概要
NAND回路の問題です。
NANDはデジタル回路において最も使われる回路であり、様々な応用がされます。
(a)は、NOT回路の動作と等価なNANDの接続方法について問う簡単な問題です。
(b)は、NANDで構成するマルチバイブレータの問題です。
発振回路は、非安定マルチバイブレータ。フリップフロップは、双安定マルチバイブレータの一種です。マルチバイブレータ回路は出力を入力として使うことから、回路の状態を読み解いて整理する必要があるので取っ付きにくく難しい問題です。
キーワード
NOT回路、NAND回路、マルチバイブレータ、発振回路、RSフリップフロップ
問題
NAND ICを用いたパルス回路について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、高電位を「1」、低電位を「0」と表すことにする。
(a)pチャネル及びnチャネルMOSFETを用いて構成された図1の回路と真理値表が同一となるものを、図2のNAND回路の接続(イ)、(ロ)、(ハ)から選び、全て列挙したものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)イ (2)ロ (3)ハ (4)イ、ロ (5)イ、ハ
(b)図3の三つの回路はいずれもマルチバイブレータの一種であり、これらの回路図においてNAND ICの電源及び接地端子は省略している。
同図(ニ)、(ホ)、(ヘ)の入力の数がそれぞれ0、1、2であることに注意して、これら三つの回路と次の二つの性質を正しく対応づけたものの組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
性質Ⅰ:出力端子からパルスが連続的に発生し、ディジタル回路の中で発振器として用いることができる。
性質Ⅱ:「0」や「1」を記憶する機能をもち、フリップフロップの構成にも用いられる。

性質Ⅰ | 性質Ⅱ | |
(1) | ニ | ホ |
(2) | ニ | ヘ |
(3) | ホ | ニ |
(4) | ホ | ヘ |
(5) | ヘ | ホ |
答え
(a) 5
(b) 2
解説テキスト リンク
回答解説
(a)解答の流れ
① 図1の回路を解析する
② イの回路を解析する
③ ロの回路を解析する
④ ハの回路を解析する
① 図1の回路を解析する

入力電圧が0のとき、PMOSFETが導通して電源と同じ電圧になるため、出力信号は1になります。
入力電圧が1のとき、NMOSFETが導通してGNDと同じ電圧になるため、出力信号は0になります。
つまり、図1の回路は、NOT回路と同じ動作をします。
整理すると、真理値表は次の通りとなります。
入力 | 出力 |
0 | 1 |
1 | 0 |
② イの回路を解析する

NANDの両端子に同じ入力が接続されていますので、入力は(0,0)・(1,1)の2パターンです。
NANDの真理値表に示すと下表の黄背景のセルが(イ)の回路の入出力になります。
したがって、図1と同じ真理値表となります。
入力 | 出力 | |
端子A | 端子B | |
0 | 0 | 1 |
0 | 1 | 1 |
1 | 0 | 1 |
1 | 1 | 0 |
③ ロの回路を解析する

NANDの端子Bに「0」が入力されていますので、入力は(0,0)・(1,0)の2パターンです。
NANDの真理値表に示すと下表の黄背景のセルが(ロ)の回路の入出力になります。
したがって、図1とは異なる真理値表となります。
入力 | 出力 | |
端子A | 端子B | |
0 | 0 | 1 |
0 | 1 | 1 |
1 | 0 | 1 |
1 | 1 | 0 |
④ ハの回路を解析する

NANDの端子Bに「1」が入力されていますので、入力は(0,1)・(1,1)の2パターンです。
NANDの真理値表に示すと下表の黄背景のセルが(ハ)の回路の入出力になります。
したがって、図1と同じ真理値表となります。
入力 | 出力 | |
端子A | 端子B | |
0 | 0 | 1 |
0 | 1 | 1 |
1 | 0 | 1 |
1 | 1 | 0 |
以上より、(5)(イ)、(ハ)が図1と同じ真理値表となります。
(b)解答の流れ
① (ニ)の回路を解析する
② (ホ)の回路を解析する
③ (ヘ)の回路を解析する
① (ニ)の回路を解析する
(ニ)の回路は、非安定マルチバイブレータの回路です。
この回路は、次の(1)~(4)を順々に繰り返すことで、出力端子からパルスが連続的に発生し、ディジタル回路の中で発振器として用いることができます。
したがって、性質Ⅰは、(ニ)です。

(1)NOT2の入力が0、NOT2の出力が1
⇨

(2)NOT2の出力が1で、コンデンサCに電流\(i[A]\)が流れる
⇧
⇩

(4)コンデンサCから、NOT2の出力側に電流\(i[A]\)が流れる
⇦

(3)NOT2の入力が1、NOT2の出力が0

回路中の\(v[V]\)と、\(V_{out}\)は、左図のように変化します。
② (ホ)の回路を解析する

常に1を出力するだけの回路です。
③ (ヘ)の回路を解析する
(ヘ)の回路は、SRフリップフロップ回路です。
この回路は、「0」や「1」を記憶する機能をもちます。
真理値表は、次の通りです。
\(S\) | \(R\) | \(Q\) | \(\overline{Q}\) |
0 | 0 | 保持 | 保持 |
0 | 1 | 0 | 1 |
1 | 0 | 1 | 0 |
1 | 1 | 禁止 | 禁止 |
入力が無いとき。つまり、\(S=0,R=0\)のとき、出力\(Q,\overline{Q}\)の直前の出力を保持します。
この保持する動作が記憶する機能の原理です。
したがって、性質Ⅱは、(ヘ)です。

⇨

以上より、(2)(ニ)、(ヘ)が答えです。
出典元
一般財団法人電気技術者試験センター (https://www.shiken.or.jp/index.html)
令和1年度 第三種電気主任技術者試験 理論科目B問題問17
参考書
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