難易度
三相交流のY-Δ変換の問題で、解き方を知っていないと難しい問題です。
・Y-Δ変換
・線間電圧、相電圧
・線電流、相電流
この3つについて理解していることが求められます。
問題
平衡三相回路について、次の(a)及び(b)に答えよ。
(a)図1のように、抵抗\(R[Ω]\)が接続された平衡三相負荷に線間電圧\(E[V]\)の対称三相交流電源を接続した。このとき、図1に示す電流\(\dot{I}_1[A]\)の大きさの値を表す式として、正しいのは次のうちどれか。
(1) \(\displaystyle \frac{E}{4\sqrt{3}R}\) | (2) \(\displaystyle \frac{E}{4R}\) | (3) \(\displaystyle \frac{\sqrt{3}E}{4R}\) | (4) \(\displaystyle \frac{\sqrt{3}E}{R}\) | (5) \(\displaystyle \frac{4E}{\sqrt{3}R}\) |
(b)次に、図1を図2にように、抵抗\(R[Ω]\)をインピーダンス\(\dot{Z}=12+j9[Ω]\)の負荷に置き換え、線間電圧\(E=200[V]\)とした。このとき、図2に示す電流\(\dot{I}_2[A]\)の大きさの値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1) 2.5 | (2) 3.3 | (3) 4.4 | (4) 5.8 | (5) 7.7 |
答え
問(a) (3)
問(b) (2)
回答方針
(a)
①Δ-Y変換をして、Δ結線をY結線の回路に書き換える。
②線間電圧から、相電圧を求める。
③相電圧とY結線回路から線電流を求める。
(b)
①(a)で求めた線電流の式の\(R\)を\(\dot{Z}\)に書き換えて線電流の大きさを求める。
②線電流から、相電流を求める。
要点整理 問(a)
・Y-Δ変換
・線間電圧と相電圧
の2つについて整理します。
Y-Δ変換について
三相交流を扱う際、Δ結線では扱い難い場合、Y結線では扱い難い場合があります。
その時に、Y-Δ変換をしてΔ結線をY結線に変換する、逆にY結線をΔ結線に変換することで、問題を解決しやすくなります。
Δ結線の抵抗を\(R_\Delta\) Y結線の抵抗を\(R_Y\) とし、AB間、BC間、CA間の抵抗が全て同じ抵抗値の物が接続されているとします。 | |
まずは、Δ結線のAB間の抵抗について検討します。 Δ結線のAB間の抵抗を\(R_{AB}\)としたとき、 \(\displaystyle \frac{1}{R_{AB}}=\frac{1}{R_\Delta}+\frac{1}{2R_\Delta}=\frac{3}{2R_\Delta}\) ⇔\(\displaystyle R_{AB}=\frac{2R_\Delta}{3}\) ……① | |
次に、Y結線のAB間の抵抗について検討します。 Y結線のAB間の抵抗も同じく\(R_{AB}\)とすると、 \(R_{AB}=2R_Y\) ……② となります。 最後に、①=②より、 \(\displaystyle \frac{2R_\Delta}{3}=2R_Y\) したがって、 \(R_\Delta=3R_Y\) ⇔\(\displaystyle R_Y=\frac{1}{3}R_\Delta\) の関係が導き出せます。 注意点としては、全ての抵抗が同じ抵抗という前提の元、簡略化しています。 | |
全部の抵抗値が違う場合のY-Δ変換の公式は、 \(\displaystyle R_{YA}=\frac{R_{\Delta B}R_{\Delta C}}{R_{\Delta A}+R_{\Delta B}+R_{\Delta C}}\) \(\displaystyle R_{YB}=\frac{R_{\Delta C}R_{\Delta A}}{R_{\Delta A}+R_{\Delta B}+R_{\Delta C}}\) \(\displaystyle R_{YC}=\frac{R_{\Delta A}R_{\Delta B}}{R_{\Delta A}+R_{\Delta B}+R_{\Delta C}}\) です。導出するのは手間なので、ここでは割愛します。\(R_{\Delta A}=R_{\Delta B}=R_{\Delta C}=R_{\Delta }\)とした場合、 \(\displaystyle R_Y=\frac{1}{3}R_\Delta\) が成り立つことがわかると思います。 |
Y結線の線間電圧と相電圧について
三相交流の回路の問題において、始めて出てくる線間電圧と、相電圧という概念は、理解できるまで非常にわかりづらいです。
三相交流は、変圧器、電動機等の機械において絶対に必要になるため、線間電圧・相電圧について理解しないと、機械の理解もできません。
Δ結線では、線間電圧と、相電圧は同じですが、
Y結線では、線間電圧は、相電圧に比べて
・\(\sqrt{3}\)倍の大きさである。
・位相が30°進んでいる。
この2つについて理解していってください。
三相回路のY結線では、 各相-中性点間の電圧である相電圧 各相間の電圧である線間電圧 の二つの電圧があります。 | |
各相の相電圧を\(V_A\)、\(V_B\)、\(V_C\)とします。 このとき、各相間には、120°の位相差があり、ベクトル図として表すと、左図のようになります。 | |
線間電圧\(V_{AB}\)と、相電圧\(V_A\)、\(V_B\)には \(V_{AB}=V_A-V_B\) の関係があります。 左図のようにベクトル合成をすると、 \(V_{AB}=2×\frac{\sqrt{3}}{2}V_A=\sqrt{3}V_A\) となります。 位相も左図の通り、30°進んでいます。 整理すると、 ①線間電圧\(V_{AB}\)の大きさは、相電圧\(V_A\)の\(\sqrt{3}\)倍です。 ②線間電圧\(V_{AB}\)の位相は、相電圧\(V_A\)よりも30°進んでいます。 各相の相電圧\(V_A\)、\(V_B\)、\(V_C\)と、 各線間電圧を\(V_{AB}\)、\(V_{BC}\)、\(V_{CA}\)の関係に関しても、同様の事が言えます。 |
要点整理 問(b)
・線電流と相電流について整理します。
Δ結線の線電流と相電流について
線間電圧と、相電圧について要点整理しましたが、ここでは線電流と、相電流について要点整理します。
Y結線では、線電流と、相電流は同じですが、
Δ結線では、線電流は、相電流に比べて
・\(\sqrt{3}\)倍の大きさである。
・位相が30°遅れている。
この2つについて理解していってください。
三相回路のΔ結線では、 各相に流れる相電流 各線に流れる線電流 の二つの電流があります。 キルヒホッフの電流則から \(I_A=I_{AB}-I_{CA}\) \(I_B=I_{BC}-I_{AB}\) \(I_C=I_{CA}-I_{BC}\) の関係があります。 | |
各相の相電流を\(I_{AB}\)、\(I_{BC}\)、\(I_{CA}\)とします。 このとき、各相電流間には、120°の位相差があり、ベクトル図として表すと、左図のようになります。 | |
線電流\(I_A\)と、相電流\(I_{AB}\)、\(I_{BC}\)を、左図のようにベクトル合成をすると、 \(I_A=2×\frac{\sqrt{3}}{2}I_{AB}=\sqrt{3}I_{AB}\) となります。 位相も左図の通り、線電流が30°遅れています。 整理すると、 ①線電流\(I_A\)の大きさは、相電流\(I_{AB}\)の\(\sqrt{3}\)倍です。 ②線電流\(I_A\)の位相は、相電流\(I_{AB}\)よりも30°遅れています。 各相の相電流\(I_{AB}\)、\(I_{BC}\)、\(I_{CA}\)と、 各線電流\(I_A\)、\(I_B\)、\(I_C\)の関係に関しても、同様の事が言えます。 |
要点整理の適用 問(a)
要点整理で書き出したΔ-Y変換を行って回答します。
左図のΔ結線回路に、Δ-Y変換を行います。 | |
要点整理で記載したΔ-Y変換の式は、 \(\displaystyle R_Y=\frac{1}{3}R_\Delta\) なので、 問題の回路にΔ-Y変換をすると、\(\displaystyle \frac{1}{3}R\)となります。 | |
線間電圧は\(E[V]\)なので、相電圧は\(\frac{E}{\sqrt{3}}[V]\)です。 \(\displaystyle \dot{I}_1=\frac{\frac{E}{\sqrt{3}}}{\frac{4}{3}R}=\frac{3E}{4\sqrt{3}R}=\frac{\sqrt{3}E}{4R}\) したがって、 \(\displaystyle \dot{I}_1=\frac{\sqrt{3}E}{4R}\) が答えとなります。 |
要点整理の適用 問(b)
問(a)で、線電流が\(\displaystyle \dot{I}_1=\frac{\sqrt{3}E}{4R}\)として求まりました。
回路中の\(R\)を\(\dot{Z}\)に置き換えると、
\(\displaystyle \dot{I}_1=\frac{\sqrt{3}E}{4\dot{Z}}=\frac{200\sqrt{3}}{4(12+j9)}\)
\(\dot{I}_1\)の大きさ\(\displaystyle |\dot{I}_1|\)は、
\(\displaystyle |\dot{I}_1|=\frac{200\sqrt{3}}{4\sqrt{12^2+9^2}}=3.33\sqrt{3}[A]\)
です。
線電流\(\dot{I}_1\)と相電流\(\dot{I}_2\)の関係は、
\(\displaystyle \dot{I}_2=\frac{\dot{I}_1}{\sqrt{3}}\)なので、
\(\displaystyle |\dot{I}_2|=\frac{|\dot{I}_1|}{\sqrt{3}}=3.33[A]\)
以上より、
\(|\dot{I}_2|=3.33[A]\)が答えとなります。
出典元
平成21年度第三種電気主任技術者試験 理論科目B問題問16
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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