【電験三種:機械】令和6年度下期 問1

電験三種令和2年度機械問1 令和6年度下期

概要

直流発電機の問題です。普通程度の難しさだと思われます。
直流機の誘導起電力と回転数に関する式は少々複雑に見えますが、その式について理解できれば直流機は得点源になりやすいので頑張りましょう。

 

キーワード
直流発電機、誘導起電力、回転数

 

問題

長さ\(l[m]\)の導体を磁束密度\(B[T]\)の磁束の方向と直角に置き、速度\(v[m/s]\)で導体及び磁束に直角な方向に移動すると、導体にはフレミングの \(\fbox{(ア)}\) の法則により、 \(e=\fbox{(イ)} [V]\) の誘導起電力が発生する。

1極当たりの磁束が\(\Phi[Wb]\)、磁極数が\(p\)、電機子総導体数が\(Z\)、巻線の並列回路数が\(a\)、電機子の直径が\(D[m]\)なる直流機が回転速度\(n[min^{-1}]\)で回転しているとき、周辺速度は\(v=πD \frac{n}{60}[m/s]\)となり、直流機の正負のブラシ間には \(\fbox{(ウ)}\) 本の導体が \(\fbox{(エ)}\) に接続されるので、電機子の誘導起電力\(E\)は、\(E= \fbox{(エ)} [V]\) となる。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)左手\(\frac{Bv}{l}\)\(\frac{Z}{a}\)直列\(\frac{Z}{60pa} \Phi n\)
(2)左手\(Blv\)\(Za\)直列\(\frac{pZa}{60} \Phi n\)
(3)右手\(\frac{Bv}{l}\)\(Za\)並列\(\frac{pZa}{60} \Phi n\)
(4)右手\(Blv\)\(\frac{a}{Z}\)並列\(\frac{pZ}{60a} \Phi n\)
(5)右手\(Blv\)\(\frac{Z}{a}\)直列\(\frac{pZ}{60a} \Phi n\)

 

答え

(5)

 

解説テキスト リンク

 

回答の解説

\(\boldsymbol{\fbox{(ア)}}\)
フレミングの法則には、左手の法則と、右手の法則の2つの法則があります。
本問の\(\fbox{(ア)}\) は、フレミング右手の法則が、誘導起電力の向きを指し示します。

左手の法則
左手の親指、人差し指、中指を互いに直角に開きます。
このとき、各指がそれぞれの向きを指し示します。
親  指:電磁力(ローレンツ力)\(F[N]\)の向き
人差し指:磁界\(\Phi[Wb]\)の向き(磁束密度\(B[T]\)の向き)
中  指:電流\(I[A]\)の向き

右手の法則
右手の親指、人差し指、中指を互いに直角に開きます。
このとき、各指がそれぞれの向きを指し示します。
親  指:移動\(v[m/s]\)の向き
人差し指:磁界\(\Phi[Wb]\)の向き(磁束密度\(B[T]\)の向き)
中  指:電流\(I[A]\)の向き(誘導起電力\(E[V]\)の向き

 


\(\boldsymbol{\fbox{(イ)}}\)
ファラデーの電磁誘導の法則に従った大きさの誘導起電力\(\fbox{(イ)}=e=Blv[V]\)が発生します。

 


\(\boldsymbol{\fbox{(ウ)}}\) 、\(\boldsymbol{\fbox{(エ)}}\)
電機子のコイルの1辺1辺を電機子導体と呼びます。この電機子導体にフレミング右手の法則による誘導起電力\(e[V]\)が発生します。

全ての電機子導体数を、
・総導体数:\(Z\)[本] とします。

電機子導体は、並列に接続されています。そこで、
・並列回路数:\(a\)[個] とします。

このとき、\(\fbox{(ウ)}=\frac{Z}{a}\)[本] の電機子導体が1回路に\(\fbox{(エ)}=\)直列接続されます。

 


\(\boldsymbol{\fbox{(オ)}}\)

(オ)の導出の流れ
(1)回転子の表面に供給される界磁磁束\(B\)の導出
(2)電機子導体の速度の導出
(3)1本の電機子導体当たりの誘導起電力\(e[V]\)の導出
(4)全体の誘導起電力の導出

(1)回転子の表面に供給される界磁磁束\(B\)の導出

問題文から、次の3つがわかります。
・1極当たりの磁束\(\Phi[Wb]\)
・回転子の表面積\(S=πDL[m^2]\)
・磁極数\(p\)[個]

この3つの変数から、1つの磁極当たりの磁束密度\(B_1[T]\)が求められます。
\(B_1=\frac{\Phi}{S}=\frac{\Phi}{πDL}[T]\)

磁極数を\(p\)個に増やすと、その分磁束密度が大きくなるので、\(p\)個の磁極の磁束密度\(B[T]\)は、
\(\displaystyle B=pB_1=\frac{p\Phi}{πDL}[T]\) …①


(2)電機子導体の速度の導出

問題文中の電機子の回転速度は、次のように求まります。

電機子は、回転子の円周上に巻かれているため、回転子の外周の回転速度が、電機子の速度になります。
回転数\(n[min^{-1}]\)は、1分当たりの回転数です。
速度を求めるときは、1秒当たりの回転数である必要があるので、60で割ります。
円周の長さは、\(πD\)で求まります。
したがって、速度は次のように求まります。
\(\displaystyle v=πD \frac{n}{60}[m/s]\) …②


(3)1本の電機子導体当たりの誘導起電力\(e[V]\)の導出
1本の電機子導体当たりの誘導起電力\(e\)は、(イ)で示されているとおり、
\(e=Blv\)です。この式に、①・②式を代入します。

\(\displaystyle e=Blv=\frac{p \Phi}{πDl}・l・πD \frac{n}{60}=\frac{p}{60}・\Phi・n\)


(4)電機子全体の誘導起電力の導出
(ウ)・(エ)で示された通り、\(\frac{Z}{a}\)[本] の電機子導体が1回路に直列接続されているので、次のように電機子全体の誘導起電力\(E[V]\)は求まります。

\(\displaystyle E=\frac{Z}{a}・e=\frac{pZ}{60a}・\Phi・n\)

と求まります。

 

以上より、答えは(5)です。

 

出典元

一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験 機械科目問1

参考書

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本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
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電験三種の領域をずっと超えた先の話を9割方しているので、電験三種の勉強の参考書としての購入はおすすめしません。

直流電動機について、ありとあらゆる事を書き記していった一冊です。
この本より詳しい本は少ないと思いますので、直流電動機の設計を学ぶ人に取っては良い本かと思われます。

感覚的には、研究論文化する内容ではないけど、後世には残しておきたいと思ったことをまとめたというような感じでしょうか。
文章の癖は強いので、もし買う場合はサンプルを読んでから購入することを推奨します。

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