概要
演算増幅器(オペアンプ)について問う問題と、オペアンプを使用した負帰還増幅回路について問う論説問題です。
基礎レベルの内容なので、確実に回答したい問題です。
キーワード
演算増幅器、オペアンプ、負帰還増幅回路、正相増幅回路、逆相増幅回路、比較器、ボルテージホロワ
問題
演算増幅器及びそれを用いた回路に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)演算増幅器には電源が必要である。
(2)演算増幅器の入力インピーダンスは、非常に大きい。
(3)演算増幅器は比較器として用いられることがある。
(4)図1の回路は正相増幅回路、図2の回路は逆相増幅回路である。
(5)図1の回路は、抵抗R_sを0Ωに(短絡)し、抵抗R_Fを∞Ωに(開放)すると、ボルテージホロワである。


答え
(5)
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回答解説
(1)演算増幅器には電源が必要である。

演算増幅器には電源が必要です。
正側電源と、負側電源に直流電圧源を接続することで、演算増幅器は入力信号を増幅することができるようになります。
(2)演算増幅器の入力インピーダンスは、非常に大きい。
演算増幅器の理想的な特性は、下表のとおりです。入力インピーダンスの理想特性は∞[Ω]であるため、入力インピーダンスは、非常に大きいことが求められます。
利得(ゲイン) | ∞[dB] |
遮断周波数(カットオフ周波数) | ∞[Hz] |
入力インピーダンス | ∞[Ω] |
出力インピーダンス | 0[Ω] |
(3)演算増幅器は比較器として用いられることがある。
演算増幅器の二つの入力V_{in+}・V_{in-}の電位差が電圧増幅率A_v[倍]増幅されて出力V_{out}されます。
V_{out}=A_v(V_{in+}-V_{in-})
演算増幅器の理想的な電圧増幅率はA_v=∞です。そのため、
V_{in+}>V_{in-}のときの出力電圧は、正側電源端子電圧V_{CC}
V_{in+}<V_{in-}のときの出力電圧は、負側電源端子電圧V_{EE}
となります。
したがって、演算増幅器は、比較器として用いることができます。
(4)図1の回路は正相増幅回路、図2の回路は逆相増幅回路である。
図1の回路について解析します。

演算増幅器の-側の入力端子の電圧V_{in-}は、出力端子V_{out}から分圧した電圧が供給されますので、
\displaystyle V_{in−}=\frac{R_s}{R_s+R_F}V_{out} …①
イマジナリーショートの考え方から、+側の入力端子の電圧V_{in+}と、-側の入力端子の電圧V_{in-}は同じ電圧となります。
V_{in+}=V_{in-} …②
入力電圧V_{sig}がそのまま+側の入力端子に入力されるので、
V_{in+}=V_{sig} …③
①・②・③式から、出力電圧V_{out}が求まります。
\displaystyle V_{out}=\frac{R_s+R_F}{R_s}V_{sig}=\left( 1+\frac{R_F}{R_s}\right) V_{sig}
以上より、入力電圧V_{sig}と出力電圧V_{out}の符号は+であるため、2つの抵抗R_F、R_sで増幅率が決められる正相増幅回路です。
図2の回路について解析します。

演算増幅器の+側の入力端子の電圧V_{in+}は、接地しているため0Vです。
イマジナリーショートにより、
V_{in−}=V_{in+}=0Vです。
入力電圧信号をV_{sig}とします。V_{sig}からV_{in−}に抵抗R_sを通って流れる電流i_sは、
\displaystyle i_s=\frac{V_{sig}}{R_s} …①
オペアンプの入力インピーダンスの理想特性はZ_{in}=∞なので、V_{in−}からオペアンプ内に電流は流れません。
したがって、V_{sig}から流れ込んできたi_sは、抵抗R_Fを流れて全て出力端子V_{out}に流れます。
抵抗R_Fの両端の端子間電圧は、0V-V_{out}なので、
\displaystyle i_s=\frac{0−V_{out}}{R_F}=\frac{−V_{out}}{R_F} …②
①=②式から、
\displaystyle \frac{V_{sig}}{R_s}=\frac{−V_{out}}{R_F}
⇔ \displaystyle V_{out}=-\frac{R_F}{R_s}V_{sig}
以上より、入力電圧信号V_{sig}と出力電圧V_{out}の符号は-であるため、2つの抵抗R_F、R_sで増幅率が決められる逆相増幅回路です。
(5)図1の回路は、抵抗R_sを0Ωに(短絡)し、抵抗R_Fを∞Ωに(開放)すると、ボルテージホロワである。
選択肢の文章のとおり、R_s=0Ω、R_F=∞Ωとすると、下図のように、ただのオープンループ接続となりますので、ボルテージホロワにはなりません。

➡


ボルテージホロワ回路を作りたいときは、R_s=∞Ω、R_F=0Ωとすることで作ることが出来ます。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和2年度 第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問13
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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