概要
真性半導体、拡散電流、ドリフト電流等に関する知識を問う半導体に関する論説問題です。
一般的な内容で、標準的な難しさです。
キーワード
半導体、真性半導体、拡散電流、ドリフト電流
問題
(1)ゲルマニウム(Ge)やインジウムリン(InP)は単元素の半導体であり、シリコン(Si)やガリウムヒ素(GaAs)は化合物半導体である。
(2)半導体内でキャリヤの濃度が一様でない場合、拡散電流の大きさはキャリヤの濃度勾配にほぼ比例する。
(3)真性半導体に不純物を加えるとキャリヤの濃度は変わるが、抵抗率は変化しない。
(4)真性半導体に光を当てたり熱を加えたりしても電子や正孔は発生しない。
(5)半導体に電界を加えると流れる電流はドリフト電流と呼ばれ、その大きさは電界の大きさに反比例する。
答え
(2)
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回答解説
(1)ゲルマニウム(Ge)やインジウムリン(InP)は単元素の半導体であり、シリコン(Si)やガリウムヒ素(GaAs)は化合物半導体である。
単元素半導体は、単一の元素で構成される半導体です。
したがって、問題文中のゲルマニウム(Ge)と、シリコン(Si)は単元素半導体です。
化合物半導体は、2つ以上の元素で構成される半導体です。
したがって、問題文中のインジウムリン(InP)と、ガリウムヒ素(GaAs)は化合物半導体です。
以上より、(1)は間違いであることがわかります。
(2)半導体内でキャリヤの濃度が一様でない場合、拡散電流の大きさはキャリヤの濃度勾配にほぼ比例する。
半導体中のキャリヤ(ホールや電子)の濃度が不均一であるときに、濃度が均一になる方向に向かって濃度が変化します。
濃度が変化する=キャリヤが動くという事です。
そして、キャリヤが動く=電流が流れるということなので、拡散することによって動いたキャリアによって電流が流れます。この電流が拡散電流です。
拡散電流の大きさは、フィックの法則\(J=-qD\frac{dn}{dx}\)の式で表されます。
q:電荷、D:拡散係数、n:キャリア濃度、\(\frac{dn}{dx}\):キャリアの濃度勾配です。
以上より、(2)が正しいことがわかります。
(3)真性半導体に不純物を加えるとキャリヤの濃度は変わるが、抵抗率は変化しない。
ドリフト電流密度\(J\)の式は、次式です。
\(J=q(nμ_n+pμ_p)E=σE=\frac{1}{ρ}E\)
\(n\)は電子の密度、\(p\)は正孔の密度、\(ρ\)は抵抗率です。
この式より、キャリヤの濃度と抵抗率は反比例の関係にあるので、真性半導体に不純物を加えるとキャリヤの濃度は変わり、抵抗率も変化します。
以上より、(3)は間違いであることがわかります。
(4)真性半導体に光を当てたり熱を加えたりしても電子や正孔は発生しない。
真性半導体に光を当てると光電子と呼ばれる電子が発生し、熱を加えると熱電子と呼ばれる電子が発生しますので間違いです。
以上より、(4)は間違いであることがわかります。
(5)半導体に電界を加えると流れる電流はドリフト電流と呼ばれ、その大きさは電界の大きさに反比例する。
半導体に電界を加えると流れる電流はドリフト電流であっています。
しかし、ドリフト電流の大きさは、次式のように電界の大きさに比例しますので間違いです。
\(I=qnμSE\)
\(I\):ドリフト電流の大きさ
\(q\):電気素量
\(n\):キャリアの密度
\(S\):断面積
\(E\):電界の大きさ
以上より、(5)は間違いであることがわかります。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和3年度 第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問11
参考書
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