概要
三相誘導電動機の誘導起電力に関する論説問題です。
L型等価回路の成り立ちについて、理解をしていれば問題なく回答することが出来ると思いますが、最終形のみを覚えている場合は難儀することでしょう。
キーワード
誘導起電力、滑り、変圧器
問題
次の文章は、三相誘導電動機の誘導起電力に関する記述である。
三相誘導電動機で固定子巻線に電流が流れると \(\fbox{ (ア) }\) が生じ、これが回転子巻線を切るので回転子巻線に起電力が誘導され、この起電力によって回転子巻線に電流が流れることでトルクが生じる。
この回転子巻線の電流によって生じる起磁力を \(\fbox{ (イ) }\) ように固定子巻線に電流が流れる。 回転子が停止しているときは、固定子巻線に流れる電流によって生じる \(\fbox{ (ア) }\) は、固定子巻線を切るのと同じ速さで回転子巻線を切る。
このことは原理的に変圧器と同じであり、固定子巻線は変圧器の \(\fbox{ (ウ) }\) 巻線に相当し、回転子巻線は \(\fbox{ (エ) }\) 巻線に相当する。
回転子巻線の各相には変圧器と同様に \(\fbox{ (エ) }\) 誘導起電力を生じる。
回転子が回転しているときは、電動機の滑りを\(s\)とすると、 \(\fbox{ (エ) }\) 誘導起電力の大きさは、回転子が停止しているときの \(\fbox{ (オ) }\) 倍となる。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
|---|---|---|---|---|---|
| (1) | 交番磁界 | 打ち消す | 二次 | 一次 | \(1-s\) |
| (2) | 回転磁界 | 打ち消す | 一次 | 二次 | \(\frac{1}{s}\) |
| (3) | 回転磁界 | 増加させる | 二次 | 一次 | \(s\) |
| (4) | 交番磁界 | 増加させる | 二次 | 一次 | \(\frac{1}{s}\) |
| (5) | 回転磁界 | 打ち消す | 一次 | 二次 | \(s\) |
答え
(5)
解説テキスト リンク
回答解説
\(\fbox{(ア)}\)
三相誘導電動機で固定子巻線に電流が流れると回転磁界が生じます。
回転磁界が生じる原理について説明します。

誘導電動機には、R相、S相、T相の各相のコイルが120°ずつずらして巻かれています。
これらのコイルに三相交流が流れると、R・S・T相の各相が磁界を作り出します。
各相の磁界を合成すると、下図のように回転する磁界が得られます。

このようにして、あたかも固定子の外周沿いに磁石が回転しているかのように磁界の向きが変わる回転磁界が固定子の内部に発生します。
これが、固定子が回転磁界を発生する原理です。
\(\fbox{(イ)}\)
この回転子巻線の電流によって生じる起磁力を \(\fbox{ (イ) }\) 打ち消すように固定子巻線に電流が流れます。
これは、 ファラデーの電磁誘導の法則\(V=-\frac{dΦ}{dt}\)の式で表されるように、磁束が変化すると、磁束の変化を妨げる方向に起電力が生じます。
生じた起電力によって、回転子巻線が生じる起磁力を妨げる方向に電流が流れます。
\(\fbox{(ウ)}\)・\(\fbox{(エ)}\)
変圧器の原理
①一次巻線に励磁電流が流れることで鉄心に磁束が流れる。
②磁束が二次巻線を貫き、二次巻線に誘導起電力が発生する。
③誘導起電力が二次電流を流す。
④二次電流によって生じる起磁力を打ち消すように、一次巻線に一次電流が流れる。
⑤打ち消すように流れる一次電流が、鉄心の磁束を一定に保つ。
誘導機の原理
①固定子巻線に励磁電流が流れることで回転磁界が発生する。
②回転磁界が回転子巻線を貫き、回転子巻線に誘導起電力が発生する。
③誘導起電力が二次電流を流す。
④二次電流によって生じる起磁力を打ち消すように、固定子巻線に一次電流が流れる。
⑤打ち消すように流れる一次電流が、固定子と回転子間のエアギャップの磁束を一定に保つ
以上のような原理から、
固定子巻線は変圧器の \(\fbox{ (ウ) }\) 一次巻線
回転子巻線は変圧器の \(\fbox{ (エ) }\) 二次巻線
に相当することがわかります。
\(\fbox{(オ)}\)
ファラデーの電磁誘導の法則\(V=-\frac{dΦ}{dt}\)から、回転子に発生する誘導起電力は、磁束の変化の速度\(\frac{dΦ}{dt}\)に比例して大きくなります。
この磁束の変化の速度は、固定子の作る回転磁界の回転速度\(N_s\)と、回転子の回転速度\(N\)の差によるものです。
これは、滑り\(s\)と電源周波数\(f\)で、\(f_s=sf\)と表すことができます。
\(f_s[Hz]\)を滑り周波数と呼びます。
この滑り周波数は、滑り\(s\)に比例して変化します。
そのため、回転子に発生する誘導起電力も滑りに比例して変化するため、\(sE_2[V]\)と表されます。
したがって、
回転子が回転しているときは、電動機の滑りを\(s\)とすると、 \(\fbox{ (エ) }\) 二次誘導起電力の大きさは、回転子が停止しているときの \(\fbox{ (オ) }\) s倍となる。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 機械科目問題問3
参考書
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