零相変流器(ZCT)【使い方・注意点】

零相変流器(ZCT)の使い方と注意点の解説 変流器

零相変流器(ZCT)は、保護継電器と組合わせて使用する、地絡保護には欠かせない変流器です。
そんなZCTについて、動作原理から、重要な注意点まで一通り説明したいと思います。

零相変流器(ZCT)とは

零相変流器とは、ZCT(Zero-phase Current Transformer)と呼ばれる装置で、地絡電流を検出するのに使用する変流器です。6.6kVの高圧配電系統は非接地系であることから、地絡電流は小さいです。そのため、ZCTは、微小な地絡電流も検出する必要があり、その精度は保護継電器が検知する100mA単位で検知します。

 

動作原理

変流器(CT、ZCT)は、一次導体(送電線)に流れた電流が作る磁界が、鉄心を通ることで、鉄心に巻かれた二次巻線に電圧を生じます。

左図は、R相に電流\(I_R\)の電流が流れた時に、出力端子が発生するまでの流れを示しています。


平時のベクトル図

平時においては、ZCTには三相(R・S・T相)にそれぞれ120°ずつ位相がずれた電流が流れています。このとき、各相の電流を足し合わせると、0になります。この足し合わせた電流を零相電流\(I_Z\)と呼びます。
\(I_Z=I_R+I_S+I_T=0\)

零相電流を検知するには、ZCTを貫く一次導体が作り出す磁界を使用します。
正常な状態では、各相電流が作る磁界は打ち消しあうため、二次巻線に電圧が生じません。
これが、零相電流\(I_Z=0\)の状態です。


地絡時のベクトル図

R相で一線地絡故障(完全地絡)が発生した場合、R相に流れた往路電流は地絡電流として地面に全て流れます。(\(I_R=I_G\))
往路電流は全て地面に流れ込んでしまうため、S相、T相から戻って行く復路電流は共に0Aとなります。(\(I_S=I_T=0A\))

ZCTの鉄心に流れる磁束は、\(I_R\)が作った磁束のみとなります。
その結果、二次巻線に電圧が発生するため、出力端子(k,ℓ)間に出力電圧が発生します。

こうして発生した電圧をZCTの出力として保護継電器に送り、整定値を超えた時点で保護継電器が動作します。


単相回路

三相回路

今までの説明は、三相回路のZCTで説明しましたが、単相回路でも同じ動作原理で動作します。
そのため、ZCTは、単相回路であれば2本、三相回路であれば3本まとめ、一次導体(送電線)をZCTに貫通させて使用することで零相電流を検知できます。

 

 

使用方法

ZCTの回路図を表すと下図の通りです。

ZCTの結線図
端子名説明
k出力端子1
出力端子2
ktテスト端子1
ℓtテスト端子2

出力端子kは電源側、出力端子ℓは負荷側ですので、一次導体に流れる電流はkからℓに向かって流れます。逆になると、不動作、誤動作の原因となるので注意です。

ZCTの出力端子と、保護継電器との接続は下枠の通りです。

1.出力端子kを、保護継電器のZ1に接続
2.出力端子ℓを、保護継電器のZ2に接続

接続先する極性が逆になると、本来保護すべき範囲の地絡が検知されないため不動作します。
また、外部の地絡を検知してしまうため、不必要動作をしてしまいます。

テスト端子ktと、ℓtは、動作テストをするときに使用します。
ktからℓtに電流を流すことで、電源側から負荷側に電流を流すのと同じになります。

使用時は、ktとℓtは、絶対にショートさせないこと。
ZCTをショート線で1ターンすることとなるため、このループに電磁誘導で電流が流れるとZCTが出力して不必要動作を起こします。

 

選定方法

  1. 使用する電路の最大負荷電流値を確認し、ZCTの定格電流値が最大負荷電流値以上となるものを選定すること。
  2. 3本のケーブルをZCTに貫通させるため、3本通せる径のZCTを選定すること。
  3. ZCTの変流比はメーカー毎に異なるため、保護継電器が対応しているZCTを選定すること。
    保護継電器側か、ZCT側の取扱説明書に対応している型式が書かれているはず。

 

シールド線接地

ケーブルのシールド線の接地は、注意が必要です。
接地の仕方によっては、不要動作の原因となるだけでなく、意図せずにケーブルの地絡を検出してしまったり、できなかったりします。

結線図判定補足
NG 誘導で電流が流れることによって、不要動作の原因となる。
OKケーブルの地絡を検出できない
OKケーブルの地絡を検出可能
OKケーブルの地絡を検出可能     
OKケーブルの地絡を検出できない 

注意事項・その他

  • シールド線接地は、見落としがちですが、不用意に電源側・負荷側でシールド線を接地すると不要動作をします。
  • シールド線の接地方法に気を付けないと、ケーブルの地絡を意図せずに検出してしまう。逆に意図せずに検出できないことにつながります。
  • 保護継電器の信号配線を高圧電線と近接して配線すると、静電誘導により電圧が誘起され不要動作の要因となります。
    信号配線を高圧電線から離すか、信号配線にシールド線を使用すること。
  • 保護継電器の信号配線を大きな電流の流れる電線に近接して配線すると、電磁誘導により電流が誘導され不要動作の要因となります。
    ①信号配線を大電流の流れる電線から離す。②ツイストペア線を使用する。③配線を鋼管に通して遮へいする等の対策があります。
  • 通常使用時は、テスト端子(kt,ℓt)は、必ず解放すること。
    ショートすると、ループに電磁誘導で電流が流れてZCTから出力されてしまい、不必要動作につながります。
  • ZCTには、貫通型と、分割型があります。
    貫通型は、鉄心が一体物となっているので、ZCTを更新する際は、一次導体を引抜く必要があります。分割型は、鉄心を分割できるので、一次導体をいじることなくZCTを更新できます。
    ZCTを更新することはあまり無いかもしれませんが、個人的には分割型をお勧めします。

関連規格

  • JIS C 8374 漏電継電器
  • JIS C 4601 高圧受電用地絡継電装置
  • JIS C 4609 高圧受電用地絡方向継電装置

豆知識

クランプメータで漏電電流測定をする際も、単相回路は線2本掴んで電流測定、三相回路は線3本掴んで電流測定します。ZCTと同じ原理で測定しています。

参考書

保護協調に超特化した一冊。実務に近い解説が多いため、仕事で使う参考書としてお勧め。


実際にリレーを整定する場合にも、とても参考になる一冊。


電気設備の技術基準とその解釈について分かり易く解説されている一冊。


値段は高いが、幅広い解説がある。手元に置いておきたい一冊。


内線規程です。
電気設備に関する技術基準を定める省令や電気設備技術基準の解釈で不足する部分を具体的に補完する民間規格です。法的拘束力がある規格ではありませんが、設備設計、電気工事において、まず初めに参照するルールです。

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