概要
RLC直列回路の知識を問う論説問題です。
共振時のインピーダンス、周波数を下げたとき、上げたときの位相特性に関する知識が問われます。
知識として知っていなかったり、忘れてしまっていても、計算すれば簡単に回答が出ますので、諦めずに計算しましょう。
キーワード
交流回路、RLC直列回路、共振、誘導性リアクタンス、容量性リアクタンス、位相特性
問題
次の文章は、RLC直列共振回路に関する記述である。
R[Ω]の抵抗、インダクタンスL[H]のコイル、静電容量C[F]のコンデンサを直列に接続した回路がある。
この回路に交流電圧を加え、その周波数を変化させると、特定の周波数f_r[Hz]のときに誘導性リアクタンス2πf_rL[Ω]と容量性リアクタンス\frac{1}{2πf_rC}[Ω]の大きさが等しくなり、その作用が互いに打ち消し合って回路のインピーダンスが ア なり、 イ 電流が流れるようになる
この現象を直列共振といい、このときの周波数f_r[Hz]をその回路の共振周波数という。
回路のリアクタンスは共振周波数f_r[Hz]より低い周波数では ウ となり、電圧より位相が エ 電流が流れる。
また、共振周波数f_r[Hz]より高い周波数では オ となり、電圧より位相が カ 電流が流れる。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(カ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | (カ) | |
(1) | 大きく | 小さな | 容量性 | 進んだ | 誘導性 | 遅れた |
(2) | 小さく | 大きな | 誘導性 | 遅れた | 容量性 | 進んだ |
(3) | 小さく | 大きな | 容量性 | 進んだ | 誘導性 | 遅れた |
(4) | 大きく | 小さな | 誘導性 | 遅れた | 容量性 | 進んだ |
(5) | 小さく | 大きな | 容量性 | 遅れた | 誘導性 | 進んだ |
答え
(3)
解説テキスト リンク
関連箇所直リンク
・RLC直列回路
回答解説
回答の流れ
(a)共振時のインピーダンス
①共振時のインピーダンスを計算する
②共振時の電流を計算する
(b)周波数が低いとき
③非常に低い周波数f_L[Hz]のときのインピーダンスを求める
④f_L[Hz]の時のインピーダンスの位相を求める
⑤f_L[Hz]の時の電流の位相を求める
(c)周波数が高いとき
⑥非常に高い周波数f_H[Hz]のときのインピーダンスを求める
⑦f_H[Hz]の時のインピーダンスの位相を求める
⑧f_H[Hz]の時の電流の位相を求める
(a)共振時のインピーダンス
①共振時のインピーダンスを計算する

RLC直列回路のインピーダンスZは
\displaystyle Z=R+j2πfL+\frac{1}{j2πfC}
⇔ \displaystyle Z=R+j \left( 2πfL-\frac{1}{2πfC} \right)
共振周波数f_r[Hz]のとき、
\displaystyle 2πf_rL-\frac{1}{2πf_rC}=0
となり、この時のインピーダンスZは、
Z=R
共振周波数以外の周波数f[Hz]の時のインピーダンスの大きさは
\displaystyle Z=\sqrt{R^2+\left( 2πfL-\frac{1}{2πfC} \right)^2}
なので、共振時のインピーダンスは全周波数のインピーダンスの中で最小です。
したがって、回路のインピーダンスは ア=小さく なります。
②共振時の電流を計算する
共振時、回路に流れる電流I[A]は、
\displaystyle I=\frac{v}{Z}=\frac{v}{R}
となり、 イ=大きな 電流が流れます。
(b)周波数が低いとき
③低い周波数f_L[Hz]のときのインピーダンスを求める
インピーダンスの式 \displaystyle Z=R+j \left( 2πfL-\frac{1}{2πfC} \right)
から、周波数がf_r[Hz]よりも低いf_L[Hz]になると、
・誘導性リアクタンス2πfLは比例して小さくなります。
・容量性リアクタンス\displaystyle \frac{1}{2πfC}は反比例して大きくなります。
したがって、容量性リアクタンスの影響が大きくなるため、回路のリアクタンスは ウ=容量性 となります。
④f_L[Hz]の時のインピーダンスの位相を求める
周波数f_L[Hz]が非常に低く、誘導性リアクタンスが無視できるとしたときのインピーダンスZ_Lは、次式となります。
\displaystyle Z_L=R-j\frac{1}{2πfC}
Z_Lの位相角∠θ_{ZL}は、
\displaystyle ∠θ_{ZL}=tan^{-1}\frac{Im}{Re}=tan^{-1}\frac{-\frac{1}{2πfC}}{R}=tan^{-1}\frac{-1}{2πfCR}
⑤f_L[Hz]の時の電流の位相を求める
電圧の位相∠θ_v=0°としたときの電流の位相∠θ_Iは、
\displaystyle ∠θ_I=\frac{∠θ_v}{∠θ_{ZL}}=\frac{0°}{-tan^{-1}\frac{1}{2πfCR}}
⇔ \displaystyle ∠θ_I=0- \left( -tan^{-1}\frac{1}{2πfCR}\right)
⇔ \displaystyle ∠θ_I=tan^{-1}\frac{1}{2πfCR}
以上より、電流の位相∠θ_Iはプラスであるため、電圧の位相∠θ_vより位相が エ=進んだ 電流が流れます。
(c)周波数が高いとき
⑥非常に高い周波数f_H[Hz]のときのインピーダンスを求める
インピーダンスの式 \displaystyle Z=R+j \left( 2πfL-\frac{1}{2πfC} \right)
から、周波数がf_r[Hz]よりも高いf_H[Hz]になると、
・誘導性リアクタンス2πfLは比例して大きくなります。
・容量性リアクタンス\displaystyle \frac{1}{2πfC}は反比例して小さくなります。
したがって、誘導性リアクタンスの影響が大きくなるため、回路のリアクタンスは オ=誘導性 となります。
⑦f_H[Hz]の時のインピーダンスの位相を求める
周波数f_H[Hz]が非常に高く、容量性リアクタンスが無視できるとしたときのインピーダンスZ_Hは、次式となります。
\displaystyle Z_H=R+j2πfL
Z_Hの位相角∠θ_{ZH}は、
\displaystyle ∠θ_{ZH}=tan^{-1}\frac{Im}{Re}=tan^{-1}\frac{2πfL}{R}
⑧f_H[Hz]の時の電流の位相を求める
電圧の位相∠θ_v=0°としたときの電流の位相∠θ_Iは、
\displaystyle ∠θ_I=\frac{∠θ_v}{∠θ_{ZH}}=\frac{0°}{tan^{-1}\frac{2πfL}{R}}
⇔ \displaystyle ∠θ_I=0- \left( tan^{-1}\frac{2πfL}{R} \right)
⇔ \displaystyle ∠θ_I=-tan^{-1}\frac{2πfL}{R}
以上より、電流の位相∠θ_Iはマイナスであるため、電圧の位相∠θ_vより位相が カ=遅れた 電流が流れます。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問8
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
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ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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