概要
直流機の電機子反作用に関する論説問題です。
電機子反作用の基礎的な内容ですが、(エ)で重大な二択を迫られるため、普通程度の難易度と思われます。
電機子反作用は、直流機だけでなく、同期機でも重要な現象であるため、解答できるようになりましょう。
キーワード
直流機、電機子反作用、補極、補償巻線
問題
直流機では固定子と回転子の間で直流電力と機械動力の変換が行われる。
この変換を担う機構の一種にブラシと整流子とがあり、これらを用いた直流機では通常、界磁巻線に直流の界磁電流を流し、\(\fbox{(ア)}\)を回転子とする。
このブラシと整流子を用いる直流機では、電機子反作用への対策として補償巻線や補極が設けられる。ブラシと整流子を用いる場合には、補極や補償巻線を設けないと、電機子反作用によって、固定子から見た\(\fbox{(イ)}\)中性軸の位置が変化するために、これに合わせてブラシを移動しない限りブラシと整流子片との間に\(\fbox{(ウ)}\)が生じて整流子片を損傷するおそれがある。
なお、小形機では、補償巻線と補極のうち\(\fbox{(エ)}\)が一般的に用いられる。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
|---|---|---|---|---|
| (1) | 界磁 | 電気的 | 火花 | 補償巻線 |
| (2) | 界磁 | 幾何学的 | 応力 | 補極 |
| (3) | 電機子 | 幾何学的 | 応力 | 補償巻線 |
| (4) | 電機子 | 電気的 | 火花 | 補償巻線 |
| (5) | 電機子 | 電気的 | 火花 | 補極 |
答え
(1)
解説テキスト リンク
回答の解説
\(\fbox{(ア)}\)
この変換を担う機構の一種にブラシと整流子とがあり、これらを用いた直流機では通常、界磁巻線に直流の界磁電流を流し、\(\fbox{(ア)}\)電機子を回転子とする。
直流機は、界磁巻線に直流を流し、一定方向の界磁磁束を発生させます。
そして、回転子に巻かれた電機子に電機子電流を流すことで、電動機の場合はフレミング左手の法則に従った向きに回転し始めます。
発電機の場合は、フレミング右手の法則に従った向きに電機子電流が発生します。
\(\fbox{(イ)}\)・\(\fbox{(ウ)}\)
このブラシと整流子を用いる直流機では、電機子反作用への対策として補償巻線や補極が設けられる。ブラシと整流子を用いる場合には、補極や補償巻線を設けないと、電機子反作用によって、固定子から見た\(\fbox{(イ)}\)電気的中性軸の位置が変化するために、これに合わせてブラシを移動しない限りブラシと整流子片との間に\(\fbox{(ウ)}\)火花が生じて整流子片を損傷するおそれがある。

電機子に電機子電流が流れると、電機子電流から磁束が作られます。
電機子が作る磁束が無ければ、界磁磁束はN極から出てS極に真っすぐ入りますが、電機子電流の磁束と界磁磁束がベクトル合成されて、合成磁束が作られます。

合成磁束は、左図のように磁束の向きが変化し、磁束密度が\(0[T]\)になる点をつなげた電気的中性軸が傾きます。
このことにより、電機子巻線で発生した起電力をブラシで短絡することになるので、短絡電流が流れてブラシから火花が出て整流子を焼損します。
なお、幾何学的中性軸は、直流機の構造によって作られる機械的な中性軸なので、電機子反作用があっても変化しません。
\(\fbox{(エ)}\)
なお、小形機では、補償巻線と補極のうち\(\fbox{(エ)}\)補極が一般的に用いられる。
補極は簡単な構造で対策できるため、電機子反作用の対策として小型機から大型機まで広く使われます。
補償巻線は、界磁磁束を作るための磁極表面に、界磁巻線とは別のスロットを設けて配置した巻線です。補償巻線は、主磁極に巻線を埋め込むため、構造が複雑になります。
そのため、補償巻線は大型機でないと採用が出来ない対策方法です。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験 機械科目問1
参考書
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