難易度
交流波形の瞬時値に関する問題です。
高校数学の基礎問題級のレベルですが、三角関数のラジアン表記に慣れていないと少々手間取ります。
手間取ったとしても、この問題は確実に解きたい問題です。
問題
ある回路に、i=4\sqrt{2}sin120\pi t[A]の電流が流れている。
この電流の瞬時値が、t=0[s]以降に初めて4[A]となるのは、時刻t=t_1[s]である。
t_1[s]の値として、正しいのは次のうちどれか。
(1)\displaystyle \frac{1}{480} (2)\displaystyle \frac{1}{360} (3)\displaystyle \frac{1}{240} (4)\displaystyle \frac{1}{160} (5)\displaystyle \frac{1}{120}
回答
答え
(1)
回答方針
①i=4[A]を、問題の式に代入する。
②4[A]のときのsin120\pi t_1の値がわかる。
③このときのt_1を計算する。
要点整理
ラジアンについて
1ラジアンは、円の半径の長さに等しい弧に対する中心角の大きさです。
単位は[rad]であり、ラジアンで表記する方法を、弧度法と呼びます。
文字で書いてもよくわからないので、図にすると、下の図となります。

度数法\theta[°]、弧度法ωt[rad]、対応するsin ωt、tan ωtを表にまとめると下記の通りです。
\theta[°] | ωt[rad] | sinωt | tanωt |
0 | 0 | 0 | 0 |
30 | \displaystyle \frac{\pi}{6} | \displaystyle \frac{1}{2} | \displaystyle \frac{1}{\sqrt{3}} |
45 | \displaystyle \frac{\pi}{4} | \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}} | 1 |
60 | \displaystyle \frac{\pi}{3} | \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} | \sqrt{3} |
90 | \displaystyle \frac{\pi}{2} | 0 | \infty |
180 | \pi | 0 | 0 |
360 | 2\pi | 0 | 0 |
瞬時値i(t)に関連するパラメータについて

最大値 I_mは、基準値 i(t)=0[A]の時から一番大きな値を最大値と呼びます。
「電流の大きさ」や、「電圧の大きさ」と呼ぶような時は、最大値を指します。
位相差 \thetaは、基準となる位相に対するズレの事です。
回路の負荷に、コイルやコンデンサ等の負荷があると、電圧と電流の間に位相差が発生します。
周期 T[s]は、電圧・電流の波形が1回上下して戻るまでの時間です。
周波数 f[Hz]は、電圧・電流の波形が1秒間に上下を繰り返す回数です。
周期とは逆数の関係にあり、\displaystyle T=\frac{1}{f}の式で表されます。
角速度 ω[rad/s]は、1秒間辺りに回転した速度のことです。
周波数とは、ω=2\pi fの関係があり、頻繁に使用します。
実効値 I_{rms}
交流は電圧も電流も常に変化し続けるため、供給される電力を瞬時値を使って計算することは大変です。また、単純に平均値を取っても、周期的な正弦波なので0になります。
そのため、ある電気抵抗に交流を加えた場合の1周期における平均電力と、同じ抵抗に直流を加えた場合の電力が等しくなったとき、直流と同じ値となるように定義したものが実効値です。
\displaystyle I_{rms}=\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^{T}i(t)^2dt}
ぱっと見複雑な式ですが、意味を分解していけば理解も簡単です。
1周期分の瞬時値を足して、周期Tで割れば、定義通りに直流と同じ値を取り出せそうです。
しかし、交流の場合は、プラス・マイナスを繰り返すので単純に足すだけでは0になってしまいます。
それを解決するため、瞬時値を二乗してi(t)^2とします。
次に、1周期分の瞬時値を足すため、1周期分の積分をして、周期Tで割ります。
\displaystyle \frac{1}{T}\int_0^{T}i(t)^2dt
最後に、瞬時値を二乗してから積分計算をしたので、√することで元に戻します。
\displaystyle I_{rms}=\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^{T}i(t)^2dt}
これで完成です。
要点整理の適用
i=4\sqrt{2}sin120\pi t_1[A]の式に、i=4[A]を、問題の式に代入します。
4=4\sqrt{2}sin120\pi t_1[A]
⇔\displaystyle sin120\pi t_1=\frac{1}{\sqrt{2}}
\displaystyle sin120\pi t_1=\frac{1}{\sqrt{2}}となるのは、\displaystyle 120\pi t_1 =\frac{\pi}{4}のときです。
\displaystyle t_1 =\frac{\pi}{4}・\frac{1}{120\pi}=\frac{1}{480}
以上より、\displaystyle t_1 =\frac{1}{480}ですので、答えは(1)です。
出典元
平成21年度第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問9
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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