難易度
直流電流計と、交流電流計の動作原理についての理解が求められる難問です。
問題
可動コイル形直流電流計A_1と可動鉄片形交流電流計A_2の2台の電流計がある。それぞれの電流計の性質を比較するために次のような実験を行った。
図1のようにA_1とA_2を抵抗100[Ω]と電圧10[V]の直流電源の回路に接続したとき、A_1の指示は100[mA]、A_2の指示は ア [mA]であった。
また、図2のように、周波数50[Hz]、電圧100[V]の交流電源と抵抗500[Ω]にA_1とA_2を接続したとき、A_1の指示は イ [mA]、A_2の指示は200[mA]であった。
ただし、A_1とA_2の内部抵抗はどちらも無視できるものであった。
上記の記述中の空白箇所(ア)及び(イ)に当てはまる最も近い値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

(ア) | (イ) | |
(1) | 0 | 0 |
(2) | 141 | 282 |
(3) | 100 | 0 |
(4) | 0 | 141 |
(5) | 100 | 141 |
回答
答え
(3)
回答方針
図1は100[mA]、図2は200[mA]流れる事は、問題図からも、問題文からもわかります。
問題は、
・可動コイル形直流電流計に交流電流を流した時どう動くか
・可動鉄片形交流電流計に直流電流を流した時どう動くか
この2点に関して、動作原理を理解していれば回答できますが、わからないと感に頼ることになるでしょう。
要点整理
可動コイル形直流電流計の動作原理について整理します。
可動コイル形直流電流計の構成 | 可動コイル形直流電流計の構造は左図の通りです。 可動コイルに渦巻バネ、指示針がついています。 可動コイルの挟むように、永久磁石を置き、可動コイルに磁界を与えるようにしています。 |
![]() 直流電流計に働く力 | 永久磁石が作り出す磁界の中に置かれた可動コイルに電流を流すと、フレミング左手の法則から、可動コイルを回転させる力が発生します。 コイルの回転によって、取り付けられた指示針も回転します。 逆方向に回転させる渦巻バネの力と釣り合う所が、直流電源が流す電流値となります。 このような動作原理から、直流の場合は一定の力が発生するため、指示針を回転させることができます。 しかし、交流の場合は定期的に電流の流れる向きが変わります。そのため、電流の平均値は0[A]となりますので、指示針は振れません。 |
可動鉄片形交流電流計の動作原理について整理します。
![]() 可動鉄片形交流電流計の構造 | 可動鉄片形交流電流計の構造は左図の通りです。 固定コイルの中に、可動鉄片と渦巻バネがついております。この二つで指示計が付いた軸を回転させることで、電流値を示します。 |
![]() 電流が流れたときの2つの鉄片の磁化の図 | 電流が流れると、固定コイルに電流が流れます。 流れた電流は、固定コイル内に磁界を生み出して、固定鉄片と、可動鉄片を磁化させます。 固定コイルが生み出す同じ磁束を受けて磁化した2つの鉄片は、同じ極性になります。 つまり、電流が流れる方向によらず、固定鉄片と可動鉄片は反発するように磁化します。 |
![]() 指示計の回転する力の図 | 同じ極性の磁石は反発しあうため、可動鉄片は、固定鉄片から離れる方向に力を生み出します。 その結果、左図では時計回りに回転させる力となります。 中心軸に取り付けられた渦巻バネは反時計回りに回転させる力を出しますので、この2つの力が釣り合う点が、回路に流れる電流値です。 |
要点整理の適用
要点整理で書き出した内容を、各回答に適用します。

まず初めに、図1に流れる電流は、問題文からI=100[mA]です。
交流電流計A_2は、可動鉄片形交流電流計です。
要点整理で整理した通り、可動鉄片形交流電流計は流れる電流の向きによらずに動作をしますので、A_2は何かしらの数字を示します。
次に、交流電流計を交流に接続した場合、実効値を示します。
実効値は、交流を流すときにその効力は直流に換算するとどのくらいになるかを示す量です。
そのため、交流電流計A_2は、直流電流計A_1と同じく100[mA]を指します。

次に、図2に流れる電流は、問題文からI=200[mA]です。
直流電流計A_1は、可動コイル形直流電流計です。
要点整理で整理した通り、可動コイル形直流電流計はフレミング左手の法則で示される向きに力を生じます。
交流は、一定間隔で電流の向きが入れ替わります。そのため、可動コイルが作り出す力の方向も交互に入れ替わるので動作しません。
したがって、直流電流計A_1は0[mA]を指します。
出典元
平成21年度第三種電気主任技術者試験 理論科目A問題問14
参考書
イラストがとても多く、視覚的に理解しやすいので、初学者に、お勧めなテキストです。
問題のページよりも、解説のページ数が圧倒的に多い、初学者に向けの問題集です。
問題集は、解説の質がその価値を決めます。解説には分かりやすいイラストが多く、始めて電気に触れる人でも取り組みやすいことでしょう。
本ブログの管理人は、電験3種過去問マスタを使って電験3種を取りました。
この問題集の解説は、要点が端的にまとまっていて分かりやすいのでお勧めです。
ある程度学んで基礎がある人に向いています。
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