【電験三種:理論】令和5年度上期 問8

電験三種令和5年度上期理論問8 交流回路

概要

RLC直列回路の知識を問う論説問題です。
共振時のインピーダンス、周波数を下げたとき、上げたときの位相特性に関する知識が問われます。
知識として知っていなかったり、忘れてしまっていても、計算すれば簡単に回答が出ますので、諦めずに計算しましょう。

キーワード
交流回路、RLC直列回路、共振、誘導性リアクタンス、容量性リアクタンス、位相特性

 

問題

次の文章は、RLC直列共振回路に関する記述である。

\(R[Ω]\)の抵抗、インダクタンス\(L[H]\)のコイル、静電容量\(C[F]\)のコンデンサを直列に接続した回路がある。
この回路に交流電圧を加え、その周波数を変化させると、特定の周波数\(f_r[Hz]\)のときに誘導性リアクタンス\(2πf_rL[Ω]\)と容量性リアクタンス\(\frac{1}{2πf_rC}[Ω]\)の大きさが等しくなり、その作用が互いに打ち消し合って回路のインピーダンスが なり、 電流が流れるようになる

この現象を直列共振といい、このときの周波数\(f_r[Hz]\)をその回路の共振周波数という。
回路のリアクタンスは共振周波数\(f_r[Hz]\)より低い周波数では となり、電圧より位相が 電流が流れる。

また、共振周波数\(f_r[Hz]\)より高い周波数では となり、電圧より位相が 電流が流れる。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(カ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)(カ)
(1)大きく小さな容量性進んだ誘導性遅れた
(2)小さく大きな誘導性遅れた容量性進んだ
(3)小さく大きな容量性進んだ誘導性遅れた
(4)大きく小さな誘導性遅れた容量性進んだ
(5)小さく大きな容量性遅れた誘導性進んだ

 

 

答え

(3)

解説テキスト リンク

関連箇所直リンク
RLC直列回路

 

回答解説

回答の流れ
(a)共振時のインピーダンス
 ①共振時のインピーダンスを計算する
 ②共振時の電流を計算する
(b)周波数が低いとき
 ③非常に低い周波数\(f_L[Hz]\)のときのインピーダンスを求める
 ④\(f_L[Hz]\)の時のインピーダンスの位相を求める
 ⑤\(f_L[Hz]\)の時の電流の位相を求める
(c)周波数が高いとき
 ⑥非常に高い周波数\(f_H[Hz]\)のときのインピーダンスを求める
 ⑦\(f_H[Hz]\)の時のインピーダンスの位相を求める
 ⑧\(f_H[Hz]\)の時の電流の位相を求める

 

(a)共振時のインピーダンス
①共振時のインピーダンスを計算する

RLC直列回路のインピーダンス\(Z\)は
\(\displaystyle Z=R+j2πfL+\frac{1}{j2πfC}\)
⇔ \(\displaystyle Z=R+j \left( 2πfL-\frac{1}{2πfC} \right) \)

共振周波数\(f_r[Hz]\)のとき、
\(\displaystyle 2πf_rL-\frac{1}{2πf_rC}=0 \)
となり、この時のインピーダンス\(Z\)は、
\(Z=R\)

共振周波数以外の周波数\(f[Hz]\)の時のインピーダンスの大きさは
\(\displaystyle Z=\sqrt{R^2+\left( 2πfL-\frac{1}{2πfC} \right)^2}\)

なので、共振時のインピーダンスは全周波数のインピーダンスの中で最小です。
したがって、回路のインピーダンスは ア=小さく なります。

②共振時の電流を計算する
共振時、回路に流れる電流\(I[A]\)は、
\(\displaystyle I=\frac{v}{Z}=\frac{v}{R}\)

となり、 イ=大きな 電流が流れます。

 

(b)周波数が低いとき
③低い周波数\(f_L[Hz]\)のときのインピーダンスを求める
インピーダンスの式 \(\displaystyle Z=R+j \left( 2πfL-\frac{1}{2πfC} \right) \)

から、周波数が\(f_r[Hz]\)よりも低い\(f_L[Hz]\)になると、
・誘導性リアクタンス\(2πfL\)は比例して小さくなります。
・容量性リアクタンス\(\displaystyle \frac{1}{2πfC}\)は反比例して大きくなります。

したがって、容量性リアクタンスの影響が大きくなるため、回路のリアクタンスは ウ=容量性 となります。

④\(f_L[Hz]\)の時のインピーダンスの位相を求める
周波数\(f_L[Hz]\)が非常に低く、誘導性リアクタンスが無視できるとしたときのインピーダンス\(Z_L\)は、次式となります。
\(\displaystyle Z_L=R-j\frac{1}{2πfC} \)

\(Z_L\)の位相角\(∠θ_{ZL}\)は、
\(\displaystyle ∠θ_{ZL}=tan^{-1}\frac{Im}{Re}=tan^{-1}\frac{-\frac{1}{2πfC}}{R}=tan^{-1}\frac{-1}{2πfCR}\)

⑤\(f_L[Hz]\)の時の電流の位相を求める
電圧の位相\(∠θ_v=0°\)としたときの電流の位相\(∠θ_I\)は、
\(\displaystyle ∠θ_I=\frac{∠θ_v}{∠θ_{ZL}}=\frac{0°}{-tan^{-1}\frac{1}{2πfCR}}\)

⇔ \(\displaystyle ∠θ_I=0- \left( -tan^{-1}\frac{1}{2πfCR}\right) \)

⇔ \(\displaystyle ∠θ_I=tan^{-1}\frac{1}{2πfCR}\)

以上より、電流の位相\(∠θ_I\)はプラスであるため、電圧の位相\(∠θ_v\)より位相が エ=進んだ 電流が流れます。
 

(c)周波数が高いとき
⑥非常に高い周波数\(f_H[Hz]\)のときのインピーダンスを求める
インピーダンスの式 \(\displaystyle Z=R+j \left( 2πfL-\frac{1}{2πfC} \right) \)

から、周波数が\(f_r[Hz]\)よりも高い\(f_H[Hz]\)になると、
・誘導性リアクタンス\(2πfL\)は比例して大きくなります。
・容量性リアクタンス\(\displaystyle \frac{1}{2πfC}\)は反比例して小さくなります。

したがって、誘導性リアクタンスの影響が大きくなるため、回路のリアクタンスは オ=誘導性 となります。

⑦\(f_H[Hz]\)の時のインピーダンスの位相を求める
周波数\(f_H[Hz]\)が非常に高く、容量性リアクタンスが無視できるとしたときのインピーダンス\(Z_H\)は、次式となります。
\(\displaystyle Z_H=R+j2πfL \)

\(Z_H\)の位相角\(∠θ_{ZH}\)は、
\(\displaystyle ∠θ_{ZH}=tan^{-1}\frac{Im}{Re}=tan^{-1}\frac{2πfL}{R}\)

⑧\(f_H[Hz]\)の時の電流の位相を求める
電圧の位相\(∠θ_v=0°\)としたときの電流の位相\(∠θ_I\)は、
\(\displaystyle ∠θ_I=\frac{∠θ_v}{∠θ_{ZH}}=\frac{0°}{tan^{-1}\frac{2πfL}{R}}\)

⇔ \(\displaystyle ∠θ_I=0- \left( tan^{-1}\frac{2πfL}{R} \right) \)

⇔ \(\displaystyle ∠θ_I=-tan^{-1}\frac{2πfL}{R}\)

以上より、電流の位相\(∠θ_I\)はマイナスであるため、電圧の位相\(∠θ_v\)より位相が カ=遅れた 電流が流れます。
 

 

 

 

出典元

一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問8

参考書

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