【電験三種:理論】平成21年度 問16

電験三種平成21年度理論問16 三相交流回路

難易度

三相交流のY-Δ変換の問題で、解き方を知っていないと難しい問題です。

・Y-Δ変換
・線間電圧、相電圧
・線電流、相電流
この3つについて理解していることが求められます。

問題

平衡三相回路について、次の(a)及び(b)に答えよ。

(a)図1のように、抵抗\(R[Ω]\)が接続された平衡三相負荷に線間電圧\(E[V]\)の対称三相交流電源を接続した。このとき、図1に示す電流\(\dot{I}_1[A]\)の大きさの値を表す式として、正しいのは次のうちどれか。

(1) \(\displaystyle \frac{E}{4\sqrt{3}R}\) (2) \(\displaystyle \frac{E}{4R}\) (3) \(\displaystyle \frac{\sqrt{3}E}{4R}\) (4) \(\displaystyle \frac{\sqrt{3}E}{R}\) (5) \(\displaystyle \frac{4E}{\sqrt{3}R}\) 

(b)次に、図1を図2にように、抵抗\(R[Ω]\)をインピーダンス\(\dot{Z}=12+j9[Ω]\)の負荷に置き換え、線間電圧\(E=200[V]\)とした。このとき、図2に示す電流\(\dot{I}_2[A]\)の大きさの値として、最も近いのは次のうちどれか。

(1) 2.5 (2) 3.3 (3) 4.4 (4) 5.8 (5) 7.7 


答え

問(a) (3)
問(b) (2)

回答方針

(a)
①Δ-Y変換をして、Δ結線をY結線の回路に書き換える。
②線間電圧から、相電圧を求める。
③相電圧とY結線回路から線電流を求める。

(b)
①(a)で求めた線電流の式の\(R\)を\(\dot{Z}\)に書き換えて線電流の大きさを求める。
②線電流から、相電流を求める。

要点整理 問(a)

・Y-Δ変換
・線間電圧と相電圧
の2つについて整理します。

Y-Δ変換について

三相交流を扱う際、Δ結線では扱い難い場合、Y結線では扱い難い場合があります。
その時に、Y-Δ変換をしてΔ結線をY結線に変換する、逆にY結線をΔ結線に変換することで、問題を解決しやすくなります。

Δ結線の抵抗を\(R_\Delta\)
Y結線の抵抗を\(R_Y\)
とし、AB間、BC間、CA間の抵抗が全て同じ抵抗値の物が接続されているとします。

まずは、Δ結線のAB間の抵抗について検討します。
Δ結線のAB間の抵抗を\(R_{AB}\)としたとき、

\(\displaystyle \frac{1}{R_{AB}}=\frac{1}{R_\Delta}+\frac{1}{2R_\Delta}=\frac{3}{2R_\Delta}\)

⇔\(\displaystyle R_{AB}=\frac{2R_\Delta}{3}\) ……①

次に、Y結線のAB間の抵抗について検討します。
Y結線のAB間の抵抗も同じく\(R_{AB}\)とすると、
\(R_{AB}=2R_Y\) ……②
となります。

最後に、①=②より、
\(\displaystyle \frac{2R_\Delta}{3}=2R_Y\)
したがって、
\(R_\Delta=3R_Y\)
\(\displaystyle R_Y=\frac{1}{3}R_\Delta\)
の関係が導き出せます。
注意点としては、全ての抵抗が同じ抵抗という前提の元、簡略化しています。
全部の抵抗値が違う場合のY-Δ変換の公式は、

\(\displaystyle R_{YA}=\frac{R_{\Delta B}R_{\Delta C}}{R_{\Delta A}+R_{\Delta B}+R_{\Delta C}}\)

\(\displaystyle R_{YB}=\frac{R_{\Delta C}R_{\Delta A}}{R_{\Delta A}+R_{\Delta B}+R_{\Delta C}}\)

\(\displaystyle R_{YC}=\frac{R_{\Delta A}R_{\Delta B}}{R_{\Delta A}+R_{\Delta B}+R_{\Delta C}}\)

です。導出するのは手間なので、ここでは割愛します。\(R_{\Delta A}=R_{\Delta B}=R_{\Delta C}=R_{\Delta }\)とした場合、

\(\displaystyle R_Y=\frac{1}{3}R_\Delta\)

が成り立つことがわかると思います。
Y結線の線間電圧と相電圧について

三相交流の回路の問題において、始めて出てくる線間電圧と、相電圧という概念は、理解できるまで非常にわかりづらいです。
三相交流は、変圧器、電動機等の機械において絶対に必要になるため、線間電圧・相電圧について理解しないと、機械の理解もできません。

Δ結線では、線間電圧と、相電圧は同じですが、
Y結線では、線間電圧は、相電圧に比べて
・\(\sqrt{3}\)倍の大きさである。
・位相が30°進んでいる。

この2つについて理解していってください。

三相回路のY結線では、
各相-中性点間の電圧である相電圧
各相間の電圧である線間電圧
の二つの電圧があります。
各相の相電圧を\(V_A\)、\(V_B\)、\(V_C\)とします。
このとき、各相間には、120°の位相差があり、ベクトル図として表すと、左図のようになります。

線間電圧\(V_{AB}\)と、相電圧\(V_A\)、\(V_B\)には
\(V_{AB}=V_A-V_B\)
の関係があります。

左図のようにベクトル合成をすると、
\(V_{AB}=2×\frac{\sqrt{3}}{2}V_A=\sqrt{3}V_A\)
となります。
位相も左図の通り、30°進んでいます。

整理すると、
①線間電圧\(V_{AB}\)の大きさは、相電圧\(V_A\)の\(\sqrt{3}\)倍です。
②線間電圧\(V_{AB}\)の位相は、相電圧\(V_A\)よりも30°進んでいます。

各相の相電圧\(V_A\)、\(V_B\)、\(V_C\)と、
各線間電圧を\(V_{AB}\)、\(V_{BC}\)、\(V_{CA}\)の関係に関しても、同様の事が言えます。

要点整理 問(b)

・線電流と相電流について整理します。

Δ結線の線電流と相電流について

線間電圧と、相電圧について要点整理しましたが、ここでは線電流と、相電流について要点整理します。

Y結線では、線電流と、相電流は同じですが、
Δ結線では、線電流は、相電流に比べて
・\(\sqrt{3}\)倍の大きさである。
・位相が30°遅れている。

この2つについて理解していってください。

三相回路のΔ結線では、
各相に流れる相電流
各線に流れる線電流
の二つの電流があります。

キルヒホッフの電流則から
\(I_A=I_{AB}-I_{CA}\)
\(I_B=I_{BC}-I_{AB}\)
\(I_C=I_{CA}-I_{BC}\)
の関係があります。
各相の相電流を\(I_{AB}\)、\(I_{BC}\)、\(I_{CA}\)とします。
このとき、各相電流間には、120°の位相差があり、ベクトル図として表すと、左図のようになります。

線電流\(I_A\)と、相電流\(I_{AB}\)、\(I_{BC}\)を、左図のようにベクトル合成をすると、
\(I_A=2×\frac{\sqrt{3}}{2}I_{AB}=\sqrt{3}I_{AB}\)
となります。
位相も左図の通り、線電流が30°遅れています。

整理すると、
①線電流\(I_A\)の大きさは、相電流\(I_{AB}\)の\(\sqrt{3}\)倍です。
②線電流\(I_A\)の位相は、相電流\(I_{AB}\)よりも30°遅れています。


各相の相電流\(I_{AB}\)、\(I_{BC}\)、\(I_{CA}\)と、
各線電流\(I_A\)、\(I_B\)、\(I_C\)の関係に関しても、同様の事が言えます。
要点整理の適用 問(a)

要点整理で書き出したΔ-Y変換を行って回答します。

左図のΔ結線回路に、Δ-Y変換を行います。

要点整理で記載したΔ-Y変換の式は、
\(\displaystyle R_Y=\frac{1}{3}R_\Delta\)
なので、
問題の回路にΔ-Y変換をすると、\(\displaystyle \frac{1}{3}R\)となります。


線間電圧は\(E[V]\)なので、相電圧は\(\frac{E}{\sqrt{3}}[V]\)です。

\(\displaystyle \dot{I}_1=\frac{\frac{E}{\sqrt{3}}}{\frac{4}{3}R}=\frac{3E}{4\sqrt{3}R}=\frac{\sqrt{3}E}{4R}\)
したがって、
\(\displaystyle \dot{I}_1=\frac{\sqrt{3}E}{4R}\)
が答えとなります。
要点整理の適用 問(b)

問(a)で、線電流が\(\displaystyle \dot{I}_1=\frac{\sqrt{3}E}{4R}\)として求まりました。
回路中の\(R\)を\(\dot{Z}\)に置き換えると、

\(\displaystyle \dot{I}_1=\frac{\sqrt{3}E}{4\dot{Z}}=\frac{200\sqrt{3}}{4(12+j9)}\)

\(\dot{I}_1\)の大きさ\(\displaystyle |\dot{I}_1|\)は、

\(\displaystyle |\dot{I}_1|=\frac{200\sqrt{3}}{4\sqrt{12^2+9^2}}=3.33\sqrt{3}[A]\)

です。
線電流\(\dot{I}_1\)と相電流\(\dot{I}_2\)の関係は、
\(\displaystyle \dot{I}_2=\frac{\dot{I}_1}{\sqrt{3}}\)なので、

\(\displaystyle |\dot{I}_2|=\frac{|\dot{I}_1|}{\sqrt{3}}=3.33[A]\)

以上より、
\(|\dot{I}_2|=3.33[A]\)が答えとなります。

出典元

平成21年度第三種電気主任技術者試験 理論科目B問題問16

参考書

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