概要
エミッタ接地のトランジスタ増幅回路の問題です。
トランジスタ増幅回路について、回路の見方やグラフの読み方を理解をしていれば、計算が不要で即座に解けるような問題です。
キーワード
エミッタ接地、トランジスタ増幅回路
問題
図1に示すエミッタ接地トランジスタ増幅回路について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、I_B[μA]、I_C[mA]はそれぞれベースとコレクタの直流電流であり、i_b[μA]、i_c[mA]はそれぞれの信号分である。
また、V_{BE}[V]、V_{CE}[V]はそれぞれベース-エミッタ間とコレクタ-エミッタ間の直流電圧であり、v_{be}[V]、v_{ce}[V]はそれぞれの信号分である。
さらに、v_i[V]、v_o[V]はそれぞれ信号の入力電圧と出力電圧、V_{CC}[V]はバイアス電源の直流電圧、R_1[kΩ]とR_2[kΩ]は抵抗、C_1[F]、C_2[F]はコンデンサである。
なお、R_2=1kΩであり、使用する信号周波数においてC_1、C_2のインピーダンスは無視できるほど十分小さいものとする。
(a)図2はトランジスタの出力特性である。
トランジスタの動作点をV_{CE}=\frac{1}{2}V_{CC}=6Vに選ぶとき、動作点でのベース電流I_Bの値[μA]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)20 (2)25 (3)30 (4)35 (5)40


(b)小問(a)の動作点において、図1の回路に交流信号電圧v_iを入力すると、最大値10μAの交流信号電流i_bと小問(a)の直流電流I_Bの和がベース(B)に流れた。
このとき、図2の出力特性を使って求められる出力交流信号電圧v_o(=v_{ce})の最大値[V]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、動作点付近においてトランジスタの出力特性は直線で近似でき、信号波形はひずまないものとする。
(1)1.0 (2)1.5 (3)2.0 (4)2.5 (5)3.0
答え
(a)(3)
(b)(3)
解説テキスト リンク
回答解説
(a)の解答の流れ
(1) コレクタの直流電流I_C[mA]の式を求める
(2) ベース電流をグラフから求める
(1) コレクタの直流電流I_C[mA]の式を求める

コレクタの直流電流I_Cは
V_{CC}=I_CR_2+V_{CE}
⇔\displaystyle I_C=\frac{V_{CC}-V_{CE}}{R_2}
回路図から、V_{CC}=12V、R_2=1kΩなので、
\displaystyle I_C=\frac{12-V_{CE}}{1000}=12-V_{CE}[mA] …①
(2) ベース電流をグラフから求める

コレクタ電流の①式を、図2のトランジスタの出力特性に当てはめると、左図のようになります。
問題文の条件から、V_{CE}=6VとしてI_Bとの交点を確認すると、I_B=30μAのグラフと交わることがわかります。
以上より、(3)30が答えです。
(b)の解答の流れ
(1) ベース電流の変化分をグラフに反映させる
(1) ベース電流の変化分をグラフに反映させる

最大値10μAの交流信号電流i_bが流れることにより、ベースに流れる電流は、
I_B±i_b=30±10=20~40μA
流れます。
(a)問題で引いたコレクタ電流の直線との交点を求めると、V_{CE}は6Vを中心に、4V~8Vで変動します。
したがって、V_{CE}=6±2Vであることがわかるので、出力交流信号の最大値は、v_o=2Vです。
以上より、(3)2.0が答えです。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和2年度 第三種電気主任技術者試験 理論科目B問題問18
参考書
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