概要
レーザーダイオード(LD:Laser Diode)は、ダイオードに順方向電流を流すことでレーザーを発生させることができる素子です。
LASERは、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの文字をとったものです。
意味は、誘導放出(by Stimulated Emission)による、光(Light)の増幅(Amplification)の放射(of Radiation)です。
レーザーは、光通信、データストレージ(BD等)、距離測定、医療、レーザーポインター等々様々な用途で使用されます。
発光原理
構造
P型半導体とN型半導体の間に異種の半導体を挟んだ構造をしており、この構造をダブルヘテロ接合と呼びます。

P型・N型半導体に挟まれた半導体は「活性層」と呼ばれ、キャリア(電子・正孔)が再結合して発光する層です。
活性層を挟む相は「クラッド層」と呼ばれ、光を活性層内に閉じ込める役割があります。
光の放出原理
①キャリアの再結合

レーザーダイオードに順方向接続(P型:プラス、N型:マイナス)すると、P型から活性層に向かって正孔が流れ、N型から活性層に向かって電子が流れ込みます。
流れ込んだ正孔と電子は、活性層で再結合します。
②光の放出

N型クラッド層から流れ込む電子は、高いエネルギー準位\(E_2\)を持っていますが、再結合が起こるとそのエネルギーは失われ、低いエネルギー準位\(E_1\)へと移ります。
このときに、そのエネルギー差\(ΔE=E_2-E_1\)が光として放出されます。この光を放出する現象を自然放出といいます。
自然放出はLEDの光の放出原理でもあります。
放出された光は\(hν=E_2-E_1\)のエネルギーを持っています。
\(ν[s^{-1}]\)は光の振動数です。
③誘導放出(レーザーダイオード(LD)の放出原理)
特定の条件が揃った光を照射することによって、光の放出を誘導することができます。これを誘導放出といいます。
光の放出を誘導する条件は、\(hν=E_2-E_1\) を満足する波長の光を照射することです。

レーザーダイオード内では、再結合が起きて\(hν\)のエネルギーの光が発生すると、その光が切っ掛けとなって、別の電子もどんどん再結合されていきます。
誘導放出によって放射される光もこの条件を満たすため、入射光と放射光は同波長、同位相となります。
④光の取り出し

活性層の端面は、活性層内で発生した光を反射します。
反射した光が誘導放出されることで光が増幅していきます。
増幅した光の一部を取り出すことで、位相の揃った光を放出できます。
LDとLEDの違い
レーザーダイオード(LD)と発光ダイオード(LED)は、どちらも電気エネルギーを光エネルギーに変換することで発行する半導体素子です。
LDとLEDの違いの主要因は光の発生方法にあります。
LDが誘導放出に対し、LEDは自然放出です。
この違いにより、放出される光の特徴に差が発生します。
LDの光はスペクトルが狭く、位相が揃っており、指向性が高いです。
LEDの光はスペクトルが広く、位相が不揃いで、指向性が低いです。
レーザー | LED | |
---|---|---|
光の発生方法 | 誘導放出 | 自然放出 |
スペクトル幅 | ![]() 狭い(数nm程度) | ![]() 広い(数十nm程度) |
位相 | 光の位相が揃っている (コヒーレント) | 光の位相はバラバラ (インコヒーレント) |
指向性 | 指向性が高い ┣ 局所的に光が届く ┗ 遠くまで光が届く | 指向性が低い ┣ 広範囲に光が広がる ┗ 遠くまでは光が届かない |
用途 | 光通信伝送 データストレージ(BD等) 距離測定 医療 レーザーポインター等々 | 照明 ディスプレイ 表示器 自動車のライト |
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