概要
不平衡Δ結線の三相交流回路の計算問題です。
(a)問題は、電力の計算と力率に関して理解していれば簡単に回答できるでしょう。
(b)問題は、Δ-Y変換の公式を記憶している場合は回答は簡単ですが、不平衡Δ結線であることから、導出して解答する場合は少々手間がかかります。
キーワード
三相交流回路、皮相電力、有効電力、無効電力、力率、Δ-Y変換
問題
図のように、線間電圧200 V の対称三相交流電源に、三相負荷として誘導性リアクタンス X=9Ω の 3 個のコイルと R [Ω]、20Ω、20Ω、60Ω の 4 個の抵抗を接続した回路がある。
端子a,b,c から流入する線電流の大きさは等しいものとする。
この回路について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 線電流の大きさが7.7 A、三相負荷の無効電力が1.6 kvar であるとき、三相負荷の力率の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 0.5 (2) 0.6 (3) 0.7 (4) 0.8 (5) 1.0
(b) a 相に接続されたR の値[Ω]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから
一つ選べ。
(1) 4 (2) 8 (3) 12 (4) 40 (5) 80
答え
(a)(4)
(b)(2)
解説テキスト リンク
回答解説
(a)の解答の流れ
①皮相電力S[V・A]を求める
②三平方の定理から有効電力P[W]を求める
③力率cosθを求める
①皮相電力S[kV・A]を求める
問題文から、線間電圧V=200V、線電流I=7.7Aであるため、皮相電力S[V・A]は、
S=\sqrt{3}VI=\sqrt{3}・200・7.7=2667[V・A]
②三平方の定理から有効電力P[W]を求める
問題文から、無効電力Q=1600[Var]
皮相電力S=2667[V・A]
です。
皮相電力S・有効電力P・無効電力Qの関係は、三平方の定理から
S^2=P^2+Q^2です。
式変形して有効電力P[W]を求めます。
P=\sqrt{S^2-Q^2}=\sqrt{2667^2-1600^2}=2134[W]
③力率cosθを求める
力率cosθは、皮相電力Sと有効電力Pのなす角θから、
\displaystyle cosθ=\frac{P}{S}=\frac{2134}{2667}≒0.8
以上より、(a)問題の答えは(4)0.8 が答えです。
(b)の解答の流れ
①Δ-Y変換してY結線の各抵抗を求める
②流れる電流量が同じ条件から抵抗Rを求める
①Δ-Y変換してY結線の各抵抗を求める

➡

Δ-Y変換の公式は下記の通りです。
R_a=\frac{R_{ab}・R_{ca}}{R_{ab}+R_{bc}+R_{ca}}
R_b=\frac{R_{ab}・R_{bc}}{R_{ab}+R_{bc}+R_{ca}}
R_c=\frac{R_{bc}・R_{ca}}{R_{ab}+R_{bc}+R_{ca}}
R_{ab}=20Ω、R_{bc}=60Ω、R_{ca}=20Ωとすると、
・R_a=\frac{20・20}{20+60+20}=4[Ω]
・R_b=\frac{20・60}{20+60+20}=12[Ω]
・R_c=\frac{60・20}{20+60+20}=12[Ω]
②流れる電流量が同じ条件から抵抗Rを求める

a相の線電流、b相の線電流、c相の線電流が同じであるという条件から、抵抗Rを接続したa相の合成抵抗と、b相・c相の抵抗値は同じであることがわかります。式で示すと、
R+R_a=R_b=R_c=12Ω
したがって、
R=12-R_a=12-4=8Ω
以上より、(b)問題の答えは(2)8Ω が答えです。
【補足】Δ-Y変換を導出
①Δ結線の各端子間抵抗R_{ab}、R_{bc}、R_{ca}を求める
②Y結線の各端子間抵抗R_{ab}、R_{bc}、R_{ca}を求める
③R_{ab}+R_{bc}+R_{ca}を求める
④Y結線の各抵抗R_{a}、R_{b}、R_{c}を求める
①Δ結線の各端子間抵抗R_{ab}、R_{bc}、R_{ca}を求める

\displaystyle R_{ab}=\frac{1}{\frac{1}{20}+\frac{1}{20+60}}=\frac{80}{5}=16[Ω]

\displaystyle R_{bc}=\frac{1}{\frac{1}{60}+\frac{1}{20+20}}=\frac{120}{5}=24[Ω]

\displaystyle R_{ca}=\frac{1}{\frac{1}{20}+\frac{1}{20+60}}=\frac{80}{5}=16[Ω]
②Y結線の各端子間抵抗R_{ab}、R_{bc}、R_{ca}を求める



\displaystyle R_{ab}=R_a+R_b
\displaystyle R_{bc}=R_b+R_c
\displaystyle R_{ca}=R_c+R_a
③R_{ab}+R_{bc}+R_{ca}を求める
Δ結線から、
\displaystyle R_{ab}+R_{bc}+R_{ca}=16+24+16=56Ω …①
Y結線から、
\displaystyle R_{ab}+R_{bc}+R_{ca}=2(R_a+R_b+R_c) …②
①=②なので、
R_a+R_b+R_c=28Ω …③
④Y結線の各抵抗R_{a}、R_{b}、R_{c}を求める
③式から、次のように求められます。
R_a=28-(R_b+R_c)=28-R_{bc}=28-24=4[Ω]
R_b=28-(R_c+R_a)=28-R_{ca}=28-16=12[Ω]
R_c=28-(R_a+R_b)=28-R_{ab}=28-16=12[Ω]
以上で、Δ-Y変換が出来ました。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論科目B問題問15
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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