周波数の異なる電圧の合成

周波数の異なる電圧・電流の合成 交流回路

異なる周波数の電圧・電流の合成

異なる周波数の電圧は、各周波数の電圧実効値を2乗して足し合わせたあと、ルートを取ると、重ね合わせた交流電圧の実効値を求めることができます。これを式で表すと、下記の通りとなります。
異なる周波数の電圧\(v_1=V_1sinAωt\)と、\(v_2=V_2sinBωt\)があるとき、その合成電圧は\(v\)とします。
それぞれの電圧の実効値を\(V_{1rms}\)、\(V_{2rms}\)としたとき、合成電圧の実効値\(V_{rms}\)は、次の式で求めることが出来ます。

\(V_{rms}=\sqrt{V_{1rms}^2+V_{2rms}^2}\)

ここで、異なる周波数を足し合わせても、周波数が変化したりしない性質を直交性と呼び、非常に重要な性質です。

 

\(V_{rms}=\sqrt{V_{1rms}^2+V_{2rms}^2}\)の証明


まず初めに、電圧の瞬時値を\(v=V_asinωt\)としたとき、この交流の電圧実効値\(V_{rms}\)は、次式で表されます。(参考:交流電圧実効値の式の証明
\(\displaystyle V_{rms}=\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^T v^2dt}\) …①
この①式を使って、証明していきます。

二つの周波数が異なる交流電圧\(v_1=V_1sinAωt\)、\(v_2=V_2sinBωt\)を合成した電圧の瞬時値は、次式となります。
\(v=v_1+v_2=V_1sinAωt+V_2sinBωt\) …②

②式を①式に代入して計算していきます。

\(\displaystyle V_{rms}=\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^T v^2dt}\)
\(\displaystyle   =\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^T (v_1+v_2)^2dt}\)
\(\displaystyle   =\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^T (V_1sinAωt+V_2sinBωt)^2dt}\)
\(\displaystyle   =\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^T (V_1^2sin^2Aωt+V_1V_2 sinAωt・sinBωt+V_2^2sin^2Bωt)dt}\) …③

1つの式にまとめて計算していくと、計算式が長くなって見づらくなるため、③式を項ずつに分けて計算します。

第1項

\(\int_0^T V_1^2sin^2Aωtdt\)

\(\displaystyle sin^2Aωt=\frac{1-cos2Aωt}{2}\)

\(\displaystyle  =\int_0^T V_1^2 \frac{1-cos2Aωt}{2}dt=\frac{V_1^2}{2} \left[ t-\frac{1}{2Aω}sin2Aωt \right]_0^T\)

ωTは、\(ωT=2πfT=2π\frac{1}{T}T=2π\)
なので、1回転した後の0°と同じです。
\(sinωT=sin2π=sin0=0\)
AωTは、A回転した後の0°と同じですので、\(sinAωT=0\)

\(\displaystyle  =\frac{V_1^2}{2} T=\left( \frac{V_1}{\sqrt{2}} \right)^2 T=(V_{1rms})^2 T\)

以上より、\(\int_0^T V_1^2sin^2Aωtdt=V_{1rms}^2 T\)


第2項

\(\displaystyle \int_0^T V_1V_2 sinAωt・sinBωtdt\)

\(\displaystyle sinAsinB=\frac{cos(A-B)-cos(A+B)}{2}\)

\(\displaystyle \int_0^T V_1V_2 \frac{cos(A-B)ωt-cos(A+B)ωt}{2}dt\)

(A-B)ωTは、A-B回転した後の0°、(A+B)ωTは、A+B回転した後の0°なので、
\(sin(A-B)ωT=sin(A+B)ωT=0\)
\(sin0=0\)

\(\displaystyle \frac{V_1V_2}{2} \left[ \frac{1}{(A-B)ω}sin(A-B)ωt-\frac{1}{(A+B)ω}sin(A+B)ωt \right]_0^T=0\)

以上より、\(\displaystyle \int_0^T V_1V_2 sinAωt・sinBωtdt=0\)


第3項

第1項と同様に、求められる。
\(\int_0^T V_2^2sin^2Bωtdt=V_{2rms}^2 T\)


再度、③式を記述します。
\(\displaystyle V_{rms}=\sqrt{\frac{1}{T}\int_0^T (V_1^2sin^2Aωt+V_1V_2 sinAωt・sinBωt+V_2^2sin^2Bωt)dt}\) …③

第1項~第3項の計算結果を代入すると、

\(\displaystyle   =\sqrt{\frac{1}{T} \left( V_{1rms}^2 T+V_{2rms}^2 T \right)}\)

\(\displaystyle   =\sqrt{V_{1rms}^2+V_{2rms}^2}\)

以上より、\(\displaystyle V_{rms}=\sqrt{V_{1rms}^2+V_{2rms}^2}\)

 

直流と交流の合成

\(V_{rms}=\sqrt{V_{1rms}^2+V_{2rms}^2}\)
の式の\(v_1\)の周波数を\(f=0[Hz]\)としたとき、\(v_1\)の実効値\(V_{1rms}\)は直流電圧\(V_d\)となります。
この場合でも重ね合わせの式は成り立ちます。

\(V_{rms}=\sqrt{V_d^2+V_{2rms}^2}\)

 

 

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参考書

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