概要
回路素子のインダクタンスか、静電容量を求める計算問題です。
電圧・電流の位相から、回路素子がコイルか、コンデンサかを見極める必要があります。
シンプルな問題ですが、位相の進み・遅れの概念は、中々理解が難しいので難問の部類だと思われます。
キーワード
インダクタンス、静電容量、位相の進み・遅れ、蓄えられるエネルギー
問題
図の交流回路において、回路素子は、インダクタンスL のコイル又は静電容量C のコンデンサである。
この回路に正弦波交流電圧v=500 sin(1 000 t)[V]を加えたとき、回路に流れる電流は、i=-50 cos(1 000 t)[A]であった。
このとき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 回路素子の値として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) C=10 nF (2) C=100 nF (3) C=10 μF
(4) L=10 mH (5) L=100 mH
(b) この回路素子に蓄えられるエネルギーの最大値W_{max} の値[ J]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし,インダクタンスの場合には\frac{1}{2}Li^2の、静電容量の場合には\frac{1}{2}Cv^2のエネルギーが蓄えられるものとする。
(1) 2.5 (2) 6.25 (3) 12.5 (4) 25 (5) 125
答え
(a)(4)
(b)(3)
解説テキスト リンク
回答解説
(a)問題の解答の流れ
①電流と電圧の位相差から回路素子の種類を判別する
②インピーダンスから、回路素子の値を求める
①電流と電圧の位相差から回路素子の種類を判別する
電圧はv=500 sin(1 000 t)[V]
電流はi=-50 cos(1 000 t)[A]

sinωtと、-cosωtをグラフに表すと、左図のようになります。
グラフの左側が進み、右側が遅れです。
つまり、電流が電圧から\frac{π}{2}遅れています。
コイルは、電流が電圧よりも位相が遅れる素子です。
コンデンサは、電流が電圧よりも位相が進む素子です。
この問題は、電流が電圧から位相が遅れていることから、回路素子はコイルであるとわかります。
②インピーダンスから、回路素子の値を求める
電圧はv=500 sin(1 000 t)[V]
電流はi=-50 cos(1 000 t)[A]であるため、回路素子のリアクタンスX_Lは、
\displaystyle X_L=\frac{v}{i}=\frac{500}{50}=10[Ω]
リアクタンスX_L[Ω]と、インダクタンスL[H]の関係式から、
X_L=ωL=1000L
⇔ \displaystyle L=\frac{10}{1000}=0.01=10mH
したがって、(a)問題は(4)10mH が答えです。
(b)問題の解答の流れ
①問題文中のW_{max}=\frac{1}{2}Li^2式からエネルギーの最大値を求める
①問題文中のW_{max}=\frac{1}{2}Li^2式からエネルギーの最大値を求める
問題文からi=50、(a)問題から、L=0.01です。これを式中に代入すると、
W_{max}=\frac{1}{2}Li^2=\frac{1}{2}・0.01・50^2=12.5[J]
したがって、(b)問題は(3)12.5 が答えです。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論科目B問題問15
参考書
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