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零位法

零位法 理論

偏位法・零位法について

電気計測の方法として、偏位法と、零位法の2つの方法に大別できます。
本ページでは偏位法・零位法について簡単に紹介した後に、零位法の具体例を解説していきます。

偏位法
電圧計や電流計のように測定量を指示針の振れ幅に変換して計器の指示値を読むような方法です。
指示値を読むだけで簡単という長所はありますが、精度が悪いという短所があります。
これは、電流計であれば、測定量(回路に流れる電流)を指示針を振るためのエネルギーとして変換します。その結果、電流計が回路から受取ったエネルギーの分だけ誤差を発生させます。そのため、精度が悪くなってしまうわけです。

零位法
直流電位差計や、ケルビンダブルブリッジ回路による方法のように、回路を平衡させて検知する方法です。
測定量と、基準量が等しくなって平衡するまで調整する手間があるものの、平衡した測定回路は測定対象からエネルギーを取ることなく測定ができるため、測定対象に与える影響が小さく精度良く測定できます。

偏位法・零位法例

計測方法長所短所測定機器例
偏位法測定が簡単精度が良くない可動コイル形電圧計・電流計
可動鉄片形電圧計・電流計
零位法高精度測定に時間がかかる直流電位差計
ブリッジ回路(カッコ内は測定対象)
・ホイートストンブリッジ(中抵抗)
・ケルビンダブルブリッジ(低抵抗)
・ウィーンブリッジ(容量、周波数)
・シェーリングブリッジ(静電正接\(tanδ\))

 

零位法の計測機器

直流電位差計

直流電位差計とは、測定対象の電位を読み取る計器です。
測定値を読み取る際に、測定対象からは電流が流れ出さないため、高精度な測定ができます。

 

直流電位差計の測定回路

測定回路の各記号
・\(E_x\):測定対象
・\(E_s\):基準電圧(既知の起電力)
・G:検流計
・AC間は抵抗率が一様の線抵抗
・Bは検流計が線抵抗に接続される点
・Eは電位差計を動作させるための起電力
・スイッチで検流計は\(E_x\)か\(E_s\)のどちらかに接続

 

直流電位差計の測定原理

測定の手順は2ステップです。

①基準電圧\(E_s\)の平衡点を調べる
②測定対象\(E_x\)の平衡点を調べる

①基準電圧\(E_s\)の平衡点を調べる

まず初めに、検流計\(G\)を、基準電圧\(E_s\)に接続します。そして、検流計の指示が0になるまで、接点Bをスライドさせます。
検流計の指示が0になったとき、
AB間の抵抗を\(R_s[Ω]\)
AB間の長さを\(l_s[m]\)とします。

検流計が0を指しているときは、\(E_s\)から抵抗AB間に電流は流れていません。
つまり、\(E_s\)は、電流\(I\)が作るAB間の抵抗の電圧降下\(R_sI\)と等しくなります。
したがって、次の式が成り立ちます。
\(E_s=R_sI\)   ………①
変形すると、
\(\displaystyle I=\frac{E_s}{R_s}\)   ………②

 


②測定対象\(E_x\)の平衡点を調べる

次に、スイッチを切替えて、検流計\(G\)を、基準電圧\(E_x\)に接続します。
検流計の指示が0になるまで、接点Bをスライドさせます。
検流計の指示が0になったとき、
AB間の抵抗を\(R_x[Ω]\)
AB間の長さを\(l_x[m]\)とします。

このとき、次の式が成り立ちます。
\(E_x=R_xI\)   ………③
変形すると、
\(\displaystyle I=\frac{E_x}{R_x}\)   ………④

②・④式から、
\(\displaystyle \frac{E_x}{R_x}=\frac{E_s}{R_s}\)
が成り立ち、変形すると、
\(\displaystyle E_x=\frac{R_x}{R_s}E_s\)   ………⑤

AC間は抵抗率が一様の線抵抗であることから、AB間の距離の長さが、抵抗の大きさになるので、
\(\displaystyle \frac{R_x}{R_s}=\frac{l_x}{l_s}\)   ………⑥

⑥式を⑤式に代入すると
\(\displaystyle E_x=\frac{l_x}{l_s}E_s\)   ………⑦
となります。

例えば、\(E_s=10[V]\)で、\(l_x=1.5\)、\(l_s=1\)とすれば、⑦式から\(E_x=15[V]\)とわかります。

 

ケルビンダブルブリッジ回路

ケルビンダブルブリッジ回路は、零位法の測定回路です。
ホイートストンブリッジ回路を2つ重ねたような回路であるため、ダブルブリッジ回路と呼びます。

この回路は、数mΩ以下の低抵抗を測定するために使用します。
電線は非常に抵抗率の低い導体ですが、数mΩ程度の抵抗を持っています。そのため、電線の影響を受けると大きな測定誤差が発生してしまいます。
そこで、電線の影響を受けないように工夫された回路がダブルブリッジ回路です。

 

ケルビンダブルブリッジ回路図

測定回路の各記号
・\(R_x\):測定対象
・\(P,Q,p,q\):4つの固定抵抗
・\(R_s\):可変抵抗
・\(r\):電線の抵抗

 

ケルビンダブルブリッジ回路の測定原理

誤差の原因となる電線の抵抗\(r\)の影響を除去するための工夫がされています。
これから、最終的な\(R_x\)の数式に\(r\)が出てこない事を示します。

閉回路Ⅰから、
\(Pi_1=R_xI+pi_2\)   ………①
が成り立ちます。

閉回路Ⅱから、
\(Qi_1=R_sI+qi_2\)   ………②
が成り立ちます。

式①、②から、
\(\displaystyle \frac{Pi_1}{Qi_1}=\frac{R_xI+pi_2}{R_sI+qi_2}\)
⇔\(\displaystyle \frac{P}{Q}=\frac{R_x+p\frac{i_2}{I}}{R_s+q\frac{i_2}{I}}\)   ……③

\(I\)は\((p+q)\)と\(r\)の回路に分流するので、
\((p+q)i_2=r(I-i_2)\)
⇔\(pi_2+qi_2+ri_2=(p+q+r)i_2=rI\)
\(\displaystyle \frac{i_2}{I}=\frac{r}{p+q+r}\)   ……④
の関係が得られます。

\(\displaystyle K=\frac{r}{p+q+r}\)
として③式を整理すると、
\(\displaystyle \frac{P}{Q}=\frac{R_x+pK}{R_s+qK}\)
⇔\(\displaystyle \frac{P}{Q}(R_s+qK)=R_x+pK\)
⇔\(\displaystyle R_x=\frac{P}{Q}R_s+\frac{P}{Q}qK-pK\)
\(\displaystyle R_x=\frac{P}{Q}R_s+(\frac{P}{Q}-\frac{p}{q})qK\)  ……⑤
となり、測定対象\(R_x\)が求まります。
⑤式から、電線の抵抗\(r\)が除去されていることがわかります。

 

  

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参考書

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