概要
三相交流回路の問題です。
(a)問題は、ベクトルの合成を考える必要があるため難しいです。
(b)問題は、負荷がY結線であるため比較的簡単に回答できます。ただし、線電圧、相電圧、線電流、相電流に関する基本的な知識を身に着けている必要があります。
キーワード
三相交流回路、ベクトル合成、Y結線
問題
図のように、線間電圧400Vの対称三相交流電源に抵抗R[Ω]と誘導性リアクタンスX[Ω]からなる平衡三相負荷が接続されている。
平衡三相負荷の全消費電力は6kWであり、これに線電流 I=10A が流れている。
電源と負荷との間には、変流比 20:5 の変流器がa相及びc相に挿入され、これらの二次側が交流電流計を通して並列に接続されている。
この回路について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a)交流電流計の指示値[A]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)0 (2)2.50 (3)4.33 (4)5.00 (5)40.0
(b)誘導性リアクタンスXの値[Ω]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)11.5 (2)20.0 (3)23.1 (4)34.6 (5)60.0
答え
(a)(2)
(b)(1)
解説テキスト リンク
回答解説
(a)の解答の流れ
①交流電流計に流れる電流の相を確認する
②\dot{I_a}、\dot{I_c}を求める
③\dot{I_a}+\dot{I_c}を求める
①交流電流計に流れる電流の相を確認する

問題文の条件は、変流器がa相及びc相に挿入され、これらの二次側が交流電流計を通して並列に接続されているです。
変流器は、電流源として考えることができます。重ねの理では、電流源は開放として扱うので、
a相の変流器の電流\dot{I_a}は全て交流電流計に流れ、c相の変流器の電流\dot{I_c}も同様に全て交流電流計に流れます。
したがって、交流電流計には\dot{I_a}+\dot{I_c}が流れます。
②\dot{I_a}、\dot{I_c}を求める
変流器の一次側に流れる電流は I=10A です。
変流比が 20:5 であることから、a相の変流器の二次側に流れる電流I_aを求めると、
I:I_a=20:5
⇔I_a=\frac{5}{20}I=\frac{5}{20}10=2.5A
です。

平衡三相交流であることから、\dot{I_a}、\dot{I_b}、\dot{I_c}は同じ大きさの電流であり、120°位相がずれています。これを複素数平面に図示すると、左図のようになります。
③\dot{I_a}+\dot{I_c}を求める

交流電流計に流れる電流である\dot{I_a}+\dot{I_c}は、ベクトル和は、左図のように-\dot{I_b}となります。
\dot{I_b}が2.5[A]であることから、-\dot{I_b}の電流の大きさも、2.5[A]です。
以上より、(a)問題の答えは(2)2.50 が答えです。
(b)の解答の流れ
①3相分の全消費電力Pと電流Iから抵抗Rを求める
②負荷のインピーダンスZを求める
③三平方の定理から誘導性リアクタンスXを求める
①3相分の全消費電力Pと電流Iから抵抗Rを求める
1相分の消費電力P_1は、P_1=I^2Rであり、
3相分はその3倍なので、P=3I^2Rです。
式変形して、抵抗Rを求めます。
\displaystyle R=\frac{P}{3I^2}=\frac{6000}{3×10^2}=20[Ω]
②負荷のインピーダンスZを求める

相電圧E=\frac{400}{\sqrt{3}}[V]
相電流=線電流I=10[A]です。
負荷のインピーダンスZ[Ω]をオームの法則から求めます。
\displaystyle Z=\frac{E}{I}=23.1[Ω]
③三平方の定理から誘導性リアクタンスXを求める

R、X、Zの関係は、左図の通り直角三角形で表現されるので、
R^2+X^2=Z^2
⇔X=\sqrt{Z^2-R^2}=\sqrt{23.1^2-20^2}≒11.5
以上より、(b)問題の答えは(1)11.5 が答えです。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和3年度 第三種電気主任技術者試験 理論科目B問題問15
参考書
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