご形とほぼ同等の効率
・中負荷向き
・保守がほぼ不要
・故障しづらい

短所
・製造コストがやや高い
 (スロット加工のため)
 
 
 
 

 

\(\fbox{始動時}\)
始動時の二次周波数が高いときは、スロットの底に近い導体部分ほど多くの漏れ磁束と鎖交します。
そのため、漏れリアクタンスが大きくなります。

そのため、導体に流れる電流は、外周近くに集中し、内側には電流はあまり流れません。
実質的に導体の断面積が小さくなったことと同じ働きをするため、抵抗率が増加します。

その結果、普通かご形よりも優れた始動トルクを得ることができるようになります。

\(\fbox{安定運転時}\)
回転数が上昇するに従ってすべりは、1から0に近づいていきます。
二次周波数\(f_2=sf\)は低くなるため、漏れリアクタンスは減少します。
漏れリアクタンスの減少にともない、電流分布は次第に底部へ広がっていきます。

安定運転領域に入ると、電流が一様に導体全体に分布するようになるので、普通のかご形誘導電動機として動作します。

 

巻線形回転子

巻線形回転子は、鉄心のスロットに三相巻線を挿入し、ブラシを介してスリップリングに接続します。
スリップリングには外部抵抗(可変抵抗器)を接続することができます。

外部抵抗の抵抗値を操作することで、始動特性を改善したり、速度制御することができます。
この始動特性の改善方法は、比例推移の原理を使った方法です。

 

長所
・高トルク始動が可能
・始動電流を抑制できる
・二次抵抗制御により速度制御可能
・頻繁な始動・停止・逆転に対応しやすい

短所
・構造が複雑
・保守が必要
 (ブラシの摩耗・接触不良等)
・製造コストが高い
 

 

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参考書

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