概要
誘導電動機の電源電圧を変化させた時の回転速度の変化を計算する問題です。
(a)問は、トルクの式を立式する導入問題で、(b)問で回転速度を計算します。
L形等価回路を理解していれば、難しくない問題です。
キーワード
誘導電動機
問題
三相誘導電動機について、次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) 一次側に換算した二次巻線の抵抗\(r’_2\)と滑り\(s\)の比\(\frac{r’_2}{s}\)が、他の定数(一次巻線の抵抗\(r_1\)、一次巻線のリアクタンス\(x_1\)、一次側に換算した二次巻線のリアクタンス\(x’_2\))に比べて十分に大きくなるように設計された誘導電動機がある。
この電動機を電圧\(V\)の電源に接続して運転したとき、この電動機のトルク\(T\)と滑り\(s\)、電圧\(V\)の関係を表す近似式として、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、\(k\)は定数である。
(1)\(T=\frac{k}{Vs}\) (2)\(T=\frac{k}{V^2s}\) (3)\(T=\frac{kV^2}{s}\) (4)\(T=kV^2s\) (5)\(T=kVs\)
(b) 上記(a)で示された条件で設計された定格電圧\(220V\)、同期速度\(1200min^{-1}\)の三相誘導電動機がある。
この電動機を電圧\(220V\)の電源に接続して、一定トルクの負荷で運転すると、\(1140min^{-1}\)の回転速度で回転する。
この電動機に供給する電源電圧を\(200V\)に下げたときの電動機の回転速度\([min^{-1}]\)の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、電源電圧を下げたとき、負荷トルクと二次抵抗は変化しないものとする。
(1) 1150 (2) 1127 (3) 1113 (4) 1091 (5) 1000
答え
(a)(4)
(b)(2)
解説テキスト リンク
回答解説
(a)問題
回答の流れ
1.L形等価回路を描いた後、問題文の条件から回路を簡単化する
2.二次電流\(I_2\)を求める
3.二次入力\(P_2\)と機械的出力\(P_m\)の関係を求める
4.二次入力\(P_2\)を求める
5.回転角速度\(ω\)と同期角速度\(ω_s\)の関係を求める
6.同期角速度\(ω_s\)を求める
7.トルク\(T\)を求める
1.L形等価回路を描いた後、問題文の条件から回路を簡単化する

図1
➡

図2
図1は、誘導電動機のL形等価回路です。
問題文の、
他の定数(一次巻線の抵抗\(r_1\)、一次巻線のリアクタンス\(x_1\)、一次側に換算した二次巻線のリアクタンス\(x’_2\))に比べて十分に大きくなるように設計された誘導電動機がある。
という条件から、\(r_1\)、\(x_1\)、\(x’_2\)は、計算する上で無視することができるので、回路図上から削除します。
\(V\)は線間電圧です。
L形等価回路に当てはめるには相電圧にしなければならないので、\(\frac{1}{\sqrt{3}}\)倍する必要があります。
2.二次電流\(I_2\)を求める
オームの法則から、
\(\displaystyle I_2=\frac{\frac{V}{\sqrt{3}}}{r’_2+\frac{1-s}{s}r’_2}=\frac{\frac{V}{\sqrt{3}}}{\frac{r’_2}{s}}=\frac{sV}{\sqrt{3}r’_2}\) …①
3.二次入力\(P_2\)と機械的出力\(P_m\)の関係を求める
二次入力\(P_2\)、二次銅損\(P_{c2}\)、機械的出力\(P_m\)の関係は、
\(P_2:P_{c2}:P_m=1:s:(1-s)\)
です。したがって、
\(P_m=(1-s)P_2\) …②
4.二次入力\(P_2\)を求める
二次入力は、電力の式から計算します。
L形等価回路は1相分の等価回路です。
そのため、電力を求める際は、3相分を求めなければならないので、3倍して計算します。
\(P_2=3I^2_2 \frac{r’_2}{s}=3 \left( \frac{sV}{\sqrt{3}r’_2} \right)^2 \frac{r’_2}{s}=\frac{sV^2}{r’_2}\)
整理すると、
\(P_2=\frac{sV^2}{r’_2}\) …③
5.回転角速度\(ω\)と同期角速度\(ω_s\)の関係を求める
回転速度\(N\)と同期速度\(N_s\)の関係式は、
すべりの定義式から、
\(s=\frac{N_s-N}{N_s}\) ⇔ \(N=(1-s)N_s\)
回転角速度\(ω=2π\frac{N}{60}\)
同期角速度\(ω_s=2π\frac{N_s}{60}\) …④
なので、
\(ω=(1-s)ω_s\) …⑤
6.同期角速度\(ω_s\)を求める
同期速度は、
\(N_s=\frac{120f}{p}\) …⑥
です。⑥式を④式に代入すると、
\(ω_s=2π\frac{N_s}{60}=\frac{4πf}{p}\) …⑦
7.トルク\(T\)を求める
機械的出力\(P_m\)、回転角速度\(ω\)、トルク\(T\)の関係式は、
\(\displaystyle T=\frac{P_m}{ω}\) …⑧
⑧式を展開していくと、
\(\displaystyle \begin{eqnarray}
T&=&\frac{P_m}{ω} = \frac{(1-s)P_2}{(1-s)ω_s} \\ \\
&=&\frac{\frac{sV^2}{r’_2}}{\frac{4πf}{p}} = \frac{p}{4πfr’_2}sV^2\\ \\
&=&ksV^2 ※k=\frac{p}{4πfr’_2}
\end{eqnarray}\)
以上より、(4)が答えです。
(b)問題
回答の流れ
1.問題の条件を確認する
2.定格電圧時のすべり\(s_1\)を求める
3.トルク一定の条件から、電圧を下げたときのすべり\(s_2\)を求める
4.電圧を下げたときの回転速度\(N_2\)を求める
1.問題の条件を確認する
・同期速度\(N_s=1200min^{-1}\)
・定格電圧\(V_1=220V\)
・定格運転時の回転速度\(N_1=1140min^{-1}\)
・定格運転時のすべり\(s_1\)
・電圧を下げたときの電圧\(V_2=200V\)
・電圧を下げたときの回転速度\(N_2\)
・電圧を下げたときのすべり\(s_2\)
2.定格電圧時のすべり\(s_1\)を求める
\(N_1=(1-s_1)N_s\)
⇔ \(1-s_1=\frac{N_1}{N_s}=\frac{1140}{1200}=0.95\)
⇔ \(s_1=0.05\)
3.トルク一定の条件から、電圧を下げたときのすべり\(s_2\)を求める
\(T=ks_1V^2_1=ks_2V^2_2\)
⇔ \(s_1V^2_1=s_2V^2_2\)
⇔ \(s_2=\left( \frac{V_1}{V_2} \right)^2 s_1=\left( \frac{220}{200} \right)^2 ・0.05=0.0605\)
4.電圧を下げたときの回転速度\(N_2\)を求める
\(N_2=(1-s_2)N_s=(1-0.0605)・1200=1127\)
以上より、(2)が答えです。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験 機械科目問題問15
参考書
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